「ボクシング・IBF世界フライ級タイトルマッチ」(29日、愛知国際展示場) IBF世界ライトフライ級王者の矢吹正道(32)=LUSH緑=が同ベルトを保持したまま、IBFフライ級王者のアンヘル・アヤラ(24)=メキシコ=に異例の挑戦を果たし…

 「ボクシング・IBF世界フライ級タイトルマッチ」(29日、愛知国際展示場)

 IBF世界ライトフライ級王者の矢吹正道(32)=LUSH緑=が同ベルトを保持したまま、IBFフライ級王者のアンヘル・アヤラ(24)=メキシコ=に異例の挑戦を果たし、12回1分54秒、TKO勝利を飾った。日本勢としては史上初の2階級同時制覇を達成。ただ、3回には偶然のバッティングで右頬を深くカットし、激しい流血で視界がふさがり恐怖と戦っていたことを明かした。

 白いトランクスと白いシューズを真っ赤に染めながら、壮絶な流血戦を制した。1回、いきなり近い距離での緊張感の高い打ち合いとなったが、カウンターの強烈な左でダウンを先取。2回にもカウンターの鋭い右でダウンを奪ったが、3回にはバッティングで両者顔面から出血し、矢吹は右頬を深くカットした。ただ、その後のラウンドもペースは握らせず、最終12回にはカウンターの右でダウンを奪い、追撃のラッシュにいったところでレフェリーが止めた。リング上のインタビューでは喜びを語るとともに、「カットもあってずっと右が見えなくて、足がつっちゃって、いくにいけなかった。(バッティングは)めちゃくちゃ痛かった。この後(傷口を)縫うという処置をしなきゃいけないことにおびえてます」と本音で笑いを誘った。

 試合後の会見では、記者のスマートフォンのインナーカメラを使って自身の顔面を確かめながら「鼻血めっちゃ出てる。(頬は何針縫った?)たぶん8針くらい」と明かし、「切ってからずっと目がぼやけていて、血と汗とワセリンが(目に)全部入って、曇っているような。やべえなと。ずっと視界が見えなくて」と振り返った。負傷箇所が目の上なら止められる可能性もあったが、12回まで戦い抜いた。白いトランクスが真っ赤に染まるほど流血し、「自分の血がずっとポタポタ落ち取って、止めてくれやんのか?と思って(笑)。これええんかよ、と思って、やべえなと。視界が曇った瞬間はビックリした。瞬間的なパンチを食らっていたら終わっていたかもしれない」と明かした。

 試合は終始リードしながらも、打っても打っても前に出てくる相手に気圧される部分もあり、視界が狭まる中で降ってくる強打にも恐怖感があったと述懐。「目が曇ってきて、戦意喪失とまではいかないが、ちょっと弱気になった部分があった。俺、メンタル弱えなと思った」と吐露した。

 好戦的な相手を鮮烈に倒して会場を沸かせたが、「勝ったのが全て。いい試合をしても負けたら終わりなので」と胸をなで下ろした。今後はライトフライ級は返上する意向で、WBO世界フライ級王者アンソニー・オラスクアガ(米国)の名前も出しながら「まずは指名試合をして、みんながみたいカードはその先かな」と統一戦も視野に入れた。