全日本学生選手権(インカレ)直前特集・第7回はアルペン部門。副将を務める広田静空(スポ4=北海道・旭川明成)とアルペン部門女子チーフを務める石塚結(スポ4=秋田・角館)。息ぴったりのお2人に競技に対する思いを伺った。 ※この取材は10月1…

 全日本学生選手権(インカレ)直前特集・第7回はアルペン部門。副将を務める広田静空(スポ4=北海道・旭川明成)とアルペン部門女子チーフを務める石塚結(スポ4=秋田・角館)。息ぴったりのお2人に競技に対する思いを伺った。

※この取材は10月11日に行われたものです。

「常にスキーにつなげられるように意識して」(石塚)


――お互いに紹介をお願いします

石塚 静空は小学生のころからいろいろな大会で名前を見る相当有名な選手で本当にセンスの塊だと思います。滑りもめっちゃうまいし、かといって早い選手独特のオーラを出すわけでもなく謙虚に、人生楽しく生きてるので一緒にいてめちゃくちゃいい刺激をもらいながら楽しく生活させてもらっています。性格は明るくてお笑いのセンスが抜群にある人で、今まで生きてきて出会った女性の中でもうナンバーワンです。何を発言してもおもしろいんですけど、本当に努力家で走ったり、練習にもずっと取り組んだりしていてすごい選手です。謙虚なんですけど、すごい選手です。

広田 彼女は茨城県出身で高校は秋田の角館に行っていて、結こそ本当に努力家でいつもストイックに運動だけじゃなくて勉強もそうだし、私生活もストイックに取り組んでいます。みんなをまとめるのが上手でアルペンもそうですけど早稲田のスキー部を引っ張ってくれている存在です。頼りになります。

――この夏の思い出はありますか

広田 ラーメン巡りです。

石塚 ラーメン巡りしかしてないですね。

――お2人が初めて出会った時のことは覚えていますか

広田 全中(全国中学校体育大会)で初めて話したよね。

石塚 話したのはそうだね、全中だ。中3の時です。

――その時の印象と今違うところはありますか

石塚 静空は北海道出身なんですけど、私は中学校の時は茨城で雪がない県だったんです。だから北海道とか長野とか新潟とか雪のある県はみんなオーラがめっちゃ出てて怖かったです。私たちの世代の北海道は本当に速かったので、めっちゃ怖かったです。話してみると話しやすいなと思ったのはありますし、全然怖くないというかおもしろい方が勝ってます。

――広田さんはご自身でオーラには気づいていましたか

広田 いや、気づいてなかったです。でも大会、全中だったので多分その時は大会モードに入っていたと思います。

――スキーを始めたきっかけを教えてください

石塚 両親が大学の時に山岳スキー部に入っていて、小さいころからファミリースキーに行っていました。私の2個上に姉がいるんですけど、姉がいろんなスキー場であった草レースに最初に出て、それを見て真似したくなってレースに出たのが最初です。そこからアルペンスキーの競技に入りました。

――アルペンスキーに対して恐怖心はありましたか

石塚 物心ついていなかったのであまり覚えてはいないんですけど、本格的にアルペンスキーのチームに入ったのが小学校4年生でした。それまでは基礎スキーをやっていて大会の時だけアルペンスキーの競技をやるという感じだったので、どちらかというと遊ぶ感覚の方が強かったです。

――広田さんはいかがですか

広田 兄がアルペンスキーをしていて、それで始めました。

――早大を選んだ理由を教えてください

石塚 スキーの動作解析を高校のころにやりたいなと思ったのがきっかけで、スキーの動作解析に特化した方にお会いした時に早稲田大学がいいんじゃないという話を聞き、早稲田にしました。藤田善也(監督、平19スポ卒=北海道・旭川大高校)さんがいらっしゃったのもすごく大きな影響で、その方の元で学びたいのもあったし早稲田大学のスキー部が強かったので、ハイレベルな環境でいい刺激をもらいながら上を目指せるのかなと思い、早稲田大学にしました。

広田 もともとはあまり続ける気はなくて、でももっとやってみないかということで大学をどこにしようかなと思った時に、高校の顧問の先生と先輩が早稲田大学に行っていて、いろいろお話を聞いていちばんいいなと思ったので早稲田にしました。スキー部の雰囲気と自分に合っている環境だと思いました。

――現在の調子はいかがですか

石塚 けがもせずに続けられていて、そんなに調子が悪いという感じはなく、冬のシーズンに向けて準備はできているのかなと思います。

――昨シーズンと比べていかがですか

石塚 今年からウエートトレーニング中にサプリを飲むようにして、体つきというか、筋肉が昨年よりもつきやすくなったので、昨年よりは引き締まった体になっていると思います。体もすごい動きやすいし、昨年よりはいい体つきでシーズンに入れるんじゃないかなと思います。

――広田さんは現在の調子はいかがですか

広田 自分はとくに4年間けがなく夏のトレーニングができています。昨年よりも体つきも多分大きくなっているいい状態だと思います。

――昨シーズンを振り返っていかがですか

石塚 昨シーズンは自分が立てた目標は1つも達成できなかったのと、いろいろあり精神的にボロボロになった部分があったので、満足できたかと言われると全くそうではなかったので、あまりいいシーズンではなかったですね。

広田 自分の立てた目標は達成できなかったんですけど、得られたものもたくさんあるので、いいシーズンを送れたのかなと思います。

――昨シーズンの収穫や課題で今シーズンに活かしたい点はありますか

石塚 中学校までは雪なし県だったからこそ、週末と長期休みしか練習しなかった分1日の練習量がすごく長かった、長くないと他の人と同じ滑走量を得られなかったのでそれが普通でした。高校に入ってずっと冬は雪山にこもる生活をしてから、私の通っていた高校の特徴というかすごいオフも取るし、練習も基本的に午前中で1日の練習量が少なくなりました。大学生になって慣れみたいな感じでそういったスケジュールを組んでいた部分もあり、昨年は精神的な部分もありちょっと自分に甘えて1日の滑走量を減らす、質を高めると自分に言い聞かせていました。そんなに質も高くないのに練習量少なくやっていたので、それを見つめ直して今年は練習量を確保することを意識しています。

広田 もっとコーチとコミュニケーションを多くしたいと考えています。ビデオをコーチの方と見たり、滑りを見たり、そういうのは少なかったので、増やしていきたいです。

――今年の夏にとくに意識していたことはありますか

石塚 使っている板を変えたのが2年前なんですけど、今のメーカーのトレーナーの方と出会ってから体の使い方の部分など、自分が間違った使い方をしていたのを正してくださりました。ウエートも重りを上げることに集中していたのをスキーを考えてウエートをするべきだと、ここの体の使い方はこうだというのを教えてくださったトレーナーの方がいらっしゃって、その方と今年で3年目の夏になります。それがスキーに活きていると感じたので、夏場はどんなトレーニングをする時にもただトレーニングするだけじゃなくてスキーに活かせるか、常にスキーにつなげられるように意識してトレーニングをしていました。

広田 自分は1、2年生の時は有酸素多めにウエートよりも走りこみを多くやっていて、体の筋肉のつき具合も今とは全然違いました。3、4年生になってから早稲田のトレーナーさんについてもらってウエートのメニューたくさんするようにして、筋肉をつけようと意識していました。

「みんなが周りを見ることができるチーム」(広田)


――アルペン部門はどのような雰囲気ですか

石塚 アルペン部門はみんな努力家です。1人ひとりちゃんと目標をもってやっているし、小さいころから家を離れて合宿に行っている自立した子が多いなという印象があります。部門練習というアルペン部門だけで練習するのは週3の1時間半から2時間しかないんですけど、それ以外の時間帯で授業など各自やるべきことをやっています。チームでやるとなるとまとまりはすごいあるし、お互い励まし合いながらやるべきことをしっかりやっています。少人数なんですけど、すごい強いチームだと思います。

広田 みんな助け合いながら何かあれば相談に乗って、みんなが周りを見ることができるチームだと思います。上下関係が少なくて後輩が先輩に聞きやすい環境だと思います。

――チームの雰囲気はいかがですか

石塚 今年は1年生のフリースタイルの選手が結構入ったんですけど、インカレにはない種目、スキー部にもあまりいないような新しい部門の選手がたくさん入って、それぞれみんなナショナルチームに入って活躍しているのはすごく刺激的です。1年生から4年生含め、とくに1、2年生はジャパンチームに入っている子が多くて、世界に遠征にちょくちょく行っていて集まる時には誰かしらいないという環境なので、そういうのは頑張っているんだなと、誰かがいないというのも、今遠征に行って頑張っているんだなとそういうところから刺激がもらえて、今スキー部は誰1人としてモチベーションが低い人がいないです。

――インカレの注目選手はどなたですか

石塚 本田千佳(スポ4=秋田・花輪)です。もともと強い選手として名の知れ渡っている選手ではあるんですけど、今年の夏のローラースキーの大会を見ても昨年勝てなかった先輩にも勝ったり、優勝したりしていてすごく調子がいいなという感じがします。地元出身の選手で、二冠、三冠してくれるんじゃないかなと思います。

広田 田中小晴(スポ2=新潟・新井)です。田中小晴は今2年生でアルペン部門なんですけど、フィジカル面も強くて何でもこなせる能力があります。スキーも一緒で難しい斜面であっても降りてくる技術があって、有望な選手です。期待してほしいです。

――ご自身の注目ポイントはどこですか

広田 回転より大回転の方が得意なので、大回転の方に注目してほしいです。大回転の方が自分のしたいことができて、それが結果に伴ってきているので大回転の方が好きですね。

――大回転の方が得意なのは小さいころからですか

広田 いや違いますね。そんなにどっちが得意とか苦手とか気にしなかったんですけど、高校に入って高2くらいから(回転が)苦手になってきてうまく滑れないなと思うようになって、マイナスな気持ちになっている感じです。

――石塚さんの注目ポイントを教えてください

石塚 私は逆に大回転があまり速くなくて、どっちが得意、苦手というのはないんですけど、過去のインターハイ(全国高等学校総合体育大会)でもインカレでも回転の方が成績がいいです。大回転は大体1本目は入賞圏外にいて、2本目何とか頑張って入賞するということが多いので、今年はそういうことがないように頑張るつもりではいるので、注目してほしいのもあります。ただインカレの花輪でも回転の方が自信をもって、スタートが切れるので回転の方に注目してほしいです。

――今シーズンの目標を教えてください

広田 ファーイーストカップというアジアの大会で種目別優勝、大回転で種目別優勝することができたらW杯の権利を取れるのでまずはそれを獲得することと、全日本選手権優勝です。

石塚 全く同じですね。あとはFISポイント(国際スキー連盟が定めるポイント)を20点台に揃えることを最低限に25点以下というのを目標にやっていきたいです。

――インカレの具体的な目標をお願いします

石塚 2人とも個人で優勝を目標に掲げていて、それがちゃんとできたらおのずと女子の団体優勝に貢献できるので、2人とも優勝を目標にしています。

――最後に色紙に言葉を書くとしたらどんな言葉を書きますか

石塚 ゴルフのタイガーウッズの“Never listen to other people’s expectations. You should live your life and live up to your own expectation.”という言葉で「他人の期待に耳を傾けてはいけない。自分の人生を生き、自分の期待に応えるのだ」という和訳です。私は大学1年生の時に波に乗った時期があって調子に乗ってしまって、2年はけがするし3年はメンタルボロボロになるしという状況でした。成績が乗るにつれていろいろな方と出会い、いろいろな言葉を聞いたら、期待されるというか勝手に受けてプレッシャーを背負ってズタボロになっていました。そんな時にたまたま出会った言葉ですごく好きです。

広田 「進撃の巨人」の「心臓を捧げよ」です。大会のスタートを切る前には死ぬくらいの勢いでいくという感じです。

石塚 めっちゃかっこいいよ、それ。

――ありがとうございました!

(取材・編集 堀内まさみ)

◆広田静空(ひろた・しずく)

北海道・旭川明成高出身。スポーツ科学部4年。アルペン部門。ハマっていることはスイーツ巡り。おすすめはローソンのカヌレ。写真撮影の際にはスキー部のニット帽を被ってくださりました。広田選手の大回転に注目です!

◆石塚結(いしづか・ゆい)

秋田・角館高出身。スポーツ科学部4年。アルペン部門。ハマっていることはラーメン巡り。とくにこってり系にハマっているそうです。石塚選手は写真撮影の際にスキー部の部章のピンバッジを用意してくださりました。インカレでは回転に注目です!