「100%自信があります」 そう強く意気込んだ。近年では進学傾向にある今の高校生では珍しく、「高卒でプロ野球選手になります」と早々にプロ志望を宣言しているのが昌平のスラッガー・櫻井 ユウヤ内野手(3年)だ。 180センチ、80キロ。がっちり…

「100%自信があります」

 そう強く意気込んだ。近年では進学傾向にある今の高校生では珍しく、「高卒でプロ野球選手になります」と早々にプロ志望を宣言しているのが昌平のスラッガー・櫻井 ユウヤ内野手(3年)だ。

 180センチ、80キロ。がっちりとした体格から放たれる強烈な打球が魅力。持ち前の長打力で、高校3年時春の段階で40本塁打まで積み上げている。今秋のドラフトで指名されれば、同校では21年に楽天からドラフト1位を受けた吉野 創士外野手(3年)以来となるが、櫻井にはそれだけの実力とスケールがある。

指揮官の指導で長打力が開花

那須塩原市で育った櫻井は「寮がいいと思っていた」と県外で進学先を探していた。そんな中、昌平に決めたのは現在、同校の監督を務める岩崎 優一氏の指導を見て、「自分に合っている」と憧れを抱いたからだ。

 岩崎氏は昌平OBで獨協大を経て三菱重工名古屋で5年間プレー。母校のコーチ、部長を経て23年秋に監督へと就任した。今年33歳を迎える若き指揮官は礼儀を重んじた指導方針で生徒の成長を促している。櫻井もそれに触発された一人だ。

「岩崎先生には人間性も教えてもらっています。試合で凡退した姿や、走って帰ってくる姿など心から成長出来ていると思います」

 社会人の名門でプレーした経験もあり、「社会に出るときに苦労しないようにして欲しい」と選手への指導にあたっている。その一環として取り入れているのが毎月行っているパワーポイントを使ったミーティングだ。情報の教員として自作の資料を作成し、選手達に共有する。内容は多岐にわたり、時には武士の作法を教えることもあるという。

「練習で取り入れているのが丹田呼吸です。常にお腹の下に力を入れる呼吸法でコアを意識することに繋がり、どんなに緊張した場面でも、同じような結果が出せるようになりました」(櫻井)

 そんな櫻井が初めて注目を浴びたのは高校デビュー戦だった。1年時春から出場を果たすと、3安打を放ち堂々たる活躍を見せた。秋の埼玉王者に輝いたチームに新しい風を吹かせると、その後も自慢のバットで存在感を発揮。1年時夏までに7本塁打と持ち前の長打力を発揮した。

 下級生の頃から高校生離れしたパワーを見せつけた櫻井。自身も「高校で一番成長したのは長打力」と成長を実感する裏には岩崎監督の指導があった。

「高校1年生まではレフトにしかホームランを打っていませんでしたが、高校2年生の春に調子が落ちている中で、岩崎先生に指導してもらったら、直後の練習試合でホームランが出ました。右中間の本塁打が出たのが初めてでした」

 高校入学後初の逆方向への一発を引き出した指導をこう振り返る。

「自分は打ちたいという気持が強くて、前にガンガン打っちゃうんです。そこを『そんなに振らなくても飛ぶから』と言ってくれて、手先を使って瞬発力やキレを出すことを意識して打つようにしました」

 みるみる成長を重ね、昨春は埼玉大会の準Vに貢献。関東地区大会の初戦ではレフトスタンドに大きな一発を放ち、世代屈指の強打者としてその名を知らしめた。

夏、秋で味わった悔しさバネにプロへ

インタビューに応える櫻井選手

昨夏も埼玉大会決勝まで進出したが、後に巨人からドラフト1位指名を受ける石塚 裕惺内野手を擁する花咲徳栄に惜敗。櫻井は「長くなるんですけど…」と悔しさ混じりの表情で話し始めた。

「2点ビハインドの3回、2死満塁の場面で打席が回ってきました。チームを背負って打つぞと思っていたんですけど、レフトに強いファウルを打ったんです。その後にセンターフライで終わってしまいました。そこが悔しくて…」

 あと一歩のところで甲子園出場を逃した夏から一転、主将として迎えた秋は3回戦で姿を消した。試合後に大粒の涙を流すほど感情をあらわにした。

「今まで4番を打ってきましたが、1人で野球をやっていたと思います。自分が打てばいいでしょ見たいな」

 試合では5打席すべて得点圏で回ってきたが、結果としては5回裏の二塁打のみ。冷静さを欠いていた。

「みんなが自分にチャンスに繋げてくれて『キャプテンとしてチームを背負って打て』と岩崎先生から言われていました。エースナンバーも託してもらい、監督さんからの期待も掛けられているなかで応えることができなかったです」

 岩崎監督も「これからこういう場面が多くなると思う。能力的には素晴らしい打者だが技術的にはまだまだ。花咲徳栄の石塚君が背負って勝負強い打者になったように彼も乗り越えてほしい」と試合後に話していたが、期待の長距離砲は春に向け、チームを背負って立つ覚悟はできている。

「もっとチームを見てやっていかなければいけないという自覚も持ちました。ただ強く振るだけではなく、返す場面で返すなど、技術の部分でも成長したと思います」

 1年時から主軸を担ってきた櫻井もいよいよ最終学年を迎える。高校卒業後の進路を訪ねると自信満々にこう答えた。

「中学生の頃から高卒プロを目指していました。自信は100%です」

 笑みをこぼしながらも「長打力と三振の少なさでアピールしたい」と自信を覗かせている。そのためにもまずは春夏通じて同校初となる聖地に意欲を見せる。

「今年のチームは組織力を重視してやっています。新3年生が腹をくくってやっていかないとチームとして強くなる必要があります」

 25日には、本庄第一との初戦を迎える。2回戦では花咲徳栄と埼玉栄の勝者と対戦が決まっており、名門校が集まった激戦区を戦うこととなる。埼玉のみならず、全国区の強打者に成長できるのか。この春の成長が楽しみだ。