「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第7回の講師は、2017年より日本代表として活躍し、なでしこリーグ5度優勝・3年連続ベストイレブンに選出される女子サッカー界の新…
「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第7回の講師は、2017年より日本代表として活躍し、なでしこリーグ5度優勝・3年連続ベストイレブンに選出される女子サッカー界の新世代ホープ、長谷川唯選手。全国高校サッカー部の現役女子部員や顧問の先生など約40名が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。
どんな状況でも前向きに先回りして短所をプラスに
長谷川選手の「手を振ってみてください」という呼びかけに、生徒も先生も笑顔で手を振る和やかな雰囲気から授業はスタート。「練習は再開したが時間が限られていて納得できる量ではない。焦らずやっていきたい」と現状の部活動について話す高校生に対し、「私も最初は個人の練習が多かった。みんなと一緒にサッカーしたかったです。でも、今だからこそできることもあると思う」とまずは気遣った。
現在の空気感をふまえて「ケガや自粛など、サッカーができない時のモチベーションを維持するには?」という質問に対しては、「昨年試合にケガがかぶることがあってサッカーが少しできない期間があった。ただ、治したらやりたい目標があったから、モチベーションが下がることはなかった」と振り返り、「(サッカーができなくて)もどかしい、辛い気持ちがあると思う。その中でも、再開したことを考えて成長を楽しみにすること。できることが増えることは楽しい。それはサッカーができるかできないかより大切なことだと思う」と、どんな状況でも前向きでいる姿勢をアドバイスした。
「スピードに自信がなく相手に負けてしまう。どうすればいいか?」という生徒の悩みについては、「中学1年生から体が小さくスピードで勝てなかった」と自身を振り返り、「だからこそ予測したり、先に判断をしたポジショニング、相手を見て逆を取ると考えたりすることで、スピードがなくても太刀打ちできる」と、視点を変える考え方を提示。くわえて「スピードがないことをそもそも克服することも必要。短所はしょうがないと割り切って、先回りして短所をプラスに変えてみては」と促した。
考えたことはきっと将来に生きてくる
後半は挙手を織り交ぜながらの積極性あふれる展開に。
「憧れの選手やプレースタイルは?」という質問には、アンドレス・イニエスタ選手(ヴィッセル神戸、元スペイン代表)とロナウジーニョ選手(元ブラジル代表)を挙げ、その理由を「純粋にサッカーを楽しんでいるのがわかるところ」とした。特にイニエスタ選手については、「本当によく周りを見ている。ドリブルで突破してシュートまで打てる選手」と分析。そのうえで、「ドリブルにもパスにも特化した選手になりたいので、すべての選手のいいところを集めた選手になりたい」と高い目標を語った。
高校2年生からの「先輩の引退が急に決まって引っ張っていく立場になった。どうしたらいいか?」という悩みに関しては、「声を出すのもいいけど、やり方は人それぞれだと思う」と、人の数だけ方法があることを示唆。「私はプレーで引っ張るタイプ。自分でゴールを決める姿を見せたり、練習に真剣に取り組む姿勢を見せたりすれば、自然とみんながついてくると思う」と、あくまでも向き合い方であることを丁寧に伝え、生徒も「私に合う引っ張り方で頑張っていきたい」と決意をあらたにしていた。
最後に「明日へのエール」として、「みなさんがむしゃらに楽しんでいるなと感じたんですけど、サッカーを考えてやることでもっと楽しくなる」と提案した長谷川選手。「考えたことが結果につながると本当に楽しいのでみなさんも味わってほしい。サッカーを続けても続けなくても、考えたことはきっと将来に生きるので、今を全力で楽しんでほしい」とにこやかに話した。
全員の記念撮影として「ダブルピースでかわいく締めましょう!」と笑顔で話した長谷川選手。それに釣られるようにして、全員が満面の笑みで番組は終了した。
授業後の「アフターセッション」でみんなの本音を語り合う
長谷川選手とのオンラインエール授業後に、高校生と先生たちだけの「アフターセッション」を開催。授業でのエールを受けて、今のリアルな想いを自由に語り合った。
まずは、オンラインエール授業では聞き役だった、先生たちの話に注目が集まった。
「まずは、この場に感謝しています」と話した千葉県の先生は「他のチームの選手たちが話すこともすべて吸収できるいい機会だった」としながら、「現役のトップ選手から言ってもらえる言葉は、僕たち指導者が伝えることよりも、はるかに浸透していっているなという感覚が、画面を通してあった」と、現場での臨場感を語った。
また、多くの先生から「楽しむだけでなく、考えてプレーすることの重要性」への気づきがあったことへの意見も聞かれた。決して高くはない身長を逆手にとって、それを絶妙なポジショニングや、小回りを利かせ裏を突くようなボール運びにしていく長谷川選手の、短所を武器にする前向きな姿勢と思考力に感化されたようだった。
生徒の授業の印象では、「がむしゃらにやっている方が勝っている。考えてプレーしたい」「ミスするとどうしてもネガティブに思い詰めてしまうので、サッカーが好きで楽しむという気持ちを忘れないでいたい」など、長谷川選手の視野の広さや、メンタル面での世界レベルの強さを目の当たりにし、気持ちを入れ替え、清々しい表情で答えた姿が印象的だった。
今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。
これからも、全国の同世代の仲間と想いを共有しながら「今とこれから」を少しでも前向きにしていけるようエールを送り続ける。