NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25ディビジョン1 第15節(リーグ戦)カンファレンスA2025年4月12日(土)12:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)東芝ブレイブルーパス東京 26-…
NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第15節(リーグ戦)カンファレンスA
2025年4月12日(土)12:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東芝ブレイブルーパス東京 26-56 静岡ブルーレヴズ
革新を恐れない、“反骨の軍団”による「会心の一撃」
機動力のあるフッカー、静岡ブルーレヴズの日野剛志選手
静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)は4月12日、秩父宮ラグビー場で東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)に56対26で快勝し、上位6チームによるプレーオフトーナメント進出を決めた。
昨季の王者で、前節までディビジョン1の首位だったBL東京を相手に8トライを奪う完勝。BL東京ファンの戸惑いを含んだどよめきに包まれた80分間について、静岡BRの日野剛志は「まさに『会心の一撃』という試合でした」と晴れやかに笑った。
フォワード第一列としては身長172cm、体重93kgと小柄ながらも、豊富な運動量とセットピースの安定感で日本代表5キャップをもつ日野は、この日も自身の持ち味を十分に発揮した。前半21分には相手ラインアウトのこぼれ球を器用にボレーキック。はねるようにグラウンドを走り回る姿は、35歳のベテランとなっても変わっていない。
チームはプレーオフトーナメント進出を決めたが、さまざまな経験を積んできた日野は明快に語る。
「ここから『真の勝ち切るチーム』になれるかどうかが問われると思います。僕らは毎回チャレンジャーなのでパンチを出し続けるだけです。昨季の8位からここまできたという自信と勢いは必ずあると思うので、そこは止めずに細かいディテールを詰めていきます」
日野が何度も強調したのはチャレンジャー精神について。それはチームメートたちのこれまでのラグビー人生とつながっている。
「ウチの日本人選手は大学時代にスターだった選手は少ないですし、外国人選手もクワッガ・スミス(南アフリカ代表)やチャールズ・ピウタウ(ニュージーランド/トンガ代表)は素晴らしい経歴がありますが、ヴィリアミ・タヒトゥアなんてどこから出てきたのかってぐらいですから(笑)。反骨心をもった選手が多いです」
トップリーグ時代から鍛え上げたスクラムに加え、“勝負師”として知られる藤井雄一郎監督のエッセンスが浸透し、チームは上昇気流に乗っている。
伝統を受け継ぎながら革新を恐れず、困難な目標にワクワクして挑むという思いが込められた『ブルーレヴズ』の名のもとに、反骨の軍団はチャレンジャーとして頂点に挑む。
(安実剛士)
日野選手はキックも得意だ
東芝ブレイブルーパス東京
東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(左)、リーチ マイケル キャプテン
東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ
「素晴らしいラグビーで勝利をつかんだ静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)に『おめでとう』と伝えたいです。東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)も追い掛ける展開ではありましたが、あきらめることなくしがみついたことで、課題が明確に浮かんできました。前向きに捉えられる要素もありました。
リーチ マイケルの150キャップを勝利で飾ることはできませんでしたが、試合前からみんなで彼の功績を祝おうと思ってプレーしたことは間違いないことです。ここからバイウィークでリフレッシュして、次への課題を一つずつ、つぶしていきたいと思います」
──今週の準備や当日の入り方で悔やまれることはありますか。
「言い訳するつもりはまったくありません。良い準備をして試合に臨むことができました。今日の試合では序盤にリズムに乗り切れず、遂行力も必要な水準ではなかったのでチャンスに取り切れませんでした。静岡BRはそこで取り切ったので、そこが違いになりました」
東芝ブレイブルーパス東京
リーチ マイケル キャプテン
「多くのファンの前で、今日は天気も良くて、見ていて面白いラグビーだったのではないかと思います。リーグワンは面白くて、先週はコベルコ神戸スティーラーズに圧勝して、今日は圧倒されて……。チームとしては波があり、良いメンタリティーで臨まないとこうなってしまうという厳しいリーグだと思います。序盤から最後まで静岡BRは勢いがあって、すべての局面で負けていました。結果を反省して、次の準備に生かせるようにしていきます。どうしてこうなってしまったのか、まだ考え中です。次にこうならないように、同じチームに同じ負け方をしているので変えないといけません。
ここまで150試合してきて、今日は一生忘れない試合です。次は200試合を目指して頑張りたいと思います」
──今週の準備や当日の入り方で悔やまれることはありますか。
「準備は悪くなかったと思います。試合では、自分たちはラインアウトからの攻撃が良いのですが、相手が蹴らずに回してきたことで、自分たちの強みを消してきました。今日はうまくやられた、という感じです。ディフェンスがうまくいかない、アタックで継続できない、無理してアタックしてボールを取られたり、ペナルティを取られたりの繰り返しでした。正直、何を言っていいか分からない状態で、初めての経験ですね。すべてのセットで相手のほうが早くて、相手が先に動いてこちらは動かされる試合でした」
──接点で圧倒されましたが、その理由をどうお考えですか。
「ディフェンスがうまくいっていれば、アタックもうまくいくので。ディフェンスで相手のクイックな攻撃を止めないと厳しいです。相手がやりたいアタックをどんどんさせてしまったら止めるのが難しいので、相手がやりたいアタックをやらせないためにはディフェンスで頑張らないといけません。相手のボールキャリアーがすごく低い姿勢でドライブしてきて勢いがあったので、BL東京が得意とするチョークタックルからのパイルアップもできませんでした。
(今季は静岡BRに)2回負けていますし、次はもちろん勝ちたいです。負けから学ぶことも大きいので、プレーオフトーナメントに向けて頑張ります」
──アタックで無理なパスなどが多かったですが、いかがでしたか。
「プレッシャーがあったのと、リードされていることもあって『フィフティーフィフティー』のパスが増えて、トライを狙ってもノックフォワードなどで継続できずにスコアにつながりませんでした。遂行力のところでは相手のディフェンスがすごくうまくて、自分たちがパスする選手に良いタイミングでタックルしてきたり、間に入ってきたりしていました」
──前半は無得点に終わりましたが、ペナルティゴールを狙うことは考えましたか。
「考えないです。静岡BR相手になるとフォワード勝負なので、ショットは狙わないです。静岡BRも同じ考えでショットを狙わずにきたので、チームとして似ています。プレーオフトーナメントでペナルティゴールを狙うかどうかはそのときに考えます」
静岡ブルーレヴズ
静岡ブルーレヴズの藤井雄一郎監督(右)、チャールズ・ピウタウ ゲームキャプテン
静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督
「試合ごとに成長していると思います。今日はブレイク前の大事な試合でしたが、選手たちが照準を合わせてやり切りました。勝つことができて良かったです」
──外側でチャンスを作れていましたが、試合前から自信のあった部分ですか。
「今までもそうでしたが、スペースを攻められるようにいろいろなオプションを使っています。今日は良かったと思います」
──プレーオフトーナメント進出が決まりましたが、いかがでしょうか。
「気持ちの中では決まっていましたが(笑)、数字上はなかなか決まらなかったですね。レギュラーシーズンの残り3試合、自分たちのパフォーマンスを出せるように準備していきます」
──昨季のプレーオフトーナメント決勝進出した2チーム(BL東京と埼玉パナソニックワイルドナイツ)に今季のレギュラーシーズンでは3戦全勝です。
「ファイナリストに勝たなくてはいけないのは今日ではないので。たぶん、BL東京さんも『これぐらいなら決勝でいけるやろう』と思っているので、決勝に残れるように頑張ります」
──アンストラクチャー(崩れた局面)の攻撃はどれぐらい事前にデザインしているのでしょうか。
「前半19分のトライについては、自分たちの中ではストラクチャーとして考えていました。そのあたりは矢富(勇毅)アシスタントコーチがしっかりやってくれています」
──クワッガ・スミス選手が欠場でしたが状態はいかがですか。
「プレーオフトーナメント決勝までいくには(最多で残り)5試合を戦わなくてはいけないので、けが人が出たとしても誰が出ても同じようにできるようにしなくてはいけません。リーダーがたくさんいたほうが良いですし、今日はチャールズ(・ピウタウ)が先頭に立ってやってくれました。良い形でブレイクを迎えることができます」
──ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)が良かったですが、いかがでしたか。
「BL東京はブレイクダウンが強いチームで、そこでスローダウンさせられると自分たちのアタックができなくなると考えていました。アタックでどこに接点を作るか分からない状況を作って、ジャッカル(スティール)されないように調整しました」
──先制トライにつながったヴィリアミ・タヒトゥア選手のキックパスについてはいかがでしたか。
「タヒトゥアは最もキックしなさそうな選手なのですが(笑)、おそらく相手は当たってくるだろうと思っていたから外にスペースができたのでしょう。意外とキックが上手なんです」
静岡ブルーレヴズ
チャールズ・ピウタウ ゲームキャプテン
「BL東京はベストなチームだと分かっているので、そこをリスペクトしながら準備をしてきました。これからシーズン終盤に向けて、自分たちのラグビーをしっかりしていきたいと思います」
──いまのチーム状況はバランスが良いのではないでしょうか。
「藤井監督とコーチ陣が素晴らしいゲームプランを用意してくれて、どこからでも自信をもってアタックできると思っています。また、グラウンド上でも相手ディフェンスの変化を見極めて、判断して攻めることが大事です。セットピースでフォワードが土台を作ってくれていると思います」
──前半19分にトライを決めた奥村翔選手へのタップパスが見事でした。振り返っていただけますか。
「セタ・タマニバルのプレッシャーを感じていたので、自分のオプションとしてボールを動かしました。そこに奥村が入ってきてくれて、良い判断だったと思います。相手がラインスピードを上げて詰めてくるところに対して、外側で抜けると感じていたので、そうした形でスペースを攻めることができて良かったです」
──チームは好調ですが、優勝に必要なことは何でしょうか。
「毎週良い準備をしていくことです。ベーシックのブレイクダウンやセットピースが大事になります。強いチームと戦って経験していくことも大事で、経験して前に進んでいくことが必要だと思います」