NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25ディビジョン2 第11節2025年4月12日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)清水建設江東ブルーシャークス 15-45 NECグリーンロケッツ東葛家族への思いを胸に、ラストスパー…

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第11節
2025年4月12日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)

清水建設江東ブルーシャークス 15-45 NECグリーンロケッツ東葛

家族への思いを胸に、ラストスパートへ。故郷からの声援が背中を押した逆転トライ


右ひざの大けがを乗り越えたシーズンとなったNECグリーンロケッツ東葛のナサニエル・トゥポウ選手。「プロになってから、まだ家族に試合を見せられていません。シーズンが終わるまでに日本に呼べたらいいなと思っています」

清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)が、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)を迎えた一戦は、45対15でGR東葛が勝利した。

7対10とリードされ迎えた前半24分、モールから抜け出したボールキャリアーが力強く前進。トライライン目前の密集で最後にボールをトライゾーンへと導いたのは、この日が復帰4戦目にして今季初先発となった、ナサニエル・トゥポウだった。この逆転トライ以降は一度も主導権を渡すことなく、GR東葛は勝利を手にした。

大きなけがを乗り越え、いよいよ巡ってきたスタートポジション。その中で結果を残したトゥポウは、「あの2本目のトライは本当にチームの努力があってのトライだと感じています。スコアは自分がしたけど、あれはチームのトライでした」と語り、謙虚に仲間への感謝を口にした。

フィジー出身のトゥポウは、日本大学でのプレーを経て昨季からGR東葛に加入。ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチも「ビッグな選手として重宝していた」と信頼を寄せる中、昨年は右ひざの前十字靭帯と内側側副靭帯を断裂する大けがを負い、長いリハビリ生活を送ることとなった。

その苦しい時間を支えたのは、故郷フィジーの家族だった。「お父さんとおばあちゃんが小さいころから自分にいろいろなものを注いでくれました。だからこそ、いま日本でプレーできています。本当に自分にとってすべてです」。特に父は、少年時代からラグビーの指導者としてトゥポウを支えてくれた存在。「今でも試合前には必ず電話します」。試合前に交わすその声が、いまも彼の背中を押している。

この試合で果たしたフル出場について、「80分とおして出場したのは久しぶりでタフでした。でも、チャンスをもらったからには、自分にできることをすべて出し切ろうと思っていました。そういうプレーを見せられたと思います」と語り、自信ものぞかせた。

今季、トゥポウにはかなえたい夢がある。

「プロになってから、まだ家族に試合を見せられていません。シーズンが終わるまでに日本に呼べたらいいなと思っています」

自身のプレーを、恩を感じる家族に届けたい。その願いが、彼の原動力になっている。残るレギュラーシーズン3試合について、トゥポウは力強く言い切った。

「本当に、ベストを尽くすのみです」

家族への想いを胸に、仲間とともに挑むラストスパート。GR東葛の12番が、ピッチの上で語る物語は、まだ終わらない。

(奥田明日美)

清水建設江東ブルーシャークス


清水建設江東ブルーシャークスの仁木啓裕監督兼チームディレクター(左)、ジョシュア・バシャム ゲームキャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕監督兼チームディレクター

「本日の試合開催にあたり、多くの方々にご尽力いただきましたこと、ありがとうございました。(吉廣広征)ヘッドコーチの古巣だったので、なんとかチーム全員で勝つ、勝ちにこだわって今週1週間を過ごしてきましたけど、結果としてこういった形になったことは受け止めなければいけないですし、残念だなという部分もあります。しかし、われわれは下を向いていられないですし、ある意味今季を振り返ってみると、負けを経て成長してきた部分は非常に多くあると思います。なので、まずはしっかりと負けた原因をチーム全員、スタッフ、選手で受け止めて、次に向けて準備していきたいと思っています。残り3戦、絶対に負けられない戦いですので、一戦一戦に集中して戦っていきたいと思います。本日はありがとうございました」

──ゲームプランと、うまくいったポイント、うまくいかなかったポイントを教えてください。

「いつも先手必勝、と言い続けていましたし、前節のレッドハリケーンズ大阪戦で勇気をもって一歩踏み出そうというところで、相手に対してプレッシャーを掛け続けようという話をしてきました。しかし、なかなかNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)の圧力に耐えられる部分と、足が止まった部分がありました。先ほどジョシュア・バシャム選手が言いましたが、規律の部分がすべてかなと思います。イエローカードが3枚も出ていると難しいゲームになります。気持ちさえあれば止められた部分もあると思いますし、どんな状況でも立ち向かう姿勢というのは必要だったと思います。チャレンジングだったとしても、やはりそういった姿勢は次節につながります。正直なところ、後半の中盤ぐらいからは得点差を考えると結果は決まっていたのかもしれませんが、立ち向かう姿勢は、スタッフも含めて全員で出さなければいけなかったと思います」

──リザーブメンバーの人数は、普段フォワード5人とバックス3人ですが、今回はフォワード6人とバックス2人でした。そうした人数比の違いから試合の進め方に普段と違ったところはありましたか。

「そうですね。メンバーを見てのとおり、フォワード勝負になると思っていましたし、バックスはある程度、ゲームタイムがリマ(リマ・ソポアンガ)にしても、クーニー(コンラッド・バンワイク)にしても、ベテランではありながらも80分間ずっとプレーしてくれていましたので、バックスを減らしてフォワード勝負というところでしっかり考えていました。結果的にはこういう形になりましたが、悲観するところばかりではなくて、フォワード勝負のモールではほとんど(トライを)取られずに、一本は取られましたが、ほとんど止められていました。そこに関しては残り3戦、取られているようでは絶対に勝てないので、モールは良い学びになったと思います。今回相手に上回られた部分は個々のところとペナルティ、この二つだと思っています。1週間ですがしっかり立て直して前向いてやるしかないと思っています」

──普段は10番で起用されるリマ・ソポアンガ選手が今日は12番でした。起用の理由を教えてください。

「もともとリマとヘイデン(クリップス ヘイデン)は同じ高校で、確か同回生だったと聞いていましたが、お互いコミュニケーションをしっかり取ってくれていましたし、練習ではこの形を試していました。そして後半からヘイデンを入れるときに、実際に10番にヘイデンが入ってリマが12番になることもありました。誰が出ても起点となれる選手がそこにいるというところで、しっかりボールを動かすことが意図のすべてです。ゲームコントロールの部分で、リマとヘイデン、そしてバンワイクが動かすので、こういったメンバーがしっかりプレーしてくれたら面白い展開になるのではと思っていました。しかし、(GR東葛の)13番のマリティノ・ネマニ選手のフィジカルのプレーでやられた部分があるので、バックスもそうですが、いろいろなものをわれわれは反省しなければいけないと思います。ただ、質問の回答としては、ボールをしっかり動かしていこう、というところです」

──モールの勝負でかなり優位に試合が進んでいたと思いますが、具体的にどの辺りが前回と比べて良くなっていたのでしょうか。

「昨季より今季は雲泥の差ぐらいモールで取られる機会というのはなくなってきています。そこに関してはもうセコペ・ケプ フォワードコーチと、権丈太郎 フォワードコーチの二人のパッションある練習に尽きるかなと思います。具体的に言えば、ハイスピードや粘るところです。モールも低さなどをイチから見直して、本当にこだわってやってきました。そういった結果がしっかり出てきているのかなと思います」

──ペナルティが多かったのが敗因ということですが、チャレンジングにディフェンスをすることと、規律を大切にすることの両立はどのように考えていますか。

「全員のコネクションの部分だと思います。みんなで声を掛け合うことがまずペナルティを減らすには大事だと思いますし、本人は出てないと思ってもオフサイドであれば出ているときもあったりするので、客観的に見る人間というか、余裕をもって見ている人間が何人いて、かつ気の利いた声を掛けられる人間が何人いるかというところがおそらくすべてだと思います。なので、今回はディフェンスラインのオフサイドが多く、いろいろな要因はありますが、もちろんレフリーに順応していかなきゃいけない部分はあります。ただ、周りの声がすべてだと私自身は思っていますので、そこをしっかり来週いっぱい全員で声を掛け合いながら、『一歩出ているよ』といった簡単な声で良いと思うので、やっちゃいけないことぐらいは言い合えるようにしたいと思います。このディビジョン2のカテゴリーでは経験を積んでやってきているので、もう一つ気の利いた声を掛け合いながら、かつコーチング側のわれわれも分析を、いろいろとヘッドコーチを筆頭にやってくれていますが、改善の部分はしっかりやっていきたいと思います」

──残り3戦、負けられない試合に向けての意気込みをお願いします。

「この記者会見でも、みなさんが聞き飽きるくらい『気持ち』と言い続けてきましたが、変わらず一緒です。気持ちのみだと思っています。そして、残り3戦を計算して戦えるようなチーム力ではないですから、まずは次の日本製鉄釜石シーウェイブス戦のみにフォーカスして、一戦一戦、スタッフも含めて全員のチーム力で戦っていきたいと思います」

清水建設江東ブルーシャークス
ジョシュア・バシャム ゲームキャプテン

「本当に難しい試合でした。GR東葛という相手に対して、規律が守れずに3枚もイエローカードを出しているようでは、もう絶対に勝てないと感じました。さらに、自分たちが相手にプレッシャーを掛けないといけないのに、自分たち自身にプレッシャーを掛けてしまって、相手にもプレッシャーを掛けられたというところが一番の敗因かなと思います。ここが一番大きな学びなので、次の試合に絶対生かして勝っていきたいと思います」

──フォワード陣がシーズンを通じて成長している実感はありますか。

「はい、間違いなく感じています。フォワードとしてセットピースのフォワードのバトルに都度勝っていこうという目標を掲げてやってきています。ラグビーの要素でセットピースというのはすごく大きな部分を占めていると思うので、そこにプライドをもって挑んでいこうと毎日練習しています。実際に成長を選手たちも感じていますし、相手もそれを脅威に思っていて、どんどん分析されています。なので、ここからもう一段階レベルを上げないとまた対応されてしまうので、今後のチャレンジはそこかなと思っています」

──モールの勝負でかなり優位に試合が進んでいたと思いますが、具体的にどの辺りが前回と比べて良くなっていたのでしょうか。

「マインドセットと強い気持ちが成長してきていますし、それに加えて分析がうまくいっていると感じます。そこの二つのバランスが両立できているので、成長につながっていると思います。相手の弱みをしっかり突けるようなミーティングをたくさんして、それが実際にグラウンドで実行できていると思っています」

──ペナルティが多かったのが敗因ということですが、チャレンジングにディフェンスをすることと、規律を大切にすることの両立はどのように考えていますか。

「やっぱり規律というのはラグビーの要素の中ですごく大きい部分を占めていると思いますが、そこができなかったというのは、そのミスが続いている中で、どこに要因があるのかに早く気付けなかったのが原因かなと思います。なので、次にステップアップするために、原因に早く気づいて、試合の中で改善することを目指してやっていきたいです」

──残り3戦、負けられない試合に向けての意気込みをお願いします。

「タフな状況が続くと思うのですが、そこから逃げずに面と向かって立ち向かっていけるような勇気がラグビーの醍醐味だと思うので、それをしっかり感じながら前に進んでいければいいかなと思っています」

NECグリーンロケッツ東葛


NECグリーンロケッツ東葛のウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ(左)、マリティノ・ネマニ キャプテン

NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ

「本日は勝ち点5点を取りにきていました。ボーナスポイントを含めて5点を取れたことに満足しています。ただ、ベストプレー、ベストパフォーマンスではなかったと思います。というのも、ドロップボールだったり、エラーが多かったり、特にペナルティも多くて、前半の最初、清水建設江東ブルーシャークスに7点を先に取られるという形になってしまいました。ただ、そこからリセットをして、オーガナイズをして、最初の15分からうまく切り替えて、再度ゲームをコントロールすることができたことには満足しています。後半はエナジーも上がっていたし、規律も良くなっていたと思います。なので、完璧なスタートは切れなかったのですが、取りたい5点を取ることができました。なので、コーチとしてはこれ以上、不平を言うつもりはありません。5点を取りに来て、5点が取れました。その中で(得点を)45点取れましたが、それでもまだまだ課題はあると感じています」

──試合を通じてどのような指示を出していましたか。

「まず前半の序盤でもコーチボックスからメッセージは出していて、自分たちでうまくコントロールをしようというところを伝えていました。具体的には、エラーを減らすこと、ペナルティを減らすこと、そういったところは自分たちでコントロールが利くところだと思っていたので、そういった話をコーチボックスから伝えていました。そしてハーフタイムではもっとエナジーを上げていこうという話をしました。点数上はリードをしているが、いまのところは仕事の半分が終わったところ。まだ後半の半分があるから、点数上は勝っているので、パニックにならずエナジーを上げてプレーしようという話をハーフタイムで行いました」

──ナサニエル・トゥポウ選手が今季初のスタメンでした。彼に期待した部分と、評価を教えてください。

「先週までずっと出ていたオルビン・レジャーがけがをしたことによってこのポジションが空いて、ナサニエル・トゥポウが復帰して、そこに入ることができました。トゥポウは昨季まですごくビッグな選手としてウチも重宝していたんですけれども、非常に深刻なけがをしてしまいました。そこからハードワークをして、いまの先発メンバーというポジションを勝ち取ってくれたなと思っています。80分フルで出す予定ではなかったのですが、ゲーム運びの状況を見て、マリティノ・ネマニを入替させて、トゥポウはフィールド上に残すという選択をしました。本日見たパフォーマンスなのですが、この先良くなるばかりだと思います。復帰してすぐなので、トップスピードなどはまだまだ余力がある状態、かつ、最高の状態に戻すまでもう少し時間が掛かると思いますが、この先、絶対にもっと良くなるし、さらに良い、トップの状態が見られると思っています」

NECグリーンロケッツ東葛
マリティノ・ネマニ キャプテン

「スローなスタートだったと思います。例えば私がハイタックルしてしまって、規律の足を引っ張ってしまいました。自分がリーダーである以上、ああいうスタートはもちろん望んでいないです。ただ、そのあと、選手たちがお互いのためにプレーができたと思っていて、前半の後半部分は、再度気を引き締めることができましたし、ゲームの後半に向けてもうまくプランを練ることができました。最終的にボーナスポイントを含む勝ち点5を取れてうれしいです」

──前半の序盤で切り替えたということですが、ピッチ上ではどのような声を掛け合っていたのでしょうか。

「正しいエリアでプレーをする、そういったコントロールをしようという話をしました。点数上ではリードはしていたので、無理やり何かを生み出そうとしなくてもいい状況ということは分かっていました。なので、プランどおりに遂行するというところを伝え合いました。そして、そこからスコアにつなげることができたと思います」