『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(47)東レアローズ滋賀 谷島里咲(連載46:東レアローズ滋賀の戸部真由香が尊敬する日向翔陽のバレーに向かう姿勢 自らも「最強の囮」の意識でプレー>>)「私は感情の浮き沈みが激しく、勝ったらうれしいし…

『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(47)

東レアローズ滋賀 谷島里咲

(連載46:東レアローズ滋賀の戸部真由香が尊敬する日向翔陽のバレーに向かう姿勢 自らも「最強の囮」の意識でプレー>>)

「私は感情の浮き沈みが激しく、勝ったらうれしいし、負けたら落ち込む。練習でも、うまくいかなかったら練習中は我慢しても、練習後はめっちゃ泣いています(笑)。東レの中でも、一番泣いているんじゃないかな。でも、先輩たちのおかげで思いっきりやらせてもらっています」

 谷島里咲(20歳)はそう言って苦笑した。しかし、感情を爆発させられるのは、あらゆるボールゲームにおける"異能"である。名門・下北沢成徳高校を卒業後に東レに入団し、昨シーズンは18歳にしてすぐ出場機会を得た。2年目となる今シーズンは主力のひとりとして活躍し、総得点、サーブ効果率、ブロック決定本数などでチーム内の日本人トップだ。

 将来が嘱望されるアウトサイドヒッターは、こうつけ加えた。

「試合では、『自分は冷静になっちゃいけない』とも思っています。熱く激しく闘う。熱くいないといけないポジションだなって」

 谷島は凛々しい顔立ちだが、笑うと明るさが弾ける。白か黒か、自分が点を取れなかったら勝てない。切迫した思いが、彼女を突き動かすのだ――。

 谷島は茨城県結城市で、3人姉妹の末っ子として育った。ふたりの姉がバレーボールを始め、最初はそれについていき、そばで遊んでいた。

「小1になってから私も入ったんです。最初はお父さん、お母さんが"面倒くさいから入れちゃうか"って感じだったと思います」

 谷島はそう言って快活に笑う。

「私自身はよく覚えていないんですが、6年生たちが試合で負けたのを見て、悔しくて泣く子供だったらしいです。まだモップを持っている小1だったのに(笑)。でも、ロンドン五輪で木村沙織さんのプレーを見て、いっぱいトスが集まって(スパイクを)打ち続ける姿が格好よくて。『こうなりたい!』と思ったんです」

そのために、彼女はバレーで負けられなかった。負けず嫌いであることが問われた。

「6年生になった時の小学校の全国大会で、私がトーナメント抽選で優勝候補を引いてしまったんです。『やばい、どうしよう。ごめん』ってみんなに謝ったら、コーチが『なんで謝るの?勝てばいいでしょ?』と言ってくれて。それで、当たって砕けろじゃないですが、勝てたのでびっくり。力を使いきって準決勝では負けたんですが、3位になれた。最初から諦めたら絶対にダメだと学びました」

 屈託なく笑う彼女は、その後も可能・不可能の狭間で真剣に戦ってきた。ひとつの原風景がある。

「中3で高校生と練習試合をやった時、先生に『なんでブロックに当てるの? 上から打て』とめっちゃ怒られて。私は心の中で、『相手は高校生で私よりデカいんだぞ。意味わかんない!』って半ギレ状態(笑)。でも、上から打つと考えていたら、『ブロックが完成する前に打てばいい』と早撃ちを意識するようになったんです。そうしたら、意外と打てました。高いブロックでも上から打てる感覚は、今でも覚えています」

 中3で初めて全国大会に勝ち進み、そこで洗練された選手たちに目を見張ったが、同時に思っていた。

 自分も負けてない――。

 その気持ちだけは忘れなかった。

 だから、東京の成徳に越境入学後も、周囲は自分より身長が高い選手ばかりだったが、堂々と"オープンバレー"の伝統を引き継ぐことができた。『トスが上がれば、どんなボールも敵コートに打ち込む』という荒々しい論理に鍛えられて、彼女は同世代で指折りのスパイカーになっていった。

 今後は、同校の先輩である木村、石川真佑などの後を継いで、世界の強豪も打ち負かせるのか。それは簡単ではない。しかし、次のフェーズだ。

「成徳時代に培ったパワーは誰にも負けないと思ってます。(石川)真佑さんのように、いろんなコースを抜く技はないですが。『力ずくでもいいから飛ばすんだ』という気持ちでやっていきます!」

 立ち向かってきた谷島は、乗り越えるイメージを持っている。

【谷島里咲が語る『ハイキュー‼︎』、作品の魅力】

――『ハイキュー‼︎』、作品の魅力は?

「ひとりひとりが、主人公くらいストーリーがある。だから、どこを切り取っても面白いです。そのなかで、主人公の日向(翔陽)がどんどん成長するのがいいですね。最初はバレーが好きでガムシャラなだけなのが、深いところまで考えていく。私も頭脳派ではないですが、少しは考えられるようになってきているので、自分とも重ねちゃいます(笑)」

――共感、学んだことは?

「インターハイ予選で烏野が青葉城西に負けて、日向と影山(飛雄)がどん底まで落ち込むんですけど、そこで武田一鉄先生に『"負け"は弱さの証明ですか?』って言われるシーンが大好きです。

 これも自分と重ねるところがあって。(2023年9月の)近畿総合大会で、同じポジションの選手が膝を痛めて出られず、代わりに私が出て負けてしまったことがあったんです。ボールをアウトにふかしたり、思い通りにいかず、『私が入ったから負けたのかな』とショックで......。そんな時にちょうど、『ハイキュー‼︎』でその場面を見て、自分に言われた気がしました(苦笑)」

――印象に残った名言は?

「やっぱり一番は、武田先生の『"負け"は弱さの証明ですか?』ですね! ほかには、星海(光来)の『小さい事はバレーボールに不利の要因であっても 不能の要因では無い』も好きです!」

――好きなキャラクター、ベスト3は?

「1位はイケメンなので、青葉城西の及川(徹)さん(笑)。常に自信を持っているし、持つためにやるべきことをやっている。そこが格好よくて。2位はウシワカ(牛島若利)。"ザ・エース"で、大事なところでトスが上がり、相手をねじ伏せる。決まる確信があるからセッターも上げるんでしょうね。自分も頼られたいから憧れます。3位は日向。勝ちにこだわっていて、諦める瞬間が想像がつきません。自分を信じて成長する姿がいいですね」

――ベストゲームは?

「春高予選の烏野vs白鳥沢学園です。ツッキー(月島蛍)の『まってたよ』のシーンがすごくいい。すました感じのツッキーが、バレーにハマっていく。同じポジションでも日向とは全然違いますが、それぞれのストーリーやキャラがひとつになるのが『ハイキュー‼︎』ですね!」

(連載48:アランマーレ山形の赤星七星が語る『ハイキュー‼』のセッターたちの魅力と「燃え尽きた」大学時代>>)

【プロフィール】

谷島里咲(やじま・りさ)

所属:東レアローズ滋賀

2005年3月8日、茨城県生まれ。172cm・アウトサイドヒッター。姉の影響で小学1年でバレーを始める。下北沢成徳高2年時、エースとしてインターハイに出場。現在もチームメイトの同級生、古川愛梨とともに優勝に導いた。2023年、東レアローズ(現・東レアローズ滋賀)に入団した。