◇メジャー初戦◇マスターズ 最終日(13日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7555yd(パー72)72ホール目の最終18番。入れれば「マスターズ」初優勝のかかる2m弱のパーパットを外したことを、なかなか受け入れられなかった。…

◇メジャー初戦◇マスターズ 最終日(13日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7555yd(パー72)
72ホール目の最終18番。入れれば「マスターズ」初優勝のかかる2m弱のパーパットを外したことを、なかなか受け入れられなかった。通算11アンダーで並んだジャスティン・ローズ(イングランド)とのプレーオフを前に、ロリー・マキロイ(北アイルランド)は必死に気持ちを立て直した。この日2度目の18番ティイングエリアへ向かうカート上で、「“いつも通りのスイングをしろ”って自分に言い聞かせ続けた」という。
迎えた1ホール目、会心の1Wショットはフェアウェイへ。残り126ydから放たれた2打目はピン奥にキャリーし、傾斜を下ってカップ方向に戻っていく。ボールはピンそば1.2mに止まり、パトロンの大歓声が鳴り響いた。このウィニングパットを沈めた直後、「10年以上の感情があふれ出た」とパターを手放し、両手で頭を抱えて歓喜。ヒザから崩れ落ち、地面に突っ伏して嗚咽した。ジーン・サラゼン、ベン・ホーガン、ゲーリー・プレーヤー、ジャック・ニクラス、タイガー・ウッズに続く4大メジャー全制覇。ウッズが初めて制した1997年大会を見てから「この瞬間を夢見てきた」と思いを巡らせてきた大舞台で、「ゴルフ人生で最高の日」を迎えた。

後続のブライソン・デシャンボーに2打差の単独首位でスタートした最終日。ティオフ前は「信じられないほど緊張していた」という一日はダブルボギーから始まった。1Wのティショットが右フェアウェイバンカーのアゴ近くに止まり3オン3パット。いきなり首位に並ばれたが、「面白いことに、ダブルボギーがある意味、気持ちを落ち着かせてくれた」と冷静になれたという。
「2年前にジョン・ラーム(スペイン)がダブルボギーをたたきながら優勝したことが、2番ティに向かって歩いている時に思い浮かんだ」ことでも前向きになれた。そんな切り替えも、自身がこれまで失意を味わっては何度も再起してきた経験があってこそだろう。

2011年大会では、4打リードの単独首位で入った最終日に「80」をたたいて15位。セントアンドリュースで行われた22年「全英オープン」最終日は、首位タイからスコアを伸ばしきれずに3位。直近では、デシャンボーに惜敗した24年「全米オープン」での2位とビッグタイトルを逃し続けてきた。それらの過去について、「敗北はつらい。でも、優勝争いできる位置に自分を置き続けられてきたことを誇りに思って立ち直り続けてきた」と振り返る。
当時21歳だった2011年の自分に声を掛けるのであれば、「ただ進むべき道を進み続けなさい」と言葉にする。「ただ(自分を)信じ続けること。そして、この会見を見るすべての少年少女に『自分の夢を信じて。努力をすれば望むものは何でも達成できる』と言いたい」と続け、諦めないことの重要性を訴えた。

前年覇者のスコッティ・シェフラーから渡されたグリーンジャケットに袖を通し、パトロンらの前で感謝の言葉を告げると、「来年は自分で自分にグリーンジャケットをかけたい」とニヤリ。達成すればウッズ以来24年ぶりとなる次の偉業、マスターズ連覇を誓った。(ジョージア州オーガスタ/石井操)