山本由伸の“気遣い”…目が合うと即座に「ついに、ここまで来てくれたんですね!」【MLB】ドジャース 3ー0 カブス(日本時間12日・ロサンゼルス) ピンチを封じて叫ぶ姿、ベンチに戻って見せる屈託のない笑みは、あの頃と全く変わらない。ドジャー…

山本由伸の“気遣い”…目が合うと即座に「ついに、ここまで来てくれたんですね!」

【MLB】ドジャース 3ー0 カブス(日本時間12日・ロサンゼルス)

 ピンチを封じて叫ぶ姿、ベンチに戻って見せる屈託のない笑みは、あの頃と全く変わらない。ドジャースの山本由伸投手が11日(日本時間12日)、本拠地で行われたカブス戦に先発登板し、6回2安打無失点。9三振を103球の熱投で、今季2勝目を掴んだ。28奪三振は堂々のメジャートップ。防御率は1.23となった。 

 26歳右腕を追った、米国出張の初日。3月23日(同24日)、ドジャースのクラブハウスでパッと目が合った。「ついに、ここまで来てくれたんですね……!」。その目を見た瞬間、ぐんぐんとスター街道を駆け上がる右腕との“約束”を1つ果たせた気がした。

 顔を合わすのは、昨年に開幕戦が行われた韓国・ソウルシリーズ以来だった。メジャー2年目を迎える26歳は、あの頃と変わらない表情で思いっきり笑っていた。

 2023年11月、オリックスでの球団イベントが終わった時だった。京セラドームの地下駐車場で、車に乗り込む山本に「お世話になりました。またどこかで!」と声を掛けた。すると、驚きの返事が戻ってきた。「前は(吉田)正尚さんに会いにボストンまで行ったんだから、いつかロサンゼルスにも来るでしょ? お待ちしております(笑)」。別れの挨拶へ伺っただけに……泣かせてきた。

 あれから1年半。初めて訪れたロサンゼルスで久々に声をかけた。輝く瞳は、何一つ変わっていなかった。唯一、変わっているとすれば……。クラブハウスのロッカーが綺麗さっぱり片付けられていることだろうか。棚にはグラブが3つ綺麗に並べられ、きっちりとユニホームがハンガーにかかっている。

 着替えた私服は右隣の“空席”へ。ロッカーに入りきらない野球道具は、真後ろにあるソファに沿うように“整理整頓”。脱いだ靴もしっかりと並べて、1つ飛ばした先に座っている大谷翔平投手とは笑顔で話すシーンが多々見られる。

「金曜日は『SUSHI FRIDAY』って言って、クラブハウスにお寿司が並ぶんです」

 雑談の途中で、相手を“気遣う”姿も変わらない。「オリックスのロッカーは若手が全然、ベテラン側に行かないみたいですね……!(笑)」。会話の主体を古巣・オリックスへと展開する。

 注釈を入れるのであれば、京セラドームの選手ロッカーは「第1」「第2」で部屋が別れている。「第1」が基本的に中堅からベテラン、移籍組の選手たち。「第2」は“ヤングオリックス”が使うというわけである。「太田(椋)や紅林(弘太郎)が第2ロッカーを陣取っているとか(笑)」。愛情を込めてイジる姿も全く変わらない。

 昨年、メジャー1年目の初登板(韓国・ソウル)は笑顔が見えず、心配になった。だが、渡米2年目は古巣を懐かしむほど、気持ちの余裕が生まれていた。「金曜日は『SUSHI FRIDAY』って言って、クラブハウスにお寿司が並ぶんです。最初はそんな感情はなかったですけど、今では金曜日が待ち遠しくなってきています」。無邪気に、そして優しく……。新環境のことも教えてくれる。

 いつも見てきた山本は、先発登板日でも限りなく自然体に近い状態だった。周囲のサポートもあり、充実の表情で今もマウンドに向かう。涙で送り出した地下駐車場は、もう遠い過去。心配は無用。青帽子に刻まれた「LA」が似合う男になっていた。(真柴健 / Ken Mashiba)