パリパラリンピック・ボッチャ日本代表として、障害の最も重いクラス(BC3)に出場する一戸彩音さん(18)=スタイル・エッジ=。脳性まひがあり、直接ボールを投げられないため、ボールを転がすスロープ状の「ランプ」と呼ばれる道具を使う。彩音さ…
パリパラリンピック・ボッチャ日本代表として、障害の最も重いクラス(BC3)に出場する一戸彩音さん(18)=スタイル・エッジ=。脳性まひがあり、直接ボールを投げられないため、ボールを転がすスロープ状の「ランプ」と呼ばれる道具を使う。彩音さんの指示を受け、ランプの方向や角度を調整するランプオペレーターを務めるのは父親の賢司さん(56)だ。
2人は、彩音さんが東京都立小平特別支援学校中学部2年の秋から一緒に練習を始めた。最初は「試合に出たいという娘のお手伝いができれば」という軽い気持ちだった。「本人がやりたいと言ったときに、『いや、それはできないでしょ』と言って止めちゃうのは親として違うなと思った」
試合に多く出るようになると、ボッチャに使うボールやランプを個人で買う必要が出てくる。信頼できる道具を使わないと試合には勝てない。節目節目で家族会議を開いて、彩音さんの「本気度」を確かめた。
父娘とも、物事をとことん突き詰める性格。学校がない土日祝日に地元の体育館などで行う練習は、時に10時間を超えた。コロナ禍で試合がない間も、練習で実力を磨いた。最初に出た初心者の大会で優勝。その後ボッチャ甲子園、日本ボッチャ選手権などでも優勝し、トップアスリートを発掘する「J―STAR」で育成選手に選ばれた。彩音さんは特別支援学校を卒業後、今年4月からアスリート雇用の形で就職した。
ランプオペレーターは試合中、ボールが転がるエリアを見ること、アドバイスを送ることなどが禁止されている。短時間でランプの方向や角度をセットしなければならない。賢司さんは、彩音さんの目の動き、表情、手や足の動きを見逃さないよう、全神経を集中する。今では彩音さんの表情一つで、背中で展開している試合の状況が分かるようになった。