NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25ディビジョン2 第11節2025年4月12日(土)12:00 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)日本製鉄釜石シーウェイブス 23-40 豊田自動織機…

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第11節
2025年4月12日(土)12:00 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス 23-40 豊田自動織機シャトルズ愛知

刺激し合う先輩と後輩。ライバルでもある二人は肩と肩で語り合った


豊田自動織機シャトルズ愛知の高橋信之選手

3連敗中の日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)が首位の豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)に挑んだホストゲームは、40対23でS愛知が勝利した。前半24分から、チャンス・ペニが8分間で3連続トライ。勝負どころを見逃さず、首位の座をがっちりとキープした。

これでシーズン10勝目。ここまで全試合に出場する高橋信之は「後半の途中までは良かったのですが、自分たちのミスから相手にモメンタムを与えるような展開になってしまいました」とまずはチームとしての反省を口にした。

高橋信之には悔しかったことがある。それは一昨季までチームメートだった釜石SWの山田裕介に「こてんぱんにやられた」ことだ。1学年先輩の山田とは同じプロップのポジションで、ともに高校卒業直後にS愛知に加入したという共通点をもつ。山田も「ノブ(高橋信之)は弟のような存在。よくご飯や飲みに行く仲でした」と公私ともに近い存在だったことを明かしてくれた。

その二人は2月15日の第6節、S愛知のホストゲームで初めて対戦。山田が1番、高橋信之が3番ということもあり、スクラムでも対面となった。

「あの試合ではうまくやられてしまったので、今日はそういう意味でもやり返したいと思っていました」(山田)


高橋選手(3番)と対峙する、日本製鉄釜石シーウェイブスの1番、山田裕介選手

あれから約2カ月後、今度は立場が逆になった。

「今日はとことんやられてしまいました。前回の対戦から倍返しにされた気分です」(高橋信之)

試合前、「プレーで恩返しできれば」と話していた高橋信之だったが、この日は先輩の山田が厚い壁となって立ちはだかった。「やっぱり山田さんはタックルもスクラムも強い。次に対戦するときはもっとバチバチに勝負してリベンジしたいです」と高橋信之。一方の山田も「リーグワンの舞台での対戦はお互いに目指してきたところ。僕はノブに絶対負けたくないし、ノブも僕に負けたくないはずです。かわいい後輩でもありライバル。こういう関係性はなかなかないと思うので、また次やるときを楽しみにしています」と対戦直後にもかかわらず、二人の言葉からはすでに“第3ラウンド”に懸ける思いがほとばしっていた。

同じ境遇で支え合い、刺激し合う二人は、先輩後輩として、そしてライバルとして、再び肩と肩で語り合う日を心待ちにしている。

(髙橋拓磨)

日本製鉄釜石シーウェイブス


日本製鉄釜石シーウェイブスの須田康夫ヘッドコーチ(左)、村上陽平キャプテン

日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ

「釜石鵜住居復興スタジアムでのレギュラーシーズンラストのゲームということで、勝利を目指すいいゲームをしたかったのですが、豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)さんの穴(ディフェンスの綻び)を見逃さない、そこを突いてくるというところで、自分たちの小さな綻びを得点につなげられてしまった前半だったと思っています。選手たちもハーフタイムで修正して後半に挑みましたが、少しスコアが開きすぎてしまっていたかなというゲームでした。でも、修正できた部分はチームとしても今後につながる、非常にいい部分だと思いますし、やり切らなければいけないということを学んだゲームだったと思います。次にしっかり生かして、次こそ勝利したいと思っています」

──前半の綻びは具体的にはどんなところになりますか。

「S愛知さんの目が本当に鋭いなという印象ですけど、ウチが受け身のタックルをしたフェーズを見逃さず、次のフェーズでそれをしっかり狙ってくる。そこからラインブレイクを取られて、S愛知さんがモメンタムを生んだというところが多かったので、そこの部分だと思います」

──S愛知のバックスにボールがわたったときに、日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)の人数が足りない状況になる場面が何度か見受けられましたが、そこを後半はどう修正したのでしょうか。

「アタックとディフェンスの関係で言うと、必ずアタックのほうが余るような状況になっているので、自分たちがしっかりラインスピードを上げなければいけないところを、自分たちで上げられないようにしてしまったということ。そういう状況にさせてしまったことが問題だと思っていました」

──後半だけのスコアで見ると上回っています。評価できる部分を教えてください。

「村上(陽平)キャプテンからもあったとおり、自陣深くからキックだけではなくてランも見せつつキックオプションも見せながら攻撃の継続ができたので、S愛知さんも深く守るところがあったのでその部分は有効だったのではないかなと思います。そこは前半からいい部分だったと思います。あとはポイントゾーンに入ったときのセットピースは引き続き課題かなと感じています」

──これまで終盤の20分の試合運びで難しかった試合もあったかと思いますが、今日はモメンタムで上回る時間帯も多く追い上げた印象です。この終盤の戦い方、そしてインパクトプレーヤーのプレーをどう評価していますか。

「まず、われわれは終盤の20分が弱いとは思っていません。相手とのやり合いで(スコアや勝利を)取り切れない部分はありますが、インパクトプレーヤーもハードワークをしてくれていますし、今日は出た選手たち、特に若いフロントローの選手は質の高いプレーをしてくれたと感じています。23人でしっかり戦えているなという印象がありますし、ゲームに与えるインパクトもワークレートの部分で発揮してくれていたと思います」

──ここ4試合はすべて失点が40を超えています。失点部分の課題をどのように考えていますか。

「スコアとしては失点が多くなっていますが、アタックの面でスコアを取り切らなければいけないところで取り切れていないところが課題だと思います。ボールを奪われずにスコアを取り切れれば、スコアがひっくり返っているというゲームがいくつかありますので、ディフェンスというよりは攻撃面(が課題)だと思っています」

日本製鉄釜石シーウェイブス
村上陽平キャプテン

「前節、しっかりフィジカルバトルできていたところは、この試合でも継続してやらなければいけないところでした。立ち上がりは悪くありませんでしたが、前半の中盤から終盤に掛けて(ディフェンスの)綻びが生まれてしまい、そこを突かれて相手のアタックに対応できなくて簡単にスコアされてしまいました。ディフェンスでは3フェーズをコンプリートすることができていなくて、相手がフェーズを重ねていくごとに自分たちがキツくなるのは前半のプレーで分かっていたことでした。釜石SWとしてはそこを試合の最初からやらなければ勝てるわけがない。次の試合から残り3戦は落とせないゲームですし、全員が体を張って試合のスタートの時点から相手がイヤがるようなディフェンスをしなければならないです。

アタックについては後半、風下でしたけど、ランオプション、キックオプションを使い分けて攻められたのは良かったところだと思います。相手にとっても守りづらくなったし、自分たちにも選択肢がある中で判断しながらできていました。チーム全体で同じ絵を見てアタックできたと思いました」

──前半、やや距離があるペナルティでショットを2回選択しました。どういった理由からショットの選択をしたのでしょうか。

「スコアをしないことには相手にプレッシャーを掛けられないと考えていました。前半追い風だったこともありますし、ショットを狙うには容易な場所でのペナルティだったので、キッカーのハンティー(ミッチェル・ハント)と話して選択しました」

──後半に向けてディフェンスのところではどのような修正をしたのでしょうか。

「コリジョンの部分で、ディフェンスのときに受け過ぎていた部分があったんですけど、そこでしっかり前に出てドミネートできればディフェンスの人数もそろってくる。そのセットアップするスピードを修正できたので後半は良くなったかなと思います」

──試合全体の収穫についてはどのように捉えていますか。

「相手にプレッシャーを掛け続けていれば自分たちの時間帯がたくさん作れて、後半のような展開にもち込めると思います。そういった時間帯をより多く作るためにも『前半からプレッシャーを掛けてファイトしなければいけないんだ』『チームとしてフォーカスしていることに対して一人ひとりがしっかり遂行しなければいけない』というところが大事になると思うので、そこは次に生かしたいと思います」

──レギュラーシーズンは残り3試合となりました。ホストゲームを2試合残していますが、どういう戦いを見せていきたいですか。

「厳しい状況に変わりはないですけど、残り3試合は絶対に落とせない試合だとチーム全体が理解していると思います。1試合1試合、相手よりも高いワークレートで働き続けなければいけないことを自覚し、いかに結果にこだわっていけるかだと思いますので、リーダーとしてしっかりチームを引っ張っていきたいと思います」

豊田自動織機シャトルズ愛知


豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(右)、ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「本日は素晴らしい環境の中で試合ができたことをうれしく思っております。また、2月に大船渡市で発生した山林火災によって被災されている方には心からお見舞い申し上げたいと思っております。それから“3.11”のメモリアルスタジアムで試合ができたということで、われわれがラグビーに携われていることが当たり前ではないということをあらためて感じさせていただきました。今日、われわれにとって多くの気付きを得られた試合になりました。そういう場を提供していただいた釜石SWの皆さまにチームを代表して御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

試合の内容につきましては、勝ち点5を得られたことはチームとしてもうれしく思っております。ただ、内容としては先週の九州電力キューデンヴォルテクス戦から引き続き、課題が多かった試合ではありましたが、勝ち点を獲得できていることを考えるとすべてがネガティブではなかったと思っています。本日はありがとうございました」

──指摘された課題とは具体的にどのような部分ですか。

「まずはキャプテンが話したとおり、試合の入りから60分は非常に良かったと思っています。その中の課題をあえて言えば、得点できるところで簡単なエラーが続いてしまい、スコアにつなげられなかったところ。もう少し慎重に我慢強くプレーすべきだったのが課題です。ラスト20分においては、内容自体も良くなかったというところ。そこはメンバーが多く代わったというところ、釜石SWさんのモメンタムが勢い付いたときにわれわれが受けに回って、流れを奪い返すというバトルで戦い切れなかったこと。これが課題だと思っています」

──前節からの1週間はどのようなところにフォーカスしてトレーニングしてきたのでしょうか。

「今週1週間はシンプルなところにフォーカスをしまして、一つひとつのプレーでしっかりドミネートしていくこと。そこにだけフォーカスしてきて、準備自体は非常に素晴らしかったと思っています。しかし、それを80分とおして出せなかったことで少し消化不良、モヤモヤする気持ちが残ってしまったと思っています」

──結果的に前半の3連続トライが勝敗を分けたポイントにもなったかと思いますが、あの攻撃についてどのような準備がトライに結び付いたと考えていますか。

「われわれは非常に速いスピードのラグビーを目指している中で、重要になるのはブレイクダウンの部分。ここでいかにクリアなスピードでボールを出せるかが重要になるのですが、その部分が機能したことで前半の3連続トライにつながったと思っています」

──D1/D2入替戦進出への可能性も非常に高まる中、残り3試合となりました。どのように過ごし、どのように戦っていきたいですか。

「チームとしてはしっかりディビジョン1に昇格するということが最後のゴールであることに変わりはないのですが、まだ入替戦出場を確定させたわけでもないので、次のNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)戦にしっかりフォーカスすること。そして試合を重ねながら、われわれが成長していくことが一番必要なことだと思っていますので、1試合1試合にフォーカスしながらチャレンジして成長することを求めていきたいと思っています」

豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル 共同キャプテン

「まずは徳野洋一ヘッドコーチからもありましたように、このスタジアムで試合ができることは光栄ですし、たくさんの方々のサポートに感謝したいと思います。ありがとうございます。最初の試合の入りは良かったかもしれないですけど、最後の20分というところの課題は残っているかなと思います。チームとしては勝ち点を5ポイント取れたということはすごくうれしく思います」

──今季のチームの成長をどのようなところに感じていますか。

「今までの試合をとおして、成長できているポイントはすごくあると思うので、そこは継続させていきたいです。ただ、80分をとおしてゲームをしていくことが大事なので、そこが60分にとどまっているのは、(水準に)達していないところがあるのかなとは思っています」

──次節について、どのような戦いをしていきたいのかを教えてください。

「GR東葛さんは質の高いプレーヤーがたくさんいるチームなので、自分たちとしてはテンポを大事にしていきたいです。気を抜いたら危ない状況になってしまうので、気を付けて臨みたいと思います」