第2回となる今回は注目選手・クロスカントリー部門のお2人。大堰徳(スポ3=岩手・盛岡南)と神幸太朗(スポ1=北海道留萌)。上級生としてチームを引っ張る大堰選手と期待のルーキー神選手のスキー、そして全日本学生選手権(インカレ)にかける思いを…

 第2回となる今回は注目選手・クロスカントリー部門のお2人。大堰徳(スポ3=岩手・盛岡南)と神幸太朗(スポ1=北海道留萌)。上級生としてチームを引っ張る大堰選手と期待のルーキー神選手のスキー、そして全日本学生選手権(インカレ)にかける思いを伺った。

※この取材は10月10日に行われたものです。

「活躍するためにここに来ている」(大堰)


早稲田ポーズをする大堰

――お互いに紹介をお願いします

大堰 今年入ってきた神幸太朗は1年生として前期を終了して、夏休みを経て練習を積んでうちの新たな戦力として着々と力をつけてくれている期待の新人です。彼のすばらしいところは練習に対して工夫を自分でできるところや、いろいろ考えながら行動できるというところで、僕はすごく尊敬しているところです。競技だけじゃなく私生活でも出ているのではないかなと思います。それをしっかりと発揮して冬に活かしてもらえればなと、期待しています。僕自身もライバル意識をもっていますし、彼には上に立つような存在になってほしいな、頑張ってほしいなと思います。

 まだ前期しか関わりがなくてあまり時間も経っていないので全ては分からないと思うんですけど、言葉で伝えてくださるのがすごく上手で、練習中や寮生活の面でもすごく丁寧に教えてくださるので頼りになる先輩だなと思います。

――普段一緒に過ごされることはありますか

大堰 寮生活なので基本的には一緒に生活していますし、朝ごはんや夜ごはんを一緒に食べたりどこかに出かけに行ったりします。野球観戦は行ったよね。結構プライベートでも一緒に行動することは多いかなと思います。

――この夏いちばんの思い出はありますか

大堰 僕は9月の最初から中旬くらいまでスウェーデンに合宿に行きました。オフ期間の海外での合宿は僕自身初めてでした。しかもスキートンネルという夏でもスキーに乗れる施設に行き、実際の冬の感覚を練習で獲得することができたのは大きかったのかなと思います。夏休み期間中は練習面においてすごく充実した期間を過ごすことができたと思います。

 僕も同じく8月の上旬からノルウェーの合宿に行かせてもらって、夏の海外は初めてでその中で他の国の選手と一緒に練習する機会があり、いい刺激をもらえたのでそれが印象に残っています。帰国してからの練習や合宿もあってそこでしっかりトレーニングを積めたのでいい夏の期間になったかなと思います。

――海外選手と交流されたんですか

大堰 そうですね。トップ選手がいたので僕も結構現地の方たちとお話をしました。(普段は)あまり一緒に練習する機会がないですが、今回運が良くてトップの選手の滑りを見ながらトレーニングをできたのはよかったです。世界各国から選手たちが集まってきている合宿だったと思うので、いい刺激だったんじゃないかなと思います。

――お2人が初めてお会いになったのはいつですか

 早稲田の関わりというところでは高2の時ですかね。自分が高2の時に夏の大会で大堰さんに「早稲田どう」って声をかけていただいて、それがいちばん最初の関わりかなと思います。

――大堰さんはどうして神さんに声をかけられたんですか

大堰 インターハイ(全国高等学校総合体育大会)で戦った時に、僕が高3の時には(神は)上位に来る選手だったので、その時から注目していました。同じ環境で練習を積んで、早稲田は強い選手を求めているので僕も新しい刺激というか、そういうものがあれば上の舞台で戦えるんじゃないかと考えていました。普段からそういう選手しかいないですが、幸太朗はものすごい素質をもっている選手で魅力的に感じましたし、一緒にトレーニングして上を目指したいなと、声をかけるきっかけになったかなと思います。

――今回の対談は注目選手のお2人ということですが、いかがですか

大堰 注目選手として選んでいただいたのはそうなんですけれども、僕以外にも注目する選手は結構いると思います。対談しない人もいますがその中で今回は選んでいただき注目されているというところで、プレッシャーに感じるだけじゃなくて自分自身がスキーで活躍するためにここに来ているので、純粋にスキーを楽しめたらなと思います。昨年はインカレで優勝するために頑張ったというのは結構ありましたが、それで自分を追い込みすぎてしまって本来のパフォーマンスが発揮できたのか怪しいところがありました。もちろんプレッシャーはあると思いますが、いちばんは楽しむことを大事にして、支えてもらっているチームメイトやコーチに恩返しできるようにしたいと思っています。

 高校の成績で注目選手と選んでいただいたと思うんですけど、大学に入ると練習時間も違いますし早稲田で一緒に練習しているだけでも全然違うなと思うので、注目選手として選ばれているんですけど挑戦者というか、チャレンジャーとして頑張りたいと思います。インカレはどういうものなのかあまりわからないんですけど、世界大会も行きたいと思っていて、その中で世界大会もインカレも走れるようにコンディションを整え、注目選手として成績を残せるようにしたいなと思います。

「今はすごくコンディションがいい」(神)


笑顔を見せる神

――現在の調子はいかがですか

大堰 最近足を痛めた状態で今週はあまりトレーニングに行けていないのが実情です。全体的にオフシーズンのトレーニングを振り返ると昨年とは違う視点でいろいろ見れるかなと思います。とくに技術面は先ほど話した海外で雪上の感覚をつかめたり、コーチからのフィードバックをいただける回数を増やしたり、上がっているんじゃないかなと思います。あとはこの秋残り3週間くらいでそのあとシーズンインなのでそれまでに体力面などで強化していければなという状況です。

 今はすごくコンディションがいいです。4月5月くらいに膝をけがしてしまってずっとランニング系ができていなくて、あまり思うように練習もできていなかったんですけど、ノルウェーキャンプの8月くらいからやっと練習ができてきて、今いちばんコンディションはいいかなという状態です。これから雪が降るまでの期間がいちばん大切な期間だと思うので、そこでもう1つ頑張って、シーズンに向けて調子を上げられたらなと思います。

――昨シーズンを振り返って目標の達成度や満足度はいかがですか

大堰 昨年は世界大会には出ていなかったので基本的に国内大会を回ってというかたちだったんですけど、インカレも出場させていただきました。結果は30キロクラシカルで2位、10キロフリーで12位、リレーが2位でした。あと1歩勝ちきれないみたいなレースが結構多かったなと思います。(クラシカルで)1位の選手は世界大会で活躍している選手だったので、同期ですがまだ実力に差があったなと感じたレースでした。1歩足りないのは何かなと考えることが大事なのかなと思いながら、そういうシーズンだったと振り返ります。他の全日本(選手権)や学生の大会もそうですけど、1つひとつの大会にどういう意識をもって挑むのか、終わった後にどう振り返りをして次のレースに活かすのか、オフシーズンはどう過ごすのかということで考えさせられたシーズンだったと思います。結果が悪かった良かったじゃなくて、出た結果に対してどうアプローチしていくかを考えさせられました。

 世界ジュニア(選手権)が2月にあってそれに出場することがいちばんの目標だったので、達成することができ昨シーズンは良かったです。帰ってきた後すぐにインターハイがあったり、高校の大会でいちばん大きな大会があったり、その後も大会がありましたが、そこで全く走れませんでした。成績が残せなくてシーズンの中でも波がかなりあったので、そこを波があってもその高い位置で維持できるような選手になりたいと思ったシーズンでした。

――昨シーズンから今シーズンに向けて、収穫や課題はありましたか

大堰 結果をどう受け取るかというところで考え方というか、分析の仕方というところではいろいろ学べたシーズンだったので、今年はそれを活かせているのかなと思います。さっき幸太朗からもありましたが、(調子の)波。この試合は良くて、この試合は悪くてみたいな波が僕自身もあったなと感じました。波がないような選手ってやっぱり強いと思うので、そこは意識しながらやっていきたいと思います。

 昨年は高校生で自分はかなりコーチに頼って調整も全部管理してもらってやっていた中で世界に行けたり、インターハイで優勝したりということがありました。今年に入ってから大学生になって自分で練習したり、調整したりというのがほとんどで、昨年とは環境が全く違います。今年の前期、4月からは練習できたりできなかったりで自分との戦いという感じがありました。それが今少しずつできるようになってきたので、収穫というか自分の中で成長できている点かなと思います。

――今年の夏はどのようなところに重点を置いて、練習されていましたか

大堰 今年の夏重点的に行ったのは技術練習です。とくに冬につながる滑りというか、夏は雪がないのでローラースキーというタイヤが2つついた状態のスキーで路面を走ります。やっぱりスキーとローラースキーは違うので、その感覚の違いを理解しながら練習することが大切かなと思っています。僕たちは冬のスキーが本番なので冬にどう勝つかということを戦術的な面でも意識の違いが起きないように気をつけながら練習できたかなと思います。あとは筋力トレーニングも今年は力を入れ、動作改善も含めてジムに通いながら正しい動きで正しい力が発揮できるように意識作り、動き作りをしてきました。それがしっかりとシーズンに発揮できればと思います。

――海外合宿の際に戦術的なことでトップ選手から教わったり学んだりしたことはありますか

大堰 練習中に直接話を聞くことはできなかったんですけど、視覚的な部分でいろいろ情報をもらったというか、見て学ぶというかたちでした。やっぱり(トップ選手は)楽に滑っているように見えます。体の大きさも関係あると思いますが、技術的な面で見ても違いが明確だなと思う部分もありました。それは今すぐに身につけられるものじゃなく、コツコツやっていくしかないですが、このくらいの差があるのかというのは感じました。

――神さんはいかがですか

 技術面の練習は今までスキーをやってきていちばんじゃないかというくらい考えていました。早稲田大学のスキー部に入って、世界の選手とどう違うかとか科学的に見てどうなのかという話ができる選手やコーチが身近に今までいなかったので、そうやって話をするのも楽しいですし、話から練習につなげるのも楽しかったので、自然とそれが重点的にできたのかなと思います。

――具体的に変化した点はありますか

 今までの自分のフォームがあるので大きく変えたところはないですが、上半身の使い方では骨盤が体の真ん中、大きなところにあるので、骨盤をどう使うかというのはかなり変えました。意識も変えましたし、実際にも変わっているかなと思います。

――神さんも海外合宿に行かれて学べたことはありましたか

 海外選手は上半身がすごく太いというか体幹がしっかりしていて、見た目から違うなというのをジュニア世代でも感じました。そこもプラスして、重点的には体幹トレーニング、重りを持つのではなくて自重でトレーニングするというのも心がけてやっています。

――お2人から見てクロスカントリー部門はどのような雰囲気ですか

大堰 基本的には明るい感じですね、プライベートでも一緒にいろいろなところに行きます。練習中に話しやすい雰囲気作りもそうですがいろいろな刺激をもらったり、指摘し合ったりします。悪いところはこうした方がいいよとか、技術的な面はチームでサポートしてもらったり、し合ったりとかそういうことができる部門だと僕は思います。僕自身も幸太朗からどうすればいいですかと聞かれた時にはこういう風にしてるよと言ったり、逆に幸太朗はどうやってんのかなと見たりしています。お互いをサポートし合うというか指摘し合うというか、その関係性はすごくできているすばらしい関係だと思います。

 僕もすごくいい雰囲気だなと思います。2年生のランナー部門の選手が4年生にアドバイスをしたり、これはどうですかと言ったりしていたのがすごいなと思います。周りからみた情報を学年関係なく伝えているのがすごいなと思います。自分はまだそこができていないので、そこができるようになったらいいなと思います。

――クロスカントリー部門で練習量が多い選手や尊敬する選手はどなたですか

大堰 練習量やメニュー的にはみんな同じようなメニューをこなしていると思います。差があるかと言われるとそうではないと思いますが、2年の滝沢(育矢、スポ2=新潟・十日町)はスウェーデンに一緒に行き、海外選手の情報、この選手はここでどう活躍したとかどういう成績を収めたかということに興味をもってやっているので、純粋にスキーに興味をもっていてそれが競技にも出ているのかなと思います。練習に対しても自分の中で考えをもっていたり、部門内で共有したり、そういうことができる選手です。おそらく本人の口から出ていると思うんですけど、世界ジュニア(選手権)が最後で結構狙っている、そういう面で世界の大会で活躍するという明確な目標がある選手は刺激があります。滝沢以外もそうですけど、挙げるとしたら滝沢です。

 僕は徳さんです。インカレとは違う路線になってしまうんですけど、全日本のチームで自分はU20で入れる人数がちょっと多いです。U23の徳さんの世代になると一気に枠が狭まって、世代の中でもトップの方にいないと入れないという年齢になります。その中でナショナルチームに入って早稲田の中でも練習を引っ張ってくださる選手なので、尊敬しています。

――聞いていかがですか

大堰 純粋にうれしいですね。幸太朗は同じ競技者として高い意識をもっていて、年はちょっと離れてますけど、先輩としてあるべき姿をしっかり見せられるようにできたらなと思います。

――インカレの注目選手はどなたですか

大堰 毎年1年生は期待がかかる選手が結構出てくるので、そういった面でも幸太朗は注目する選手だと思います。さっき話があった世界ジュニアの日程と被るわけじゃないですが、帰国して2日後に大会とかそのくらいの難しい日程ではあると思います。それでも1年生ならではの果敢に挑戦する姿、そういうのを武器に大舞台で活躍してほしいな、優勝を目指してほしいなと思います。そこで僕も負けずにインカレ優勝を目標に頑張っていきたいなと思います。

 僕はランナー部門の小池駿介(スポ2=北海道富良野)さんです。今年は日本での大会がメインになると思います。駿介さんと話をしている中で日本の大会に力を入れていて、すごく意気込んでいるというか気持ちの面でいちばん気合が入っていると思うので、インカレは本当に注目選手だと思います。

――ご自身の注目ポイントはどこですか

大堰 今年はインカレの種目が1つ増えてスプリント種目が追加され、レースが1つ増えます。スプリントは僕が結構得意としている種目ではありますが、U23(ノルディック世界選手権)の日程が近くて終わってからの調整になります。難しいレースではあるんですけれどもスプリントは僕の中ではいちばん自信にしているところなので、1番先にゴールするというのが目標というか、優勝したいなという思いが強くあります。スプリントは爆発的な力を発揮するのが醍醐味というか、そういう駆け引きなどがうまくできる選手が勝つと思うので、注目してもらえたらなと思います。

 世界ジュニアもあって日程的にもベストコンディションでは臨めないとは思うんですけど、昨年も同じような日程でそれを経験したので昨年の経験を活かしてベストコンディションじゃなくても走れるぞ、というところに注目して見てもらいたいと思います。全てのレースで先頭集団に食らいついて頑張りたいなと思います。

――具体的な目標はありますか

 ディスタンス種目で入賞です。

――大堰さんも具体的な目標をお願いします

大堰 もう優勝です。優勝しかないです。スプリント種目だけじゃなくてディスタンス種目もあります。僕が出る全ての種目、リレーでは昨年足をつってしまったのでやっぱりリベンジですね。全ての種目で早稲田がトップを飾れるようにということを目標にしています。

――今シーズン全体の目標を教えてください

大堰 僕はやっぱり世界大会のU23が今年のいちばんの目標です。10番以内に入ると次のシーズンでAクラス、W杯をいろいろ回ったり全日本の強化指定選手のA指定で選んでいただけたりするので、最大の目標としてはU23の世界大会で10番以内を目指しています。もちろんすごく厳しい目標設定ではあるんですけれども、高い目標をもつことでオフシーズンから高い意識をもって練習できると思います。コーチとも相談しながらやってきていることもあるので、そこに向かってまずは全てをかけながら残りのあと3、4カ月くらいしっかりと目標に向かっていけるように頑張りたいなと思います。

 U20の世界ジュニアで15番以内に入ることです。30番以内に入れば来年のナショナルチームに入れるんですけど、世界ジュニアで入賞することが目標なので、そのために今年はさらに上の目標で15番以内に入れるように頑張りたいなと思います。

――最後に色紙に言葉を書くとしたらどんな言葉を書きますか

 僕は「挑戦者」です。1年生で挑戦者の気持ちがないと練習の気持ちの入り方が違うと思いますし、挑戦者と思うことでもっと上を目指せると思うので、ずっと上を目指し続けるために挑戦者というのを目標にします。

大堰 「勝つ」です。シンプルですけど、やっぱり勝ちたいですね。優勝したい、純粋にそういう気持ちが大事なのかなと思います。弱気にならずに、自分にも勝つという意味でも勝つという言葉を書きます。

――ありがとうございました!

(取材・編集 堀内まさみ、槌田花)

◆大堰徳(おおぜき・ちから)

岩手・盛岡高出身。スポーツ科学部3年。クロスカントリー部門。プライベートでは部員の皆さんといろいろなところに行く機会が多いという大堰選手。その実力と勝ちにこだわる強い気持ちで勝利をつかみ取ってくれることでしょう!

◆神幸太朗(じん・こうたろう)

北海道留萌高出身。スポーツ科学部1年。クロスカントリー部門。ハマっていることは音楽を聞くこと。おすすめの1曲はVaundyの「そんなbitterな話」。多くの先輩から評価される高い実力をもつ神選手の初インカレにぜひご注目ください!