関西学院大学から社会人野球の大阪ガスを経て、2018年のドラフト1位で阪神に入団した近本光司。開幕スタメンを掴み取り、6月10日時点で打率.304、16盗塁と、見事にリードオフマンの役目を果たしている。

 50m5秒8と抜群の走力を誇る左の一番打者、ポジションも同じセンターということで、かつての不動のリードオフマンである赤星憲広氏と比較されることが多くなっているが、赤星氏本人はどう評価しているのか。選手としての特長や、今後に向けての課題などを聞いた。


阪神の

「一番・センター」として活躍する、ルーキーの近本

――近本選手が周囲から「赤星二世」と呼ばれていることについて、赤星さんはどう思っていますか?

「近本が入団会見で『赤星さんを目標にしています』と口にしたので、これまでになく取材が殺到しましたよ(笑)。でも、大阪ガス時代に見た時には、彼は主に五番打者として活躍していましたし、私とは少しタイプが違う選手なんじゃないかなという印象がありました」

――その違いとは?

「打撃面で長打力があることが決定的に違いますね。私はプロ通算のホームランが3本でしたが、彼は1年目ですでに5本も打っています。投手側の足を上げる、彼であれば右足を高く上げて打つフォームは、ボールの質が上がるプロではタイミングがうまく取れなくなる選手も多いんですけど、そんな心配など関係なく結果を出しています。

 長打力があるかないかでは、相手バッテリーの攻め方にも差が生まれるんです。私には長打がなかったので、四球で塁に出さないことを最優先にストライクゾーンで勝負されることが多かった。一方、近本にはホームランを打たれるリスクがありますから、簡単にはストライクを投げられなくなります。打ち取るまでの配球により工夫が必要なので、すごく嫌な存在でしょうね」

――赤星さんから見て、現役選手の中でタイプが似ている選手はいますか?

「バッティングフォームや体格も含め、やはり左打者であるヤクルトの青木宣親に近い。近本は彼を目指すべきなんじゃないか、と思っています。青木は入団2年目で202安打を放つなど、どちらかといえば”打つ選手”のイメージが強かったんですが、翌年に41盗塁して私の”6年連続盗塁王”を阻止しました。その年から本塁打も増えましたし、2人はイメージが被る部分が多いです。違うのは、利き腕くらいでしょうか」

――たしかに、青木選手は右利き、近本選手は左利きですが、それが打撃面で何か違いを生むのでしょうか。

「右投げ左打ちの打者は、外角の変化球などで体勢を崩された時に、右手一本でボールを拾うような形になることが多いですよね。青木などの巧打者はそれでもヒットにできる技術がありますが、力ない凡打になってしまうケースも少なくありません。それに対して近本は、最後まで左手を離さずにバットのヘッドを返すことができますから、力強い打球を外野まで運ぶことができるんです。

 また、近本はバットにボールが当たる時に左手を被せる、よく言う”ヘッドを立てた”スイングをするので、打球がゴロになった場合にバウンドが高くなります。それが三遊間などに転がると、近本であれば内野安打にできる。ここまでチームトップの73安打を記録している要因のひとつですね」

――打撃面で課題を挙げるとしたら?

「プロ1年目としては十分すぎるほどの成績を残していますけどね(笑)。あえて、さらなるレベルアップを求めるならば、四球の数を増やすこと。二番打者の糸原(健斗)が38個なのに対し、近本は19個です。早いカウントから積極的に打つことが特長ではありますが、そこを突かれてボールゾーンから攻められ、ポップフライになる場面も散見されます。

 彼がハイボールヒッターであることも他のチームはわかっているでしょうから、とくに低めのボールの選球眼を磨きたいですね。それができれば四球が増えていき、自然と盗塁の数も多くなるでしょう」

――盗塁数はすでに16で、セ・リーグのトップを争っていますが、赤星さんから見た走塁の評価はいかがですか?

「今年の春のキャンプで初めて盗塁するところを見たんですが、『あまりうまくないな』という印象でした。しかし、そこから急激に進化して、開幕までにはだいぶ改善されていましたね。スライディングの摩擦が減りましたし、スタートを切ったあとにアウトになりそうな気配を感じたら、日本ハムの西川(遥輝)のように途中で帰塁できるケースが増えました。また、予想以上に”スタートを切ることができる選手”であることにも驚きましたね」

――”スタートを切ることができる”とは?

「ランナーは、投手がセットポジションから投球動作に入った時に、実際に盗塁する・しないは別としてスタートを切る動作をするんですが、近本はそのタイミングがバッチリ合うことが多いんです。『そのまま行っちゃえばいいのに』ということも多々ありますよ。これは盗塁の成功率が高い選手に共通することで、西武の源田(壮亮)も抜群にうまいですね。近本が経験を積み、さらに技術が身につけば、盗塁を量産することができるでしょう。

 そのスタートのうまさは、守備にも生きていると思います。塁上にいる時のリードと守備時の構えはほぼ一緒で、左右に打球が飛んだ瞬間にいいスタートが切れています。前後の打球は判断が難しく、まだ不安な部分もありますが、クッションボールの処理や内野までの返球などはそつなくこなしている。これは私の持論ですが、足が速くても守備が下手な選手はいるけど、盗塁がうまい選手に守備が下手な選手はいないと思っています。近本がそれを証明してくれることを期待しています」

――赤星さんの期待どおりに活躍を続ければ、これも入団会見で宣言していた、盗塁王と新人王の獲得が見えてきますね。

「そこはぜひ目指してほしいですね。とくに盗塁王のタイトルは、かなりチャンスがあると思います。最大のライバルになると見ていた巨人の吉川(尚輝)が腰痛で離脱したことが一番大きく、2017年の盗塁王である広島の田中(広輔)も今季は出塁率があまり高くない。中日の大島(洋平)は年齢的にシーズンが後半になるにつれて体がキツくなるでしょうし、4度目のトリプルスリーを狙うヤクルトの山田(哲人)は盗塁数が30個に達したら打撃に専念するはずです。

 近本の能力、他チームの状況を見ても、舞台は整っています。強肩の梅野(隆太郎)にライバルたちの盗塁を阻止してもらいつつ、ケガなく1年を通して活躍し、意地でもタイトルを獲得してもらいたいです」