かつてないほど注目を浴びるアクションスポーツシーン。その発展のために、FINEPLAYが送る多角的視点の連載「FINEPLAY INSIGHT」。アクションスポーツやストリートカルチャーのために、ビジネス視点を交えて提言を行う本連載「FIN…

かつてないほど注目を浴びるアクションスポーツシーン。その発展のために、FINEPLAYが送る多角的視点の連載「FINEPLAY INSIGHT」。

アクションスポーツやストリートカルチャーのために、ビジネス視点を交えて提言を行う本連載「FINEPLAY INSIGHT」。

今回は少し生々しいお話ですが、アスリートの収入について敷衍してみたいと思います。アクションスポーツやエクストリームスポーツの世界でおカネについて公に議論する場はあまりないのですが、カルチャー的な側面の重要性は心から承知しつつも、あえてこういったテーマを投げかけてみたいと思います。

僕はアスリート契約の専門家ではないのですが、職業上アスリートやアーティストと企業をつなぐ機会も多く、自分なりに構造を持っているつもりです。とはいえアスリートの価値を算出するオーソドックスな手法を学んだわけではないので、今回は自分で調べられる範囲の文献に目を通した上で、自分の経験も交えて基本的な考え方をご紹介できればと思っています。パートナーとなりうる企業に自分を売り込みに行こうと考えているアスリートにとって、少しでもヒントになれば幸いです。

世界のトップアスリートはどれくらい稼いでいるのか

まず今回の内容をスタートするために、今世界のトップアスリートはどれくらい稼いでいるのかを見てみましょう。いったい世界のトップアスリートはどれくらい稼いでいるのでしょうか?


FINEPLAY INSIGHT / 図1

図1は、Forbesが発表した2020年版のアスリート収入ランキング上位10名をまとめたものです。Forbesは収入の内訳を出しているので、総額とあわせてグラフにしてみました。薄いグレーが給与や賞金、濃いグレーがエンドースメント(企業やブランドとの契約)となっています。

1位はテニスのスーパースター、ロジャー・フェデラーです。総額で年間1億ドル以上、日本円にして110億円以上を稼いでいることになります。フェデラーは2018年に10年総額3億ドルでナイキからユニクロにユニフォーム契約を切り替えていますが、そういったエンドースメント契約の比重が非常に高いのが特徴で、ユニクロ以外にもシューズはナイキの契約が残っているなど、いくつかの企業とのエンドースメント契約がその収入の大半を占めています。

ちなみにユニクロは欧米でのブランド浸透が長年の課題ですから、欧米で圧倒的な知名度を誇るレジェンドであるフェデラーはブランドイメージ浸透のためにも相性が良かったのだと思います。同じくファッション界で抜群の知名度と知的かつシンプルなデザインで知られるデザイナーのクリストフ・ルメールとともに2016年から<Uniqlo U>を立ち上げたディレクションとも合致しているように思います。

なおテニスのアスリートはForbesのランキング(上位100位まで発表されています)の中で上位順にノヴァク・ジョコビッチ、ラファエル・ナダル、大坂なおみ、セリーナ・ウィリアムズ、錦織圭が登場してきますが、彼らテニス選手はもれなくエンドースメント契約の比重が大変高くなっています。

2位から5位まではサッカー、6位から8位まではバスケットボールのスーパースターたちが続き、8位にはゴルフのタイガー・ウッズが来ています。ウッズもフェデラーと同様、エンドースメント契約による収入が大半を占めているのが特徴です(彼もまたナイキのアスリートです)。

また面白いのは9位と10位のアメリカンフットボールのスーパースターたちです。彼らは反対にエンドースメント契約の比重が極端に少なく、収入のほとんどが選手としての年俸です。日本ではまだ馴染みの薄いアメリカンフットボールですが、選手としての年俸は、誰もが知るサッカーの世界的スーパースターに並ぶレベルです。

余談ですが、日本では高給アスリートのイメージが高い野球選手はこのTOP100ランキングに1人だけしかランクインしていません(クレイトン・カーショウが57位)。グローバルのアスリートマーケットで野球選手があまり上位に入ってこないのは、僕も意外でした。

もう少し詳しく見る前に、アクションスポーツのトップアスリートがどれくらい稼いでいるのかを見てみましょう。

アクションスポーツのアスリートはどれくらい稼いでいるのか

さて、メジャースポーツのアスリートに対してアクションスポーツのアスリートはどれくらいの収入があるのでしょうか。いくつか文献をあたってみたのですが、2009年の同じくForbesのデータがわかりやすかったので、2020年と比較するのは本当はよくないのですが、他に良いデータが見つからず(涙)、やむを得ず引用してみます。


FINEPLAY INSIGHT / 図2

図2がアクションスポーツアスリートの収入トップ10のランキングです。比較をわかりやすくするために、グラフの横軸は図1と同じスケールにしてあります。

図2のグラフの伸びが大変短いことからもわかるように、アクションスポーツのアスリートはトップのトニー・ホークをしてもメジャーアスリートの10分の1くらいの収入である、という感覚です。もちろん10年前のデータですので今はまた変わっているかもしれませんが、一つの手がかりとして捉えられると思います。

とはいえ、重要なのは金額というよりは内容です。メジャーアスリートのランキングでは収入の内訳も出ていたのですが、アクションスポーツのアスリートは収入内訳が出ていません。その代わりにちょっとだけForbesがコメントを入れてくれていたので、抄訳メモを付しておきました。

トップのトニー・ホークは自身の名前を冠したブランドの売上が年間2億ドルです。ロイヤルティは通常3〜5%が相場と言われていますから、おおよそ600万ドル〜1,000万ドルは稼いでいたのではないでしょうか。そうすると彼の収入(1,200万ドル)の大半はこのロイヤルティ収入だったのではないか、と推測が出来ます。図1でエンドースメント収入が大半を占めていた、フェデラーやウッズと同じ構図ですね。

コメントをお読みいただければわかるように、図2の10人全員がトニー・ホークと同様、ブランドとの契約や本、映画の権利で収入の大部分を構成していると推測することが出来ます。

メジャースポーツとアクションスポーツで、アスリートの収入構造を分解してみる

前置きが長くなりましたが、ようやくアスリートの収入構造をまとめてみてみましょう。ざっと整理すると、アスリートの収入構造は以下の3類型にまとめることができるのではないかと思います。


FINEPLAY INSIGHT / 図3