例年以上の大混戦となっている今季のJリーグ。その中にあって注目されているのが、3連勝を飾って4位に浮上した浦和レッズだ。なぜV字回復できたのか? 名門の「知られざる」復活劇のウラ事情と、「残された」最後の課題を、サッカージャーナリストの後…
例年以上の大混戦となっている今季のJリーグ。その中にあって注目されているのが、3連勝を飾って4位に浮上した浦和レッズだ。なぜV字回復できたのか? 名門の「知られざる」復活劇のウラ事情と、「残された」最後の課題を、サッカージャーナリストの後藤健生があぶり出す!
■起用し続けた「同じ11人」
さて、町田戦で成功した、松尾佑介をトップに据えた新布陣が成功すると、マチェイ・スコルジャ監督はその後の京都サンガF.C.戦でも横浜F・マリノス戦でも、同じ11人を先発で起用し続けた。
FC町田ゼルビア戦から京都戦が中2日、京都戦から横浜FM戦までが中3日という強行日程であるにもかかわらずである。
その点は、スコルジャ監督自身も考えていたようで、横浜FM戦後の記者会見では自ら「スタメンを変えないというリスクを取った」と説明。次はローテーションするつもりだと語っている。
「スタメンを変えない」という判断をした理由は、成功した形を大事にして、より熟成させるためだったのだろう。6月にクラブ・ワールドカップに出場する浦和にとって、それまでにチームとしての形をある程度、完成させなければならないのだ。
2023年にスコルジャ監督が初めて浦和にやって来たときも、アル・ヒラルとのAFCチャンピオンズリーグ決勝が控えていたので、スコルジャ監督はチーム作りを急ぎ、守備を固めてカウンターを狙うという形で劣勢と見られていた決勝でアル・ヒラルに勝利して見せた。
今回も、その再現を狙っているのだろう。しかも、シーズン開幕直後は不調が続いていたので、6月を目指してチーム作りを急がなければならない。そのために、無理をしてメンバーを固定して3試合を戦ったのだ。
■今後も「継続する」試行錯誤
開幕直後のパフォーマンスを見ていたら、クラブ・ワールドカップでは惨敗必至かとしか思えなかったが、今のチームであれば、それなりにインパクトを残すことも可能かもしれない。
ただ、もちろん完成形には遠いし、課題もある。
スコルジャ監督は、この3試合、スタメンを固定したうえに、リードして迎えた後半に同じような交代を使って戦った。
右サイドの金子に替えて松本泰志を投入して、トップ下に入れ、トップ下にいた渡邊を右サイドに移す。そして、左サイドのマテウス・サヴィオに代えて原口を入れるという形だ(もちろん、そのときの選手の状況などによってバリエーションはつけるが)。
リードしている状況での交代だから、もちろん勢いをつけてダメ押し点を狙うという意味もあるが、基本的にはゲームを落ち着かせるのが目的の交代なのだろう。
だが、残念ながら、交代でゲームが落ち着いたとは思えない。むしろ、交代の後、明らかにパフォーマンスが落ちる印象だった。
つまり、交代カードの切り方については、これからも試行錯誤が続くと思われる。
■優勝のために「必要なこと」
3連勝を飾った浦和は、これから「ホーム5連戦」の後半3試合を迎える。
スコルジャ監督自身が語ったように、同じ先発メンバーで乗り切ることは無理だとすれば、次の3試合でどのようなローテーションを使うのか。そして、どのような交代カードの切り方をするのか……。
そして、クラブ・ワールドカップではかなり押しこまれる展開が予想されるので、当面は守備重視のチーム作りに進んでいくのだろう。そして、カウンターを磨き、セットプレーのバリエーションを増やして戦う……。だが、その後のJリーグではまた違った形の試合に備えなければならない。
浦和は3連勝によって順位を暫定4位まで上げてきた。浦和にとっては幸いにも、今シーズンのJ1リーグは史上まれな大混戦状態となっている。浦和は序盤戦でつまずいたのだが、他のチームも同じようなもの。現在、首位を走っている京都がこのまま突っ走るとも思えない。
つまり、浦和の今のパフォーマンスを見れば、まだまだ逆転優勝の可能性は十分に残っているのである。クラブ・ワールドカップの疲労を抱えての後半戦では、また別の戦い方が必要となるのかもしれないが……。