(10日、第106回全国高校野球選手権東東京大会2回戦 東亜学園8―0昭和鉄道) もう、朝4時に起きなくてもいい。うれしいような、寂しいような――。昭和鉄道の鈴木駿太郎(3年)は試合に負けた後、複雑な思いだった。 新幹線の運転士になるのが夢…

(10日、第106回全国高校野球選手権東東京大会2回戦 東亜学園8―0昭和鉄道)

 もう、朝4時に起きなくてもいい。うれしいような、寂しいような――。昭和鉄道の鈴木駿太郎(3年)は試合に負けた後、複雑な思いだった。

 新幹線の運転士になるのが夢だった。小さい頃に見た2階建ての新幹線がかっこよくて、人の役に立ちたいと思い、昭和鉄道に進学した。

 鈴木の自宅は千葉県茂原市で、豊島区にある昭和鉄道まで片道3時間。毎朝、5時6分発の電車に乗る生活が始まった。

 きつかったけど、夢をかなえるためなら、と頑張れた。ただ、小学5年から続けていた野球はあきらめた。通学するので精いっぱいだったから。

 でも、高1の夏、たまたまテレビで見た甲子園の選手たちはキラキラしていた。「この場に立ってみたい」。すぐに野球部に入った。

 捕手として鍛えた肩の強さをかわれて、経験のない投手を任された。プロ野球選手の映像を見て、握り方を研究した。今ではカーブ、スライダー、チェンジアップ、スプリットも投げられるようになった。

 10日の初戦、強豪の東亜学園相手に、緩急をつけた投球を貫いた。五、六回は走者を出しても無失点に抑えた。6回8失点だったが、5奪三振。「もっと打たれると思っていた。やりきったと思います」と話した後、つぶやいた。「でも、もうちょっと、みんなと野球をやりたかったな」。明日からは、次の夢に向かって勉強に励む毎日が始まる。=神宮(野田枝里子)