箱根駅伝予選会に向けて合宿をこなし、チーム強化を続けている立教大学駅伝部。 昨年から推薦枠で全国の強豪校から優秀な選手を獲得、今年も有望な1年生が入学し、選手層は確実に厚くなりつつある。なかでもチームのエースと称され、上野裕一郎監督が絶大…

 箱根駅伝予選会に向けて合宿をこなし、チーム強化を続けている立教大学駅伝部。

 昨年から推薦枠で全国の強豪校から優秀な選手を獲得、今年も有望な1年生が入学し、選手層は確実に厚くなりつつある。なかでもチームのエースと称され、上野裕一郎監督が絶大な信頼を置くのが、中山凜斗(なかやま・りんと)と服部凱杏(はっとり・かいしん)の2年生コンビだ。中山は昨年、学生連合で箱根4区を走り、服部は春のトラックシーズン、1500mから1万mまでPB(自己ベスト)を連発した。ふたりにトラックシーズン、チームの現状、そして箱根予選会について話を聞いた。


立教大学駅伝部2年の服部凱杏(左)と中山凜斗(右)

 ※撮影時のみマスクをはずしています

──トラックシーズンの手応えは、どう感じていますか?

中山 春のシーズン前、1月末に腸脛靭帯を痛めてしまったんです。2月の後半にジョグができるようになり、ポイント練習に参加することができたのは3月です。それから急ピッチで戻しすぎて、その疲労が春のシーズンに出てしまったので、トラックシーズンは全然調子が上がらなかったですね。

──タイムを含めて物足りない感じですか?

中山 そうですね。監督とは、最低限の走りをしようと話をしていて、1万mは30分ぐらいで2本走れて、合宿につながるようなレースができましたが、それでも最低限でした。

服部 自分は昨年の予選会前にケガをして、それが2020年内に治らなくて、1月に帰省した時に走り始めたらまったく痛みがなくなって......。そこから練習が積めるようになったんですが、「絶対にここから崩れないようにしよう」と心がけていたら自然と調子が上がっていったんです。しかもレースでも記録会でも勝つことに集中していたら楽しくなって、それが自分のモチベーションになっていました。

中山 どんどん調子が上がって、日本選手権まで決めたもんね。

服部 高校時代やっていたことも取り入れたのが大きかった。ドリルとか、ハードルを使った動き作りとか、補強とかやったら動きがすごくよくなった。うちの高校(佐久長聖)はそのあたりをかなりしっかりやるんで。

──それが効いてPB連発でした。

服部 PBは、ここまで連発できるとは思っていなかったですけど、自分は毎年PB更新が続いていたので、それほど驚くようなことではなかったです。

中山 僕は、全然タイムが出なかったので、いいなぁって感じで見ていた。

服部 1500mは、調子がよかった。3分43秒を出した時もいいなって思ったけど、今じゃ高校生とかもバンバン記録を出しているし、全然たいしたことなかった(苦笑)。

 立教大は1次合宿を蔵王、2次合宿を菅平で行なった。3次合宿は北海道で行なわれ、箱根予選会のメンバーの絞り込みが進んでいく。
──夏合宿のテーマは何かありますか?

服部 自分は昨年、夏合宿で足を痛めてしまったんで合宿をうまく活かすことができなかったんです。今年はとにかく安全運転で夏を乗り越えて秋シーズンの記録会、予選会で結果を出すというところで今、ケガをしてしまって(苦笑)。3日ぐらいで治るかなって思ったらもう1週間過ぎて、3次合宿でポイントに戻れるように調整していますが、まだ読めない。

中山 3次では走っているでしょ。

服部 その予定だけどね。

中山 自分は、1次合宿は行かず、実業団の合宿に参加していました。ポイント練習は強い選手のうしろについて走るだけだったんですけど、1回も外さずにつけたことでけっこう自信がつきましたし、あとトレーナーさんの治療を受けるなかで自分の知識を広げることができました。チームにはキツいマラソン練習を軽くこなす選手がいて、将来的にこういう選手になりたいと思うこともあって、とにかくいい刺激を受けました。

──その経験をチームに還元していく。

中山 そうですね。今年の目標は(箱根駅伝の)本大会出場と最低でも予選会15位内を掲げているんですが、まだ個々のレベルの差が大きい。自分が引っ張って、そのレベルを上げていきたいし、自分のレベルも上げていきたい。春のシーズンはタイムが出なかったんで、秋は5000mだと13分台、1万mで28分30秒を目指していきたいですね。予選会は62分前半ぐらいで走らないと箱根に届かないと思うので、合宿でしっかりと足を作って、個人でもチームでもレベルアップを実現していきたいです。

──ところで、ふたりはお互いのことをどう思っていますか?

中山 凱杏は、日本選手権で決勝に残る力があるのに、周囲に自慢したりすることがなく、謙虚だし、自分でなんでもコツコツとやっていく。自分の考えを曲げないところもすごいなって思います。

服部 コツコツというのは一緒かな。昨年、故障でぜんぜんやる気がなくて、練習ができなかった時も凜斗は普通に26キロを走っていて、よく走るなって思ったし、自分はけっこう適当に考えてやるんですけど、どんなメニューもポイントを押さえて練習している。あと、フォームがキレイだよね。

中山 昨年までは頭が振れていたけど、そこはブレないように意識してやってきた。最近は意識していなくて、気づいたらよくなっていた。

服部 昨年は箱根駅伝も走っているし、頑張っているなーって見てたよ。

中山 ハハハ、頑張ってたよ。箱根を走ったことで箱根をもう一度走りたいという気持ちが大きくなって、あとはもうチームでしか出ることができないので、なんとかみんなで出たいよね。

服部 箱根はすごい遠い目標だと思っていたけど、凜斗が走ってグっと身近に感じた。

 中山と服部は、箱根駅伝出場を実現するために(「立教箱根駅伝2024」事業)昨年、全国の陸上強豪校から集められた最初の世代だ。そのため一般入試で入学してきた上級生とは明らかにカラーが異なっており、立教大の本気度が伝わってきた。

──2年生世代って、立教大の中では、どういう世代になるんですか?

服部 自分たちの学年は、「立教箱根駅伝2024」事業の1期生で、力で選ばれて入学してきているので上級生を含めてチームを引っ張るのはもちろん、学生間でもトップクラスを目指すことが求められているし、それにふさわしい選手が集まってきたかなと思います。

中山 たしかにね。ただ、選び抜かれた選手のなかでも箱根への意欲がだいぶ違っている。「立教箱根駅伝2024」事業で入ってきているので、箱根に出たいという気持ちを全員でもっと深めていかないと。昨年の予選会で箱根への出場は甘くないことをチーム全体でわかったと思うので、それを1年生に伝えながら戦っていく必要があると思う。

服部 2年生のなかでも推薦で入った選手とそうでない選手との間に力の差はある。でも、全体的に仲がよいので、自分は流されやすいので、なれ合いにならないように気をつけています。

──練習で同学年のなかだったり、各学年との間でバチバチやり合うことはありますか?

服部 そういうのはないよね。

中山 バチバチはないかなぁ。

服部 高校の時は先生が厳しすぎて、先生対生徒みたいになっていたけど、バチバチになってたわけじゃなく、与えられたメニューをみんなで協力してこなすみたいな感じだったんです。今は、先生対学生みたいな感じはないです(笑)。

──今年の1年生で期待している選手はいますか?

中山 自分は林(虎大朗)に期待しています。同じ九州で高校(大牟田)の時から知っているし、春先の練習の消化率のインパクトが大きかったんで。

服部 自分は富田翔ですね。積極的な走りがいいかなって思います。ただ1年生は自分たちの代以上に箱根に対する意識の差が大きいかなって思います。

中山 それはあるかな。

──この夏合宿で、その差を埋めるために1年生に自覚を促すように強く言うことはないんですか?

服部 夏合宿で一体感を作り上げていくのは大事かなと思うけど、何をもって上から目線で「やろう」と言えるのかなって思っていて......。上の学年の人は勉強ができて、人間性も優れているので、それをもって下級生にいろいろ言えると思うけど、自分はそんなに優れていない。だから、自分が主張するのに気が引けるというか、どうなのかなっていうのがあるんです。

──推薦で入ってきたのも大変なことです。それぞれ個人の目標があるにせよ、「立教箱根駅伝2024」事業で集まってきたからには目標達成に向けて同じ方向を向いてやっていくことが大事ですし、向けていない選手には言葉で伝えることも大事かなと思いますが......。

服部 自分は推薦で入ってきたけど、さぼりグセがあるし、弱みを突かれたらいくらでも出てくるので、そんなに強い立場をとれない。強い主張をすることで、チーム内に意識の格差が出きてバラバラになるもの怖い。なんかさじ加減が難しいなって思いますね。

中山 自分は言う時は言います。僕は陸上が優先ですが、今年の4年生は就職活動が大変そうでしたし、3年生も来年は大変だと思います。自分たちや下の学年にも勉強と陸上の比率が違う人もいる。それぞれの立場を理解したいと思っています。

──学年内、学年間の格差がある現状では、初めて推薦枠で入ってきたふたりが4年生にならないと全体の意思統一が難しい?

服部 難しいというか......自分が言う立場になるには言えるだけの立場を作る。(まわりから)何も言われないだけの取り組みをしたいと思う。かっこよくいえば背中で示すみたいな。

中山 立教のよさは、いろんな人がいるということ。やりたい種目も違うし、取り組み方も違うけど、駅伝で力を発揮することや秋の箱根予選会で頑張るということについて、みんな考えは同じだと思います。

 夏合宿は、コロナ感染症対策により個人部屋になっているのでストレスはフリーだ。日々の練習はハードだが、部屋でリラックスして、心身ともに休める環境になっている。

──合宿中、オフタイムは、何をしていますか?

服部 寝ているか、ゲームしているか、あとはマンガを読んでいます(笑)。

中山 自分も寝ているか、動画でアニメを見ています。五輪は男子マラソン、40キロまで見ていて、疲れて寝落ちしました。ちょうど朝練後だったんで、気づいたらレースが終わっていた(苦笑)。

──あと、2か月弱でいよいよ箱根予選会、昨年、立教大は28位で10位の専大とは20分の差がついていました。今年はどのくらいのタイムを狙っていますか?

中山 自分は、62分前半です。

服部 タイムは特に考えていないです。今年、予選会を走れれば初めて厚底シューズを履くんで、その分の補正をしないといけないですけど、とりあえず勝負して日本人トップ争いに絡んでいけたらと思います。

中山 そうだね(笑)。

服部 その前に、ケガを治さないと。

中山 2年連続で、予選会出れないとか、ほんとやめてほしいから。

服部 もちろん走るよ(笑)。

──箱根駅伝、本戦を走れるとしたらどの区間を希望していますか?

服部 自分は1区か10区。テレビに映りたいから(笑)。目立ちたいんです。

中山 自分は2区ですね。監督にも2区と言われているので。自分の中では凱杏が1区なので、ふたりで襷をつなぎたいですね(笑)。

 チームは、20名の絞られたチームでさらなる合宿へと突入していく。さらにチームとして調子を上げていくだろうが、予選会でおそらく、フリーで走ることができるのは彼らふたりになるだろう。箱根駅伝を経験して、より箱根への想いを強くした中山と日本人トップ争いに臨む服部が先頭グループで勝負すればチームの士気は大いに高まり、目標の尻尾も見えてくるはずだ。