今年も東京六大学野球の春季リーグが4月12日(土)に幕を開ける。昨季は早稲田大学が春秋連覇を成し遂げたが、リーグ創設100周年を迎える今季も熱戦が繰り広げられることになりそうだ。 昨年秋のドラフト会議では、すでに一軍で存在感を示している宗…

 今年も東京六大学野球の春季リーグが4月12日(土)に幕を開ける。昨季は早稲田大学が春秋連覇を成し遂げたが、リーグ創設100周年を迎える今季も熱戦が繰り広げられることになりそうだ。

 昨年秋のドラフト会議では、すでに一軍で存在感を示している宗山塁(楽天・ドラフト1位)や、篠木健太郎(DeNA・ドラフト2位)などが指名を受けたが、今秋はどれだけの選手が指名されることになるのか。注目を集めそうな4年生を7人紹介したい。


昨年、早稲田大の春夏連覇に貢献した伊藤樹

 photo by Sankei Visual

【伊藤樹・投手(仙台育英高→早稲田大)】

 昨年はエースナンバーの11番を背負い、早稲田大の春秋連覇に貢献した伊藤樹。昨季に逃した大学4冠と、ドラフト1位でのプロ入りに向けて運命の1年を過ごすことになる。

 仙台育英高では、甲子園に2度出場(2020年の交流試合を含めると3度)し、3年春のセンバツ甲子園(2021年)では、エースとしてチームのベスト8入りに貢献した。早稲田大では1年春のリーグ戦から6試合に登板するなど、2年春まではリリーフとして起用された。最速151キロの速球に加えてカットボールやスプリット、カーブを巧みに投げ分ける安定した投球で総合力の高さを示した。

 2年秋のリーグ戦からは先発を任され、4勝(1敗)、防御率1.99をマーク。小宮山悟監督は翌春のシーズンを前に、歴代のエースが背負ってきた背番号11を伊藤に託し、さらなる奮起を促した。

 そして、新たな背番号を背に迎えた3年春のリーグ戦では、勝ち星こそ3勝(1敗)にとどまったものの、8試合に登板して防御率1.49の好成績を残し、初のベストナインを受賞。対明治大学3回戦(2024年4月29日)では、自己最長の11回を投げて完封勝利をマークするなど、ここ一番での活躍も光った。

 大学日本一を決める明治神宮大会では、西川史礁(ロッテ)らを擁し、連覇を目指す青山学院大に敗れて準優勝に終わったものの、存在感を見せつけた伊藤は大学日本代表にも選出。続く秋のリーグ戦でも4勝を挙げ、レギュラーシーズン終了後に開催された明治大との優勝決定戦の先発マウンドも任された。リーグとしては14年ぶりの大一番で、伊藤は中2日の登板ながら、明治大打線を3安打に抑え、9回114球での完封勝利。2季連続の優勝に貢献し、自身初の胴上げ投手となった。

 続く全日本大学選手権では、環太平洋大の徳山一翔(楽天)との壮絶な投げ合いの末に、延長戦で敗れて日本一は逃したが、エースらしい投球で名門復活を支えた。大学ラストイヤーは、宮城誇南(3年)、リリーフでの起用が濃厚な速球派右腕・田和廉(4年)らとともに活躍が期待される。

【小澤周平・内野手(健大高崎高→早稲田大)】

 リーグ3連覇を目指すチームの新主将を任されたのは、フルスイングを持ち味とする強打の内野手、小澤周平だ。健大高崎高時代には3年間で52本塁打を記録。1年生秋の明治神宮大会(2019年)では3番セカンドで出場し、チームの準優勝に貢献した。甲子園の出場は3年のセンバツ甲子園(2021年)1度きりだが、チームが2回戦敗退に終わったその大会でも、フェンス直撃の二塁打を放って気を吐いた。

 早稲田大に入学後は、2年生春のリーグ戦で初出場を果たすと、そのままサードのレギュラーに定着。その年の春に就任した金森栄治助監督の「最短距離でバットを出すことを意識した指導」で大きな飛躍を遂げた。

 吉納翼(楽天)、印出太一(三菱重工East)らクリーンナップが抜けた打線を、持ち前の強打で牽引する。

【高須大雅・投手(静岡高→明治大)】

 192cmの長身から投げ下ろされる、最速153キロの速球を持ち味とする明治大の高須大雅は、昨年に続く大きな飛躍が求められる1年となる。

 静岡高3年生の夏には、エースとして県予選5試合に登板し、37回無失点の好投を見せてチームを夏の甲子園出場に導いた。だが、本戦では好投が報われずに初戦で大会を後にした。

 明治大に進学後、フォーム改造に着手。セットポジションからの速球と、もともと得意としていたスライダーに加えて、フォークやカーブを習得して投球の幅を広げた。3年生で迎えた2024年春のリーグ戦では6試合に登板し、3勝1敗、防御率1.38の好成績を残して、最優秀防御率のタイトルを獲得。大学全日本代表にも選出された。

 秋のリーグ戦では、右肘を故障して3試合の登板にとどまったが、投球回数を上回る奪三振数と、四死球の少ない安定した投球も魅力。かねてから評価の高い才能を完全開花させ、2023年春以来のリーグ優勝とドラフト1位でのプロ入りを実現させることができるか。

【小島大河・捕手(東海大相模高→明治大)】

 先述の高須に加えて、大川慈英や、毛利海大と菱川一輝の両左腕などドラフト指名候補が揃う投手陣をリードするのが、強肩と強打を備えた正捕手の小島大河だ。

 東海大相模高入学時は二塁手だったが、捕球が優れていることを理由に、高校2年生の秋に捕手にコンバートされた。翌年春のセンバツ甲子園に出場し、石田隼都(巨人)らをリードしてチームを全国制覇に貢献した。

 明治大でも捕手としてプレーを続け、2年生で迎えた春のリーグ戦でレギュラーポジションを手にし、リーグ優勝。パンチ力を秘めた打撃で存在感を示し、自身初のベストナインにも選出された。全日本大学選手権では、決勝で常廣羽也斗(広島)を擁する青山学院大に屈してチームは準優勝に終わったものの、小島自身は大会4試合で12打数6安打と活躍し、敢闘賞を受賞した。

 昨シーズンは早稲田大に春夏連覇を許す形となったが、個人としては大学日本代表に選出されて4番として活躍するなど、着実にレベルアップを重ねてきた。リーグ戦通算49試合に出場し、打率.337、56安打、3本塁打、38打点の成績を残してきた"正妻"のラストシーズンに期待が高まる。

【松下歩叶・内野手(桐蔭学園高→法政大)】

 松下歩叶(まつした・あゆと)は勝負強さと、パンチ力のある打撃が魅力の内野手。桐蔭学園高時代には強豪校が揃う神奈川県予選で敗れ、甲子園出場は果たせなかったが、4番遊撃手としてチームを牽引した。

 法政大入学後は、1年秋にリーグ戦初出場を果たすと、2年生の秋に二塁手のレギュラーとして13試合に出場。3年春からは三塁に周り、同年秋まで3シーズン続けてベストナインを獲得して大学日本代表にも選出された。

 昨秋のリーグ戦では打率.352をマークして初の十傑入り。5本塁打、13打点を記録した。大島公一監督から主将と四番を任された、チームにとって欠かせない存在だ。

【小畠一心・投手(智弁学園高→立教大)】

 184cmの長身右腕で、最速151キロの速球が武器。黒田博樹氏の父・一博氏が設立した少年野球チーム「オール住之江ヤング」に在籍した中学時代には、U15日本代表に選出されるなど注目を集めた。

 智弁学園高では、在籍期間中に4度の甲子園出場を成し遂げると、高校3年の夏にはエースとしてチームを初の決勝に導いた。智弁和歌山高との"兄弟校対決"で惜しくも敗れたが、小畠の存在が広く知られることになった。

 立教大では2年春に初のベンチメンバー入りを果たすと、この年はリリーフとして計14試合に登板。3年春から先発の一番手として起用され、球威のある速球とフォークやスライダーといった変化球を織り交ぜながらのピッチングで2完封を含む3勝(3敗)。リーグ4位の防御率1.52を残し、大学日本代表にも選出された。

 秋のリーグ戦では右肘痛の影響で途中離脱して1勝にとどまったが、7試合のマウンドに上がり、エースとしての責任は果たした。早くから注目を集めてきた速球右腕のもとに、チームとしては2022年の荘司康誠(楽天)以来となる吉報は届くか。

【外丸東眞・投手 (前橋育英高→慶應大)】

 身長は173cmながら、最速149キロの速球とスライダー、カットボールを巧みに操る外丸東眞(そとまる・あずま)。前橋育英高では5大会連続で甲子園に出場し、高校3年で迎えた夏の甲子園(2021年)では、2回戦で京都国際高校と対戦。安定した投球を見せたが、2回に許したソロ本塁打が決勝点となり、0対1で涙を飲んだ。

 慶應大では1年春のリーグ戦6試合に登板して安定した投球を見せると、秋のリーグ戦では先発入り。速球と鋭い変化球を低めに集めるピッチングでチームを支えた。そして、2年秋のリーグ戦では6勝無敗、防御率1.54でリーグ優勝に貢献し、ベストナインを獲得した。続く明治神宮大会では、大学4冠達成を目指す青山学院大学を完封し、チームとして2019年以来の日本一を成し遂げた。

 昨年も安定した投球でチームを支え、夏には大学日本代表にも選出されたが、秋には右肩を負傷してベンチを外れる試合も。昨秋のリーグ戦はチームも5位に沈み、悔しさの残る1年となった。大学ラストイヤーは主将に就任。これまで通算43試合に登板し、防御率2.20の安定した投球を見せてきた右腕のさらなる躍進に期待が高まる。