昨年…

 昨年のNBA覇者、ボストン・セルティックスは、プレーオフ1回戦を危なげなく突破したものの、カンファレンス・セミファイナルでニューヨーク・ニックスに苦汁を嘗めさせられ、連覇の夢が途絶えた。ジェイソン・テイタムのアキレス腱断裂、ジェイレン・ブラウンの半月板損傷など、エース陣の不運も重なっての結果となったが、前者はこれまでの事例から、1年以上の長期離脱も見込まれている。

 ブラッド・スティーブンスGMの悩みの種は、エース不在にとどまらない。セルティックスは今夏、膨れ上がったサラリーキャップを解消するために、ロスター整理が必須となっているのだ。

 NBAの名物記者である『ESPN』のシャムズ・シャラニア記者は、スポーツトーク番組『Pat McAfee Show』で、セルティックスがコスト削減に取り組み、優勝チームの一部コアを解体する可能性を指摘している。

「このオフのもう一つの大きな注目点は、セルティックスがどのような動きを見せるかです。私の見解では、今夏におけるセルティックスの主な焦点は、ドリュー・ホリデー、クリスタプス・ポルジンギス、サム・ハウザーであり、彼らはトレード市場に登場するでしょう」

 そもそも、2025ー26シーズンのセルティックスのサラリーキャップは、どのような状況なのだろうか。参考までに、長年のライバルであるロサンゼルス・レイカーズと対比しながら見ていきたい。

 同球団は、テイタムと約5410万ドル(約77億6800万円)、ブラウンと約5310万ドル(約76億6400万円)の契約がそれぞれあり、両選手の給料が約70パーセントのキャップスペースを占めている。これはレブロン・ジェームズとルカ・ドンチッチの組み合わせよりも、約6パーセント高い水準にある。

 さらに、シャラニア記者がトレード候補として言及したホリデーには約3240万ドル(約46億5000万円)、ポルジンギスには約3070万ドル(約44億400万円)の契約があり、4選手の契約金だけでもすでにサラリーキャップを10パーセント以上もオーバー。また、セカンドユニットのハウザーも約1000万ドル(約14億3500万円)と決して少額ではなく、今夏にFAを迎えるアル・ホーフォードとの再契約は夢のまた夢のようなお財布事情に。レイカーズが八村塁、ドリアン・フィニー・スミス、オースティン・リーブスを加えた高給取りの上位5選手の給与合計でも、サラリーキャップが95パーセント以下に収まっている事実と比較すると、セルティックスのロスター解体は避けられなさそうだ。

 これまで大きな噂こそないものの、他球団もセルティックスがトレード提案に耳を貸さなければいけない状況を理解しているだろう。シャラニア記者によれば、セルティックスのフロントは、条件次第でより大きな決断をする可能性もあるという。

「一方で現在、他球団がジェイレン・ブラウンやデリック・ホワイトについて、大型オファーを提示したり、連絡を取ってきている可能性はあると思いますか? それは間違いなく、起きているでしょう。私が思うに、セルティックスは彼らをトレードしたくはありませんが、もし大型オファーが届けば全てを検討しなければいけません。そして、セルティックスが焦点としている3選手にはオファーが届くでしょうし、ホワイトやブラウンにもオファーが届く可能性があります。ドラフトとFAまでの間に、彼らは価値の観点から何が理に適っているかを評価することになるでしょう」

 もし仮に、ブラウンを手放し、テイタム不在でシーズンを戦うことになれば、ジョー・マズーラHCは全く新しいバスケットプランを検討しなければならない。

 しかし、セルティックスはその危機的な状況に直面している。NBAにはリーグ全体の競争性を保つために厳格な財務ルールが設けられており、もし「エプロン」と呼ばれるサラリーラインを超過すると、選手との契約やトレードに制約が課せられる仕組みとなっている。

 セルティックスは、ファーストエプロンを約3180万ドル(約45億6800万円)、セカンドエプロンを約2000万ドル(約28億7400万円)超過。そして、現状況から推定ラグジュアリータックスを算出すると、約2億3820万ドル(約342億3900万円)と目を疑うような数字となっているのだ。これはレイカーズに課せられる約370万ドル(約5億3000万円)と比較しても大きな乖離があり、ロスターの改善は避けられない。

 夏には、いずれかの優勝メンバーに別れを告げることとなるセルティックス。勢力図を塗り替えるようなトレードに、史上最多優勝球団が絡む可能性は高いと見る。

文=Meiji

【動画】プレーオフでエース不在をカバーしたホリデーのパフォーマンス