米リーグ「LOVB」で奮闘する選手たち(3)(2)を読む:松井珠己は米No.1セッターを手本に成長を実感 パリ五輪は落選も、ロス大会には「出たいです‼」>> アメリカで今年からスタートした女子プロリーグ「LOVB」(League One V…
米リーグ「LOVB」で奮闘する選手たち(3)
(2)を読む:松井珠己は米No.1セッターを手本に成長を実感 パリ五輪は落選も、ロス大会には「出たいです‼」>>
アメリカで今年からスタートした女子プロリーグ「LOVB」(League One Volleyball)でプレーするソルトレイクの小島満菜美(リベロ/30歳)と松井珠己(セッター/27歳)、オースティンの井上琴絵(リベロ/35歳)への連続インタビュー。最後の井上は、本職はリベロながら、入団先のオースティンではリリーフサーバーでの起用に始まり、後衛ではバックアタックを放つ場面もある。
本来はリベロも、オースティンではさまざまな形で起用されている井上
その姿に観客は沸き上がり、試合後には熱心なファンからサインを求められる姿が見られる。ユーティリティープレーヤーとして存在感を発揮できるのは、豊富な経験とファンダメンタル(基礎)があってこそだ。チームは現地時間4月14日のプレーオフ決勝を制して初代女王に輝いたが、アメリカのリーグでの新たな挑戦について井上に聞いた。
【リベロ以外で起用されるようになった経緯】
――リベロ以外での起用は、いつ頃から始まったんですか?
「当初はリベロとしてチームに合流したのですが、年末から年明けのタイミングで、新しくオポジットの選手が加わったんです。チームに登録する15名のうち、ルール上はリベロをひとりしか選べないみたいで。そこで、リベロでもサーブ練習をするようになりました。
アメリカでは大学まで、リベロも試合でサーブを打つんです。私自身も日本でプレーしていた時はリリーフサーバーをやった経験があったので、『その時々によって、自分にできることをやればいいかな』というスタンスでいました」
――2月のカップ戦「LOVB Classic」では、バックアタックを打つ場面もありました。そうしたプレーをするとは想像していましたか?
「まったく想像もしていませんでした(笑)。まさかサーブやスパイクを打つなんて......。ですが、監督には『やったことがあるから大丈夫』と伝えましたし、私自身も新鮮な気持ちで取り組めています。
バックアタックは、公式戦で打つのは中学生以来ですかね。まさか、誰も打つなんて思ってなかったはず。得点にはならなかったので、せっかくなら決めたかったですね(笑)」
【「まさかこのレベルでもう一度プレーできるとは」】
――昨季はタイリーグでプレーしていました。今季も海外でプレーすることに決めた理由を聞かせてください。
「『LOVB』には世界トップクラスの選手が集まっていますし、日々の練習からレベルが高いですからね。リーグでうまくいくかどうかではなく、自分がどれだけできるか挑戦してみたい、という思いがあったからです」
――高校を卒業してから10年以上のキャリアを経ても、挑戦したいという気持ちは消えないものですか?
「(2022-23シーズンまで)NECレッドロケッツでプレーしていて、起用法が限られていたのですが、私自身は『まだできるな』と感じていたんです。それで退団してから、昨季は当初イスラエルのリーグでプレーする予定でした。その選択をした一番の決め手は、そのチームが欧州のチャンピオンズリーグに出られる可能性があったこと。結局、世界情勢もあって、イスラエルでのプレーは叶わなかったのですが......。それだけに、自分にとって今季は、最高のレベルを経験できる最後のチャンスだと思っていました。
そうして今、声をかけていただいて『LOVB』でプレーできているわけですが、正直なところ、まさかこのレベルでもう一度プレーできるとは思っていませんでした。そのチャンスをいただけたことがうれしいですし、この先、長くプレーできるわけではないからこそ、『精一杯プレーしたい』という思いで過ごしています」
――リーグではどんな姿を見せたいと考えていますか?
「リベロで出場したら、もちろん自分の持ち味を発揮したいと思いますし、そうではなくてもサーブは打てますし......。その点で、おそらく私は他のプレーヤーとは違うと思うんです。とにかく、チームや監督に求められるような選手になりたいですね」
【チームでは"お辞儀パフォーマンス"が流行?】
――井上選手にしかできないプレーを、この『LOVB』で披露していますね。
「本当にそうですね(笑)。それに『LOVB』でプレーしている選手は、かつて高いレベルで活躍していた、または今まさに活躍している選手たちばかりです。チームメイトだと、チアカ・オグボグ(アメリカ代表)は世界トップクラスのミドルブロッカーですし、対戦相手にはケルシー・クック(旧姓ロビンソン/アメリカ代表)など日本のリーグでも戦っていた選手もいます。その点は面白いですし、楽しいですね」
――「LOVB」でのシーズンが終わった時、どんな選手になっていると想像しますか?
「たぶん、いろんな収穫があると思うんです。それは試合に出ても、出ていなくても。プレーする前とあとでは感情も変わってきますし、そこで感じたものを次につなげたいです」
――ちなみに、オースティンのメンバーは試合中に"お辞儀パフォーマンス"をやっていますが......。
「チームのムードメーカー的存在のキャサリン・ベル(アメリカ)が提案したんです。彼女は韓国のリーグでもプレーしたことがあって、アメリカでも有名な選手。そのベルがいつも『これをやろう!!』と言うんですよ。お辞儀パフォーマンスは、相手のミスで得点が入った時に、喜ぶのではなく"ありがとう"という思いを込めたものです。
アメリカでも、たとえば洋楽に日本語のキーワードが入っていたり、オースティンの街でも日本人がいたりと、日本を感じる機会は意外と多くて。日本人に対して、いい印象を持ってもらえていることはとてもうれしいです。ここで、結果を残したいですね」
【プロフィール】
井上琴絵(いのうえ・ことえ)
1990年2月15日生まれ、京都府出身。オースティン(アメリカ)所属。身長163cm。リベロ。京都橘高校時代に春高バレー準優勝、国体優勝に輝き、卒業後はJTマーヴェラス(当時)に入団。同じくして女子日本代表に選出され、国内外のさまざまな大会でベストリベロ賞を獲得した。昨季はタイのナコンラチャシマでプレーし、リーグMVPに選ばれるなど第一線に立ち続ける。