(13日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 石橋5―0聖和学園) 阪神甲子園球場に「ルパン三世のテーマ」が響いた。八回表、打席に立つのは石橋の主将田口皐月(さつき)(3年)。「ルパン」は田口のテーマソングだ。 田口の打球が左翼前にき…

 (13日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 石橋5―0聖和学園)

 阪神甲子園球場に「ルパン三世のテーマ」が響いた。八回表、打席に立つのは石橋の主将田口皐月(さつき)(3年)。「ルパン」は田口のテーマソングだ。

 田口の打球が左翼前にきれいに飛ぶと、「ドン」と石橋のスタンドが大きく沸いた。相手に5点差をつけていたが、田口はすかさず盗塁も決めた。「リードしても絶対に気を抜かない。1点取りにいく」。チームメートに背中で語りかけた。

 石橋は四回、入江祥太(3年)の左前安打を皮切りに伊沢颯盛、若月優人(いずれも3年)の連続適時打で3点を先取。さらに田口の内野ゴロで1点を追加した。その裏、聖和学園は2死満塁の好機に代打を送るが、入江が三振に切って取った。

 「集中を切らすな。常に0―0の気持ちでいこう」。ベンチでも田口は声をかけ続けた。甲子園で1勝する――。この目標達成のためだった。

 昨春、石橋は「21世紀枠」で選抜大会に初出場した。田口は「ああ、甲子園って本当に行ける場所なんだ」。だが、チームは無得点のまま初戦敗退。田口は「全国のレベルを体感するとともに、もう一度あの地に立ちたい、そして勝ちたいと強く思った」と振り返る。

 昨秋、新チームの主将になると、福田博之監督に告げた。「僕が監督を甲子園に連れて行きます」。この言葉に福田監督は「正直、驚いた」という。

 今夏の栃木大会。田口は不調に悩まされた。疲労で腰にハリが出て、それをかばう意識からずっと本来の打撃ができない。そんな田口の練習にマンツーマンで付き合ったのが記録員の吉田光来(3年)だ。しっかり腰を入れて軟式球を打つ練習を2人で重ねた。この日の八回の一打は、ようやく戻った会心の当たりだった。「復調してきた。次の試合は田口に注目です」と吉田。

 石橋は県立の進学校。平日の練習は2時間で、専用グラウンドや寮もない。自宅が遠い田口は毎日、自転車と電車で、片道1時間半ほどかけて通学する。「それもトレーニングと思っている」。すべて甲子園で勝つためだった。そしてついに、大切な1勝を福田監督にプレゼントした。

 次戦は強打の青森山田(青森)だが、「次も強い相手なので、もう1勝することを目標にして、勝っていこうと思う」。最後にまた表情を引き締めた。(高橋淳)