立教大学の田中誠也投手(22)は、今春卒業した東京六大学野球の4年生の中で、最多となるリーグ通算17勝を挙げた左腕エースだった。プロには進まず、社会人野球の名門・大阪ガスに入社し、社業と野球に多忙な日々を送る。「野球には慣れましたが、新型コ…

立教大学の田中誠也投手(22)は、今春卒業した東京六大学野球の4年生の中で、最多となるリーグ通算17勝を挙げた左腕エースだった。プロには進まず、社会人野球の名門・大阪ガスに入社し、社業と野球に多忙な日々を送る。「野球には慣れましたが、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が長く仕事のほうはまだちょっと……」と苦笑する。助け合いの精神を育めたことが、野球部での一番の収穫だったと話す田中投手。東京六大学野球に注いだ4年間の情熱などを語ってもらった。

大阪ガス提供

一番有名なリーグで挑戦

-大阪桐蔭高校では夏の甲子園で優勝に貢献し、翌春の選抜大会はエースとしてベスト4。生粋の浪速っ子が関西学生リーグではなく、東京六大学野球を選んだのはなぜですか?
 一番有名なリーグでチャレンジしたい気持ちがあり、(大阪桐蔭の)西谷浩一監督から進路を聞かれた時、東京六大学野球でやりたいと伝えました。声を掛けてくれたのは立教だけでしたが、各学年に高校の先輩がいらっしゃって、すごくやりやすい環境でやらせてもらいました。プロ野球には進まなかったけど、有名な選手がたくさんいる、レベルの高いリーグ、というのが高校時代の印象です。そのレベルの高さに惹かれて六大学でプレーすることを選びましたが、東京六大学野球の魅力という部分は正直よくわかっていませんでした。実際にプレーしてみると伝統があり、幅広い年齢層のファンがいることを知りました。年配の方から声を掛けてもらうことが多くて、とてもうれしかったですね。振り返ると、東京六大学野球でプレーしたことは正解だったと思っています。

2年で台頭、3年で開花

-2年生の春は3勝して35シーズンぶりの優勝に貢献したほか、全日本大学選手権では2試合に登板し59年ぶりの頂点に立ちました。立教大学野球部の歴史に名を刻みましたね。
 初勝利を挙げたのも、リーグ優勝したのも2年生の春でした。立教が長らく勝てない中、自分が主力として大学選手権を制覇できたことは誇りに思います。59年ぶりと(メディアに)取り上げられたこともうれしかった。決勝戦にはOBの長嶋茂雄さんもお越しになりましたが、神宮球場全体が沸き上がりました。やはり偉大な人なんだと感じ、そんな偉大な先輩と同じユニホームを着て、同じグラウンドでプレーできているのは、すごくうれしいと思いました。

-最も充実していたのは最多勝やベストナインに選出された3年生の春ですか?この活躍で夏の日米大学選手権日本代表に選ばれました。
 そうですね。(最優秀)防御率のタイトルも取れましたし、大学日本代表の選考会もあり、そういうものにもつながって、今後の選択肢が広がった一歩だったのかなとは思います。

-東京六大学野球での最大のライバルは、ドラフト1位でプロ野球広島に入団した明治大学の森下暢仁投手でしたか?
 ライバルと言ったらおこがましいですけど、自分にとってはすごい投手。東京六大学野球で投げ合える投手の中では一番燃えるというか、一番負けたくなかった相手ですね。悔しい試合はいっぱいありますが、4年生の秋、明治大学との1回戦でドラフトも終わっていた森下投手も先発した試合で、初回に満塁ホームランなどを打たれて5失点でKOされました。味方が点を取ってくれて引き分けで終わりましたが、一番悔しかった試合ですね。

立教は自ら考える野球

-まだ卒業して間もないですが、東京六大学野球の経験が社会人になって生きていると感じることはありますか?
 プロ野球や社会人野球に進んだ有名な選手と戦い、緊張感のある中でプレーできたことはすごくいい経験になっています。それから、どうやればうまくなれるか、どうすれば抑えられるかを必死で考えた結果、自分なりにいい結果を残せたと思う一方で、もっとできたんじゃないかと今になって感じているところも正直あります。社会人野球に進んだ今は苦労していますが、9月1日から始まる都市対抗大会予選でそれを生かせたらいいですね。

-高校の後輩などから大学野球の進路について相談されたら、母校を推薦しますか?
 自分で考えてプレーするのが好きだったので自分で考えながらやったほうがうまくいく人には立教大学はお勧めです。高校野球とは違う「大人」の部分もあります。環境面も整っていましたし、自分は不満なく、楽しく野球ができていました。

ネット活用し盛り上げ

-東京六大学が日本の学生野球をリードしてきましたが、さらに発展し、偉大なリーグになるためOBとしての助言をお願いします。
 難しいことではありますが、野球を知らない人が大学には多いので、その中で各大学が独自にどれだけ東京六大学野球をアピールできるか、ということが大事になってくると思います。自分は、東京六大学野球って伝統のあるすごいリーグだと思っているので、それを知らない人たちに知ってもらうことが必要になってくるかと思います。

-田中さんにとって東京六大学野球とはどんな存在でしたか?
 『華の六大学、戦国の東都』と言われているように、やっぱり華があり、伝統もあるすごいリーグだと思います。土・日曜日に必ず試合があって、プロ野球との併用日でも優先的に神宮球場で試合ができたのはありがたかったし、土・日曜日は平日よりもたくさんのお客さんに観戦してもらえました。東京六大学野球の魅力を知らない人も、まだたくさんいるので、認知してもらいたいですね。そうすればもっとファンが増えると思います。

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