◇国内男子◇東建ホームメイトカップ◇東建多度カントリークラブ・名古屋(三重)◇7069yd(パー71)石川航がツアー通算23試合目の初日に「65」をマーク、初めて首位に立った。後から同スコアで上がった兄の遼が「ナイスプレー」と手を差し出す…

◇国内男子◇東建ホームメイトカップ◇東建多度カントリークラブ・名古屋(三重)◇7069yd(パー71)
石川航がツアー通算23試合目の初日に「65」をマーク、初めて首位に立った。後から同スコアで上がった兄の遼が「ナイスプレー」と手を差し出すと、両手で握手に応えて軽く頭を下げた。兄弟としてはちょっとよそよそしく、謙虚にも見えるやりとり。プロの兄弟の距離感って、意外とそんなものなのだろうか。航に尋ねてみると「確かに時々、珍しがられます。ちょっと変わった関係かな、とも思います」と笑った。
頼れる存在、尊敬するプレーヤー…。8歳上の兄について聞かれると、どうも的確な表現が見つからない。7歳だった2007年5月に兄は「マンシングウェアオープン」で15歳245日の国内ツアー史上最年少優勝を達成。以降はツアーを転戦するようになったから、他の兄弟に比べると幼い頃一緒に過ごした時間は少なかった。
いまでも、ゴルフでアドバイスをもらうことは少ないらしい。今週も練習ラウンドを一緒に回ったが、何を教わったか聞かれても具体的な言葉は出てこない。数年前に一度、スイングを参考にしようとしたら「マネするだけじゃ意味ないぞ」と言われたことがあったが、遼は「航なりの考えでやっていて、徐々にやっているので。言うことはなにもない」と自立を促すスタンスを守っている。
航がツアー自己最高20位となった今週は、そんな2人の距離感が実を結んだ結果かもしれない。3月末に兄と田中剛コーチのタイ合宿に参加して学んだものは、ショートゲームの重要性。「毎日パッティングとアプローチを1時間半ずつやっていた。(今までは)練習の仕方が未熟だった」と見直したグリーン周りで粘りを発揮して、通算7アンダー。短縮競技になった3日間、一大会で初めて1度もオーバーパーのラウンドがなくプレーできた。
ツアー出場権を持たない今年は、今週を含め、推薦出場で得たチャンスで経験を積むしかない。「もっと精度は高めないといけないですけど、硬いグリーンに対応できた部分もあって成長は感じられました。大きい舞台に出場する権利を頂けて、課題と向き合うためにも貴重な経験だった」
兄と同じフィールドでプレーしたのは17試合目。初日に2人が首位で並んだスコアを見ても「不思議な感じ」とあまり実感がわかなかった。「4日間やったら、絶対負ける」と話していたが、最終順位は並んで20位。同着は、航がツアー初予選通過を果たした21年「関西オープン」の56位に続いて2度目。力量、実績、経験…すべての面で勝てないことは分かっているが、オフの取り組みを出し切れた3日間は自信になった。誰よりも近いからこそ、その遠さが分かる絶対的なゴルファー。両手で応えた握手には、他人にはうかがいしれない強いリスペクトが込められている気がした。(山梨県河口湖町/谷口愛純)