現地発! スペイン人記者「久保建英コラム」 レアル・ソシエダの狙いは来季の欧州カップ戦出場枠獲得になってきたが、目標を達成できるかどうかは久保建英の未来にも関わってきそうだ。 今回はスペイン紙『アス』およびラジオ局『カデナ・セル』でレアル・…

現地発! スペイン人記者「久保建英コラム」

 レアル・ソシエダの狙いは来季の欧州カップ戦出場枠獲得になってきたが、目標を達成できるかどうかは久保建英の未来にも関わってきそうだ。

 今回はスペイン紙『アス』およびラジオ局『カデナ・セル』でレアル・ソシエダの番記者を務めるロベルト・ラマホ氏に、ラ・リーガ残り7試合の見通しと久保の来季去就について考察してもらった。

【欧州カップ戦に出られなければ久保を引き留めるのは困難】

 たとえ久保建英が「関係ない」と言っても、レアル・ソシエダでの彼の将来は、今季終了までのラ・リーガでの7試合の出来と、唯一残された目標をチームが達成できるかどうかに密接に関係している。ラ・レアル(レアル・ソシエダの愛称)が欧州カップ戦への6季連続となる出場権を得られなければ、彼をサン・セバスティアンに留めることは非常に難しくなる。


マジョルカに痛い敗戦。レアル・ソシエダは残り7試合で目標達成なるか

 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「欧州カップ戦に参加できない=久保はラ・レアルに留まらない」というわけではない。だが、好調なシーズンを送っている彼に新たなオファーが届く可能性を考えると、ヨーロッパリーグやカンファレンスリーグ、あるいは非常に難しいがチャンピオンズリーグでプレーする機会をラ・レアルが彼に提供しないといけない。

 野心家の久保は、サッカー選手であれば誰しもが目指す大舞台である欧州の大会でプレーしたい、との考えを隠さない。皆から注目され、自分の名前を世界中に知らしめる場、それが欧州の大会だからだ。さらなる飛躍を望むのであれば、まずはそこに参加しなければ始まらない。そこで好成績を収めれば他のクラブから興味を持たれ、ラ・レアルとの契約更新交渉が有利になり、結果として年俸や選手としての価値が上がることになる。

 久保は純粋に、より質の高い大会に参加し、欧州のスタープレーヤーたちと対戦することを望んでいる。だが最近、彼は公の場で「ラ・レアルの欧州カップ戦出場と自身の残留は関係ない」と口にした。久保は決勝進出やタイトル獲得といった目に見える結果をラ・レアルで残せていないと感じていて、ここでまだやるべきことがあり、退団する時はそれを達成し胸を張って去りたい、と考えている。

 久保はここサン・セバスティアンでの生活に満足し、クラブのプロジェクトに完全に溶け込み、チームメイトと楽しい時間を過ごしている。自分がチームにとってどれほど重要な存在であるかを十分に理解している。他のどれだけいい場所に移ったとしても、そのステータスは簡単に得られるものではない。そのため、たとえ来季欧州カップ戦出場がかなわず、来季もここに残ってクラブの歴史に名を残す挑戦を続けたいと思ったとしても、私は驚かない。

【残り7試合で4勝が必要】

 久保の将来に関してはあらゆることを考慮する必要があると思うが、欧州カップ戦に参加する権利を得られず、断ることができないオファーを提示する強豪クラブが現れた場合も考えておきたい。

 問題は「ラ・レアル以外で久保が最も活躍できる場所はどこだろうか?」ということだ。彼の特徴を考えると、私はプレミアリーグにうまくフィットすると思っている。具体的なチームを挙げるなら、彼に注目しているリバプールが最適だろう。同じポジションのモハメド・サラーが契約更新したばかりとはいえ、リバプールは彼の代役を務め、他のポジションにもうまく適応できる選手を獲得して攻撃を強化したいと考えている。久保のプロフィールはそこに完璧に当てはまっているだろう。

 ラ・レアルが久保の移籍を回避するためにできる最善策は、ラ・リーガの最終局面で奮闘し続け、欧州カップ戦の出場権を手に入れること以外にない。その直接のライバルであったマジョルカに悪い内容で敗れ、目標達成が少し難しくなったとはいえ、ラ・レアルにはまだその可能性が残されている。

 少なくとも8位に入り、カンファレンスリーグの出場権を得るためには、勝ち点53が必要だ。例年のデータから8位のチームはその勝ち点でフィニッシュしている。それは残り7試合の勝ち点21のうち12を獲得、つまり4勝することを意味する。

 今の流れからは極めて難しいミッションのように感じるが、ラ・レアルには近年、最後の最後でアクセルを踏み込み、最終的に目標を達成してきた実績がある。

 バジャドリード戦とラス・パルマス戦の2連勝で取り戻した勢いが、なぜマジョルカ戦で止まってしまったのかを理解するのは容易ではない。なぜならラ・レアルは結果だけでなく、試合を通じて無力感や焦り、守備の脆弱さという悪いイメージを露呈したからだ。

 彼らは感覚を取り戻して上昇気流に乗り、何よりもゴールを決めていたが、マジョルカ戦ではそのすべてが明らかに欠けていた。久保は前半まずまずのプレーを見せていたが、後半はチームメイトの不振が伝染し、皆と同じように調子を崩してしまった。

【久保が輝く方法を見つけなければいけない】

 ラ・レアルがやるべきはマジョルカ戦を一刻も早く忘れ、エスタディオ・デ・ラ・セラミカ(次節対戦のビジャレアルのホーム)でいい結果を出すべく集中することだ。まだチャンピオンズリーグ出場という夢を持ち続けたいのであれば、まずは5位ビジャレアルを倒し、勝ち点差を7に縮めなければならない。その夢を実現するのは非常に難しいが、炎を絶やさない限り希望はある。

 そして、こうした野心的なことを考えているのであれば、最低でも欧州カップ戦の出場権を確保できるだろう。そのためには、これまで我々に幾度となく喜びを与えてくれた久保が輝く方程式を、イマノル・アルグアシル監督は早急に見つけなければならない。

 そのためには久保だけでなく、周りにいる選手たちも本来のパフォーマンスを発揮することが重要なのは言うまでもない。マジョルカ戦ではそれができなかった。すべてを久保の創造力に任せてしまうと、攻撃は簡単に読まれ、相手にとって守りやすくなり、すべてがより困難な状況へと向かってしまう。簡単に言えば、ふたりのディフェンダーで久保を封じれば、ラ・レアルの攻撃は停滞してしまうのだ。

 ラ・レアルにはビジャレアルと十分戦える能力を持つ選手たちが揃っている。これ以上厳しい状況に陥らないためにも、彼らが残り7試合に集中して臨み、久保が果敢に相手ゴールを目指すためのスペースを作り出す必要がある。久保が来季もラ・レアルに留まるかどうかは、彼自身の創造力にかかっているのだから。
(髙橋智行●翻訳 translation by Takahashi Tomoyuki)