文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「余裕がある状況でプレーできるようになった」

「開幕戦はプレッシャーをかけられて高いところでプレーさせられて、オフェンスリバウンドも取られて、本当にあっちのやりたいことをやられました。今日はチームとして準備してきたものが出せて戦えた感触がありますし、開幕戦と比べてチームの成長がかなりある試合だったかと思います」

これは水曜日に行われたサンロッカーズ渋谷戦に千葉ジェッツが勝利した後の富樫勇樹の言葉だ。ガード陣がSR渋谷の強烈なプレッシャーを突破し、終始テンポを落とさずリズムを保ったことで91-83のハイスコアリングゲームを制した。

富樫はディフェンスの名手にマークされ、時にはダブルチームを受ける場面もあった。それでも、ことごとくそうしたトラップをかいくぐり、ズレを作っては自らも得点を重ね、11得点9アシストを記録した。

特にドライブで仕掛けてノーマークを作り出すシーンが多々見られた。「個人的に調子が良いとは思わない」と自身が言うように、単に富樫の調子が良く、視野が広がったというわけではない。これまで積み上げてきたチームの共通理解が深まった結果と富樫は言う。

「ボールがよく回るようになったのと、スクリーンのタイミングですかね。チームとして共通理解がある中でプレーできているので、自然とオープンな選手が見えてきます。より良いスクリーンがかけられ、よりセパレーションが起きる。チームとしてやるべきことが徹底されてる分、より余裕がある状況でプレーできるようになったとは思います」

大野コーチ「彼らの成長を褒めてあげたい」

今シーズンの千葉はSR渋谷との開幕戦に連敗を喫し、スタートダッシュに失敗。他チームも含め、メンバーに入れ替えがあった以上は単純に比較することはできないが、レギュラーシーズンを圧倒的な強さで駆け抜けた昨シーズンのような強さは影を潜めていた。それでも次第に調子を上げ、連勝を8に伸ばして東地区3位に浮上した。

富樫は「自分たちが開幕戦以降にやってきたことが明らかに出た試合だった」と、チームの成長を強調したが、指揮官の大野篤史も同じ思いだった。

大野ヘッドコーチは勝ち試合であっても課題に目を向けることが多く、試合に満足することは少ない。だが、この試合に関しては「課題云々より、彼らの成長を褒めてあげたい」と、選手たちを称えた。

「開幕からカムバックして、40分間戦うことができているので、そこをしっかり強調したい。ゲームの締め方とかは今からでも間に合います。戦うメンタリティとか、折れない心を作れてきてるんじゃないかな。シーズン当初のチームに比べて、自分たちの成長が見えた試合でした」

「いつもの状態に戻った感じ」

彼らが『成長』という言葉を強調するのは、難敵を撃破し、チームに自信を持てるようになったからに他ならない。前半戦は思うように成績が上がらず、焦燥感に駆られていたと富樫は言う。

「まだシーズンは続きますが、すでにアルバルク東京との2試合が今シーズンのターニングポイントだったような気がします。あの時16勝10敗で、もし連敗したら16勝12敗。取り返しがつかないとまでは言わないですけど、追いつくのが難しいところまで離されていたので、個人としては危機感がありました」

足踏みはしたものの、結果的に千葉は期待値通りの強さを取り戻しつつある。富樫は「危機感」があったと言ったが、それと同時にチームが上昇することも予感していたという。

「今シーズンは負けても雰囲気が悪いと感じたことがなくて、気持ち的にバラバラだったわけではないんです。コートの中でしっかり状況判断ができなかったり、ごちゃごちゃした試合があったので、そこを少しずつ直してきただけで、今の時期にこの状況になっているのはなんとなく想像できました」

一見矛盾しているようにも聞こえるが、危機を脱したことで自信が確信に変わったということを意味している。「どちらかというと前が悪かったという感じです。今は持っている力を普通に出せていて、いつもの状態に戻った感じ。シュートが入らない試合でも勝ちに繋げられての8連勝だと思うので、チームとして手応えを感じています」

指揮官も認め、選手も実感するチームの成長。一時、東地区最下位まで落ちたことが嘘だったかのように、千葉は上昇を続けている。