◇国内男子◇ゴルフ日本シリーズJTカップ 事前(26日)◇東京よみうりCC(東京)◇7002yd(パー70)本業プロゴルファー、ときどきカメラマン――そんな“フォトゴルファー”として知られる女子プロの阿部未悠。昨年のJTカップでも写真を撮…

河本姉弟の“ニコパチ”を撮影

◇国内男子◇ゴルフ日本シリーズJTカップ 事前(26日)◇東京よみうりCC(東京)◇7002yd(パー70)

本業プロゴルファー、ときどきカメラマン――そんな“フォトゴルファー”として知られる女子プロの阿部未悠。昨年のJTカップでも写真を撮って話題になったが、ことしも東京よみうりに帰ってきた。「試合のスタートの呼び出しでもネイチャー系カメラマンって肩書で呼ばれるようになって(笑)」と“そっちの顔”も認知度が高まってきた様子。

「さあ、ことしは何撮るんですか?何でもやりますよ」と、カメラバッグを背負って意気込む阿部に、「昨年と同じことをやっても成長はない!」と激励の思いを込めて「男子プロの連続写真を撮ってきて」と指令をくだした。「えっ?私の持っているカメラの装備でできるのかしら。鳥の連続写真しか撮ったことないんだよなぁ…」と戸惑いの表情を見せたが…。

昨年のJTカップ フォトゴルファー阿部未悠の撮影記

カメラの設定をチェックする阿部

阿部はすぐプレスルームで知り合いのカメラマンに相談を持ちかけた。スイングの連続写真は、実はプロのカメラマンでも慣れていないと難しい。スイングを正しく切り撮るなら、体の真正面か真後方から撮らねばならないが、プロがどこをターゲットに定めているか分からないとその“正面&後方”が分かりづらい。その点、プロゴルファーの阿部にはアドバンテージはあると思うが…。カメラの撮る高さも問題だ。グリップの位置から撮るのが基本で、あまり高低差がついたところからだとスイングが歪み、クラブ軌道も分かりづらくなる。

また、「アタリ」の問題もあって、構図が人物に寄りすぎるとクラブが見切れてしまう。その上でカメラのシャッタースピード、絞り、ピント、そしてシャッターを切るタイミング…とにかく考えることが多いのだ。

それでもプロカメラマンのレクチャーを受け、自分のカメラの設定をいじってもらうと、阿部の表情は引き締まった。カメラボディに短いズームレンズを装着して、コースに飛び出していった。

男子ツアーきっての飛ばし屋のスイングを撮影

1番ティで連続写真撮影する

最初に密着したのは、男子プロの中でスイングスピードが最も速いであろう河本力。飛ばし屋のスイングが撮りたかったようだ。

今週は姉の女子プロ・河本結がキャディとして練習ラウンドに帯同していた。普段一緒に女子ツアーで戦う結に「あべみ、何してんのー?」と声をかけられ、少しホッとした様子。1番ホールのティイングエリアで早速、力のドライバーショットを撮影する準備を始めた。

「フェードヒッターだから手前に立つかな」と言いながら、力の立つ位置を予測して陣取る。実際に力がスイングを終え、画像を確認すると「うわっ、アドレスが抜けちゃった!」。連続写真の一発目は上手くいかなかったようだ。「アタリも引きすぎているから、もうちょっと寄ったほうが良かったな。背が高いからどのぐらいの画角で撮ったらいいのか…、難しいなぁ」とカメラのモニターを見ながらつぶやく。その後も河本姉弟についていき、4番ホールでようやく納得できる連続写真を撮ることができた。

4番ホール後方から。アドレスは日差しがなかったが…

阿部は撮ったスイング写真を力に見せながら質問を始めた。「私、ビトウィーンの距離が苦手なんですよね。河本プロはこれだけ飛ぶから間が空くと思うんですけど、どうやって調整しているんですか?」

力は「確かにアイアンでも番手間の距離が15~20ydぐらいなので、いつも番手に合った完璧な距離が残ることはないですね。そこは振り幅とかスピードで調整したり、当て感も変えています。試合中は基本的にMAXで打つことはないんで、全ショットコントロールです。それをちゃんと練習場で試して数字を把握しておくのが大事です」と回答。

飛ばし屋の意外な答えに、阿部も「へぇ~。なるほど」と撮るのを忘れて話に没頭。技術力の高い男子プロの考えを、参考にしているようだった。

ねじりの深いトップを撮影 迫力のあるダウンスイング ドライバーでもコントロールショットを多用する

撮影を忘れて石川遼に質問攻め

続けて阿部は石川遼清水大成をターゲットにした。石川のスイングが「男子プロの中でいちばん好きなんですよね。先週もJGTOのインスタでいろんなプロのスイング動画が流れているのを見たんですが、特に石川プロのスイングは軸が全くブレてなくて、どうやって打っているんだろうってすごく気になっていました」と“推し活撮影”を心待ちにしていたようだ。

石川遼のスイングを撮影

石川はティイングエリアでカメラを構える阿部を見つけると、撮影のためにドライバーを敢えて2球打つなど新人カメラマンへの配慮を見せていた。そんな憧れのプロが被写体とあって、阿部は「緊張してなんかついつい引き(人物のアタリが小さくなる)の写真になっちゃう」と攻めきれない。

それでもホールを重ねていくと、「石川プロはドローヒッターだから、たぶん左側に立ってあの木を狙って回してくるんじゃないかな」と先回りしてターゲットと弾道を予測。「今のいいの撮れた!」と手ごたえのある連続写真撮影に成功した。

推しの石川のドライバー連続写真(アドレス)

阿部は石川のスイングをカメラのモニターでチェック。「トップの位置とか本当に変わりましたよね。今はどういう意識で振っているんだろう。特に切り返しの辺りとか気になるなぁ」。さらに2人の練習ラウンドをつぶさに観察し、「男子ってほんとグリーン周りに時間をかけますよね。女子はここまで時間をかける人は少ないなぁ。私ももうちょっとアプローチやろうっと」と本業の肥やしにしていた。

清水のコーチである内藤雄士プロと同じ位置から撮影

ホールアウト後、阿部は石川に連続写真の画像を見せながらいくつか質問を重ねた。「私いつも体重移動で悩むんです。右にいって、左に乗り遅れるのがすごく嫌だなと考えたり、でも最初から左にいていいものなのかなとか考えたり…。でも石川プロはすごく軸がブレないから体重移動ってどうやって意識しているんだろうなって」

石川は「体重移動はわずかにしているとは思いますけど、横の移動というよりは、円で考えていますよ。トップで右のかかと、ダウンでちょっとだけ左に行って、左足つま先に乗った時にインパクト、フィニッシュで左のかかとっていう具合に。体重移動も3Dですよね」と身振り手振りで解説した。

スイングの質問攻めをする

阿部は「なるほどだからあんなに横ブレが無いのか。体重移動しているように見えないのは円運動しているからなのか」と深くうなずく。

さらに「それだとドローとフェードも回転の中で球筋を変えているんですか?」と質問。石川は「そうそう。円運動の中で、こっち側(体の右サイド)で当たればドロー。フェードだとインから入ってインに戻るときに当たる。体も右肩を下げたりとかはあまり考えてなくて、けっこう水平を意識していますよ」。

プロゴルファー同士の会話はだいぶディープな方向にヒートアップしていく。…ちょっと待って阿部カメラマン、今日のミッションを忘れてないかい?完全に女子プロに戻っちゃって。この後の撮影まだまだあるんですけど…。

2人の会話が終わりそうにないので、前編の今回はこのあたりで。(東京都稲城市/服部謙二郎)

スイング撮影後にレフ版を当てて顔写真も撮影 撮影した写真がこちら。いい表情が撮れました