この4月にプロ転向!環境を変え、急成長している16歳将来の活躍が期待される注目のジュニア選手を紹介するこのコーナー。4回目は、2019年関東ジュニア優勝、全日本ジュニア16歳以下でベスト8をマークし…

この4月にプロ転向!
環境を変え、急成長している16歳

将来の活躍が期待される注目のジュニア選手を紹介するこのコーナー。4回目は、2019年関東ジュニア優勝、全日本ジュニア16歳以下でベスト8をマークし、この4月よりプロ転向した今、急成長中の秀明英光高校2年・奥脇莉音(おくわき・りのん)選手にインタビュー。どのようなきっかけでテニスをはじめ、日ごろはどのような練習を行っているのか、そして技術的にはどのような点を意識しているのか。日本テニス界のダイヤの原石に迫る!

【画像】奥脇莉音選手の写真をチェック


ボール投げは左
字を書く、箸を持つのは右

――テニスを始めたきっかけを教えてください。
お父さんが野球をやっていたので、小さいころは一緒にキャッチボールをするなど野球をやっていました。野球も楽しかったのですが、野球に似た何か別のスポーツをしたいなと思うようになり、テニスコーチをしているお父さんの親戚の人のところへ見学しに行ったら、テニスがとても楽しそうだったので始めることにしました。確か6歳ぐらいのときで、小学校に入学する前だったと思います。

――テニスのどんなところが楽しいと感じましたか?
はじめのうちはラケットにボールに当たらないことも結構ありましたが(笑)、当たるようになるとうれしいと感じ、やっていて楽しいなと思いました。

――奥脇選手はサウスポーですね。最初からずっと左でプレーしていたのですか?
テニスを始めたばかりのころは、どっち利きかわからない状態でやっていて、両方両手でも打っていましたし、フォアハンドは右手で、バックハンドは左手で打つということもありました(笑)。左に決めたのは、小1ぐらいのときだったと思います。どちらがいいのか当時のコーチと話していたときに、左で打つことにしました。文字を書いたり、お箸を持ったりするのは右ですが、ボール投げは左でやっていたので、テニスも左にしたという感じです。完全に左で打つことに慣れるまで、ちょっとだけ苦労しました。

――テニスで上を目指そうと思い始めたのはいつぐらいですか?
正確に覚えているわけではありませんが、小学生のころからずっと”プロ選手になる”ということは目標にしてやってきました。テニスを始めるときも、お父さんから「やるなら最後までやり続けなさい」と言われていて、やるからには全国優勝を目指そうと自然に思ってきました。ただ、当時の私は「全国」のことを「全部の国」だと思っていたので(笑)、「全国大会優勝=世界1位」を目指してやっていました。これまで目標や将来の夢について書いたりする機会があると、だいたい“プロテニスプレーヤーになる”と書いていましたね。



――日ごろ、どのような練習をしているのか、1日の練習時間と内容を教えてください。
練習は1日4時間ぐらいで、1週間に1~2日は休みます。休みの日はトレーニングすることはありますが、テニスはしません。
練習については、はじめの1時間から1時間半ぐらいはアップして、約2時間テニスをやって、最後にトレーニングという感じです。トレーニングを含めて1日4時間ほど練習しています。

――どのような練習をしていますか?
私の場合、振り回しやラリー練習がメインです。特に今、重点的に取り組んでいるのは、足を使ってボールにきちんと入って打つこと。また私はあまり体力に自信がないので、体力強化とフットワーク強化のために振り回し練習を重視して取り組んでいます。

――現在、奥脇選手は川原努コーチのもとで練習していると思いますが、いつから一緒に練習しているのですか?
去年の秋ぐらいからです。もっと強くなりたいと思い、尾﨑里紗選手(江崎グリコ)のコーチである川原コーチにお願いしました。世界で戦うために必要なことを学べると思ったのと、世界で活躍している選手を間近で感じられる環境があることがいいなと思ったからです。

――尾﨑選手と練習することもあるのでしょうか?
はい。一緒に練習してもらうことも多いです。ラリーをしてもらうことが多いのですが、尾﨑選手のボールはバウンド後かなり跳ねてくるので、そうしたボールにどうやって動くのか、とても練習になります。飛んでくるボールの質が今まで経験したことのあるボールと明らかに違うので、ものすごく勉強になります。また、足の運びやフットワークもとても参考になります。例えば、私が尾﨑選手を振るという練習の時、尾﨑選手からは私よりも2~3球ぐらい多く返ってくるんです。持久力や体力も違うので本当にすごいなと感じますし、一緒に練習させてもらうことで多くのことを学んでいます。

得意なショットはストローク
サーブはフォームを改善中

――奥脇選手の得意なショットは何ですか?
得意なショットは結構ありますが、一番はフォアハンドとバックハンドのクロスです。打つときに気をつけていることはあまりないですが、もともと私はネガティブなタイプで(笑)、いつでもポジティブにいられるように、打つ前に「絶対入る!」と自信を持ってから打つようにしています。



――それではクロスとストレートはどう打ち分けていますか?
ストレートを打つときは相手を展開するときが多いので、クロスへ打つときよりも、より集中して打っていると思います。少しだけ「ここ、いくぞ!」と思いながら打っています。あとは、ストレート方向へはネットが高いので、できるだけネットしないようにすることを心がけています。



――サーブで意識していることはありますか?
サーブは、今フォームを根本的に変えているところです。悪いクセがたくさんあったので、それを直すためにテイクバックやスイングなどイチから取り組んでいます。小1からずっと同じようなフォームでやってきたので、ちょっと大変なのですが(笑)。
サーブで今、特に意識してやっていることは、できるだけインパクトを見れるようにすること。顔が先に動いて下を向かないように、しっかりボールを見るようにしています。

――ボレーはどうですか?
私の場合、1試合につき5回ぐらいはネットに出ると思いますが、ボレーは感覚的に打ってしまうことがあるので、できるだけ足を使っていいポジションで打つように心がけています。そうすることで、ミスが少なくなると思います。

――どんなテニスを目指していますか?
まず左利きを生かしたテニスをしたいと思っています。例えば、サーブで左利きと右利きではボールの曲がり具合が違うと思うので、そういう部分を生かして、相手をコートに追い出してストロークで攻めるようなテニスをしたいです。また、バックの高いところを得意とする選手はそれほど多くないと思うので、そこを狙っていくためにクロスでのラリーが重要だと考えています。私の場合、クロスでのラリーはフォアで打つことになるので、跳ねるスピンボールなどをうまく使っていきたいと思っています。私はストロークが得意なので、フォアでもバックでも攻めていけるようになりたいです。



――使用ギアについて教えてください。ラケットは何を使っていますか?
HEADの『GRAVITY(グラビティ) MP』です。いろいろなモデルを試打した中で、打った感じがとてもよかったという印象があります。特にバックでの面ブレが少なくて、かつ回転もかかってくれたので、すぐにグラビティに決めました。

――ストリングは何を使っていますか?
最近変えたばかりで、正確に把握していないのですが、縦も横もポリを張っています。求めるのは回転がかかりやすいもの。少し弾道の高いスピンボールを打ちたいので、回転がかかりやすいストリングがいいなと思います。

――テンションはどのぐらいで張っていますか?
43~45ぐらいだと思います。かなりいろいろなパターンを試していて、今もまだ調節中ですが、45ぐらいがボールの飛びとスピンのかかり具合のバランスがいいような気がします。ストリングは2~3日に1回ぐらいで切れちゃいます。

――シューズはアシックスを履いているんですね。
まだ履き始めたばかりですが、履き心地はとてもいいです。

――ウエアはセントクリストファーですね。
去年の10月から契約していただきました。セントクリストファーのウエアはとてもかわいいなと思います。デザインはもちろん好きですが、私は『セントクリストファー』のロゴマークがかわいくて大好きで、このウエアを着てプレーしたいなと思っていました。



19歳でWTA世界ランキング200位以内
グランドスラム本戦に入るのが目標

――この4月からプロに転向した奥脇選手。プロ転向を決断した理由を聞かせてください。
以前から、高校在学中にプロになれたらいいなという思いをずっと持っていました。それを川原コーチやサポートしていただいている方々にも話していて、いろいろ相談した結果、この時期にプロ転向しようということになりました。“19歳でWTA世界ランキング200位以内に入ること、グランドスラムの本戦(または予選)に入ること”を目標にしていて、そこから逆算していくと、今のうちに世界で戦っておく必要があると考えました。そうした理由からプロ転向を決めました。

――それでは、今後ITFなどの大会に出場する予定ですか?
そうですね。もうあまり時間は残されていないので、ジュニアの大会には出場せず、今の段階からITFの大会にチャレンジして経験を積もうと思っています。日本で大会があれば出たいですが、大会が開催されていないので、海外の大会など出場できれば出場したいです。ただ、まだ今後のスケジュールなどは具体的に決まっていません。



――ライバルとして意識する選手はいますか?
あんまり意識したことはないですね。同年代の選手には負けたくない、という気持ちはありますが、ライバルだという意識はありません。逆に、ライバルだと思うと変に意識してしまうので、あまり思わないようにしています。

――最後に将来の夢を聞かせてください。
グランドスラムに出て、優勝するのが目標です。ただ、人間性が伴っている必要があると思うので、人間性も世界一と言われるぐらいの人になりたいです。きちんと感謝ができたり、当たり前のことを当たり前だと思わずに取り組めたり、特に家族思いだったり仲間思いであることは大事だと思っています。スペインのラファエル・ナダル(世界ランキング3位)選手のような人間性を持った選手になりたいです。


川原コーチのもと、根本的なフォームの改善に取り組み、急成長している奥脇選手。そんな奥脇選手のことを、一緒に練習している尾﨑プロは「最初のころと比べて、体を使ったスイングができるようになってきた。飲み込みもよく、吸収するのが早い。トレーニングを積んでもっとフィジカルを強化すれば、海外の選手にも通用するようなプレーができるのではないか」と高く評価。また、奥脇選手には技術的なことよりも、「“ツアーはこんな厳しいものなんだよ”とか、“プロとして活動するのはとても夢があるけれど、すごく大変なことでもあるからね”といったことを伝えている」とプロ選手の生活がどのようなものかアドバイスしているという。目標に向かってまっしぐらに進んでいる奥脇選手。サウスポーを生かしたテニスを磨いて、世界へ大きく羽ばたいていってほしい。


〈奥脇莉音選手使用ギア〉
ラケット  ヘッド GRAVITY MP
ストリング [横]ヘッド、[縦]ヘッド 43〜45ポンド
シューズ  アシックス
ウエア   セントクリストファー