2022年の箱根駅伝は青山学院大の圧勝で終わった。スポルティーバでは大会直前、識者3人にトップ10を予想してもらったが、あらためて実際の順位と比べながらレースを総括。そのコメントから、各チームのうれしい・悲しい予想外を振り返る。明暗分かれ…

 2022年の箱根駅伝は青山学院大の圧勝で終わった。スポルティーバでは大会直前、識者3人にトップ10を予想してもらったが、あらためて実際の順位と比べながらレースを総括。そのコメントから、各チームのうれしい・悲しい予想外を振り返る。


明暗分かれた3区など、今年の箱根駅伝も多くの

「予想外」が起きた

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【期待以上だった順天堂大。明治大は昨年の再現に】

■佐藤俊(スポーツライター)

【予想順位】    【実際の順位】

1位:駒澤大     青山学院大

2位:創価大     順天堂大

3位:青山学院大   駒澤大

4位:國學院大    東洋大

5位:順天堂大    東京国際大

6位:東京国際大   中央大

7位:明治大     創価大

8位:早稲田大    國學院大

9位:帝京大     帝京大

10位:東洋大     法政大

 予想順位で当たったのは9位帝京大だけで、あらためて箱根駅伝の順位予想の難しさを感じた。

 優勝候補に挙げていた駒澤大の誤算は、当日変更で3区に入った安原太陽(2年)、4区に配置された花尾恭輔(2年)がいつもの走りができなかったこと。また、鈴木芽吹(2年)が走るかどうかで優勝の確率が上下すると予想し、実際に出走したが本調子にはほど遠かった。大八木弘明監督は「3つの区間で2けた(順位)が出たら勝てない」と振り返ったが、信頼の厚い3人が本来の力どおり走れていれば、あそこまでラクに青学大を勝たせることにはならなかっただろう。

 青学大は、原晋監督の当日の区間変更を含めて選手の見極めと区間配置が絶妙で、ピーキングも完璧。すべての力がそのまま出た感がある。

 いい意味で期待以上の走りを見せてくれたのが順天堂大だ。1区18位の出遅れを2区の三浦龍司(2年)が止め、後続の神がかり的な走りで往路5位まで戻した。復路では6区と8区で区間賞を獲るすばらしい走りで総合2位を勝ちとり、諦めない姿勢に意地を感じた。

 予想外だったのは、シード権を失った明治大と早稲田大だ。

 明治大は自信を持って本番に臨んだだろうが、昨年の再現のように1区から出遅れ、一度もシード権内に入れず、早々に終戦となった。あれだけの戦力を保時しながら2年連続で同じことを繰り返すのは、明確な問題があるはず。

 早稲田大も個人では1万m27分台で走る選手が3人いたが、その力を箱根で活かすことができなかった。故障者が多く、練習もままならなかったが、それにしても淡々と終わった感じがあった。

【駒澤大と創価大は「もったいなかった」】

■酒井政人(スポーツライター)

【予想順位】    【実際の順位】

1位:青山学院大   青山学院大
2位:駒澤大     順天堂大
3位:創価大     駒澤大
4位:順天堂大    東洋大
5位:東洋大     東京国際大
6位:早稲田大    中央大
7位:國學院大    創価大
8位:東京国際大   國學院大
9位:明治大     帝京大
10位:中央大      法政大

 まずは青学大が想像以上に強かった。もっとも驚かされたのが3区・太田蒼生と5区・若林宏樹の「1年生コンビ」。特に太田は、区間賞を獲得した東京国際大・丹所健(3年)と5秒差の1時間1分00秒(区間歴代3位)で快走するとは全く予想していなかった。

 一方で連覇を目指した駒澤大は、3区・安原太陽(2年)が太田に3分01秒の大差をつけられての区間16位。1区・唐澤拓海(2年)と2区・田澤廉(3年)でいい流れを作っただけに、もったいなかった。創価大も3区・桑田大輔(2年)が区間17位と失速した。駒澤大にも言えることだが、3区のブレーキを「1分」短縮できていれば、もう少し違った展開になっていたはずだ。

 早稲田大は序盤から流れがよくなかった。1~3区に井川龍人(3年)、中谷雄飛(4年)、太田直希(4年)の10000m27分台トリオを並べながら、3区終了時で13位。好選手が揃っていたものの、1区(16位)で好スタートを切れなかったのが痛かった。前回好走した復路の9、10区で、2けた順位の14位と13位に沈んだのもシード権を逃した原因になるだろう。

 中央大は1区・吉居大和(2年)が区間記録を26秒も塗り替えたのは予想以上の快走だった。2区以降はほぼ想定どおりの走りになったが、終盤まで3位争いをするとは思っていなかった。中央大が活躍したというよりは、有力校にミスが多かったという印象だ。

 明治大は2年連続で5区を務めたエース鈴木聖人(4年)が、2区に起用されて区間16位。5区が区間18位に沈むなど、区間配置が裏目に出たと感じている。

【青学大を圧勝に導いた原晋監督の眼力】

■折山淑美(スポーツライター)

【予想順位】        【実際の順位】

1位:駒澤大(青山学院大)  青山学院大
2位:青山学院大(駒澤大)  順天堂大
3位:創価大         駒澤大
   順天堂大        東洋大
   東洋大         東京国際大
   早稲田大        中央大
7位:明治大         創価大
   國學院大        國學院大
   東京国際大       帝京大
   東海大         法政大

 優勝は「2強」と目されていた駒澤大か青学大を予想していたが、青学大の走りで驚いたのは、往路に1年生を起用し、その選手たちが快走したことだ。

 前回4位に終わった青学大の敗因は2区と3区の失速に加え、4区で10位まで盛り返した勢いを、区間17位となった5区で途切れさせてしまったこと。それだけは避けたかったはずだが、2020年の大会で5区区間2位だった飯田貴之(4年)ではなく若林宏樹(1年)が起用された。若林は1万mのタイムがチーム3位だったため、原晋監督の自信を持った起用だと予想できた。

 また、3区の太田蒼生(1年)は大学駅伝初出場。展開を考えれば、1区と2区に力のある選手を起用した駒澤大と東京国際大が3区を先行しても、自分のリズムで走ってつないでくれることを期待したのだろう。

 実際には駒澤大が先行し、東京国際大は日本人エース・丹所健(3年)が17秒差で追ってくる展開になった。丹所の1万mのベストは太田よりも13秒速く、出雲では初優勝の立役者になり、全日本6区では区間新記録を出している。

 そのことを考えれば"名前負け"してもおかしくなかったが、太田の走りは冷静だった。丹所のうしろにピッタリとついて彼を利用する走りをすると、18.3kmでスパートして1位で中継。区間賞は丹所に奪われたが、その強さを見せた冷静な走りはもちろん、それを見抜いた原監督の眼力がさすがだった。