<大相撲九州場所>◇6日目◇14日◇福岡国際センター大関経験者で西十両4枚目の朝乃山(31=高砂)が“因縁の対決”を制し…

<大相撲九州場所>◇6日目◇14日◇福岡国際センター

大関経験者で西十両4枚目の朝乃山(31=高砂)が“因縁の対決”を制し、4連勝を飾った。1年8カ月ぶり2度目の顔合わせとなった、尊富士を破って4勝2敗とした。立ち合いから相手の鋭い出足を受ける形になり、すぐに土俵際まで押し込まれた。だが、ここからが冷静だった。俵に両足をかけてから突き返したり、もろ差しを許しても振りほどいたり。攻め急いだ相手の上をゆく落ち着きで対処し、最後は逆転の突き落とし。全休明けの実力者を土俵に転がした。

取組後は「相手が見えていた。土俵際でも、しっかりと(俵に)足をかけて残れていた。何番かは立ち合い変化もある相手なので、しっかりと踏み込んだけど、前には出られなかった。押し込みながら形をつくりたかったけど、押されてしまった。でも残れたのはよかった」と、冷静に振り返った。快勝ではなかったが、幅広い相手の攻めパターンを、ことごとくつぶしてつかんだ、理詰めの白星に、一定の手応えを口にした。

2人の初顔合わせは、尊富士が110年ぶり2人目の新入幕優勝を果たす、昨年春場所14日目だった。朝乃山は、負ければ110年ぶりの歴史的快挙を許す状況で意地を見せ、寄り切って千秋楽まで優勝決定を引き伸ばした。その取組で尊富士は右足を痛め、自力で歩けず車いすで運ばれ、大阪市内の病院に搬送されていた。結果的に尊富士は千秋楽に出場して勝ち、初優勝を飾ったが、朝乃山と尊富士の初顔合わせは、取組前も取組後も、大きな注目となった一番だった。

その後、朝乃山は右膝を痛めて翌夏場所を全休、名古屋場所で復帰も4日目に左膝に大けがを負って長期離脱した。今年春場所で三段目から再起して先場所、関取に復帰した。

尊富士も新入幕優勝後は翌夏場所から2場所休場し、十両下位に番付を下げた。その後、3場所連続の2桁白星を含む4場所連続の勝ち越し。自己最高位の東前頭4枚目まで番付を上げたが、再びけがに泣かされ、先場所まで3場所連続で勝ち越せなかった。今場所は7場所ぶりに十両に転落。くしくも2人の初顔合わせを機に、相撲ファンの期待が高い2人は、ともに苦難の道を歩むことになっていった。

この日の取組後、朝乃山は「1年半以上ぶりの対戦。お互いにけがしたけど、また、こうやって十両で取組をできたのはうれしい。これから何回も、対戦する相手だと思う」と、初顔合わせの印象の強さもあり、再び対戦できた喜びを隠さなかった。また、7日目は前頭時疾風戦が組まれた。昨年7月17日の名古屋場所4日目、左膝を大けがした一山本戦以来、実に486日ぶりに幕内土俵に立つことが決まった。「組まれたからには思い切ってやりたい」と、力を込めた。

この日の尊富士との2度目の顔合わせは、互いにとって刺激的だった。初顔合わせ以降、結果的には止まっていたような格好だった2人の時計の針。「因縁」に終止符を打つように、2度目の顔合わせを機に、時計の針は大きく動き出すかもしれない。