NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25ディビジョン1 第15節(リーグ戦)カンファレンスA2025年4月12日(土)12:00 ベネックス総合運動公園 かきどまり陸上競技場 (長崎県)三菱…
NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第15節(リーグ戦)カンファレンスA
2025年4月12日(土)12:00 ベネックス総合運動公園 かきどまり陸上競技場 (長崎県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 38-28 横浜キヤノンイーグルス
創業の地でのメモリアルな一勝。全員で作り上げたスクラムが勝利の呼び水に
フッカーとしてセットピースをリードし三菱重工相模原ダイナボアーズの勝利に貢献した李承爀選手
21対21の同点で迎えた後半11分、三菱重工相模原ダイナボアーズ (以下、相模原DB)が敵陣22mライン内で、ここまで横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)のディフェンスに抑えられてきたラインアウトモールを敢行した。
このプレーでトライゾーンに飛び込んだ李承爀はこう振り返る。
「お互いの強みであるフォワードでアタックすることによって、相手のメンタルを削ることができます。モールでトライを取ると勢いが出ますし、ウォルト・スティーンカンプを中心に手ごたえはありましたが、前半は『絶対にラインを越える』という気持ちが足りませんでした。ハーフタイムに修正できたことが、トライにつながったと思います」
そして後半21分、相模原DB陣内5mエリアでの二度目のスクラムで横浜Eがスクラムを崩すペナルティをし、相模原DBに軍配が上がった瞬間、李が大きなガッツポーズを見せた。まさに相模原DBが横浜Eのセットピース攻略に成功した瞬間だった。
「この前の対戦で試合を壊してしまったスクラムをこの試合では自分たちのキーポイントにしていました。あのピンチでチームを救えたのは率直に、すごくうれしかったです」
前回の対戦後、横浜Eの沢木敬介監督に「リスペクトを込めてドミネートします」と名指しされた元横浜Eのフロントローである安昌豪と津嘉山廉人は負傷のため23人のメンバー入りはしなかったが、バックアップメンバーとして貢献したという。
「安と津嘉山が横浜Eはどんなスクラムを組んでくるのかを僕らにレクチャーしてくれて、意見を交わしながら練習しました。ペナルティを1本取られましたが、後半21分の場面では、いい形ができて攻撃を阻むことができたと思います」
李の両サイドの先発プロップは、大卒ルーキーの蔡唯志、フロントロー補強のため、急きょシーズン中に加入したクフチャ・ムチュヌというリーグワン公式戦で初めての組み合わせだった。
「唯志は大学上がりで不安もあるだろうし、鼓舞しながら良さを引き出そうとしたのと、体の強いクフチャには『低く組もう』と1週間言い続けてきました。そのようにコミュニケーションを取って、今日はそれができました。一人ひとりのクセを知るのはスクラムではすごく大事です。残り3試合ですが、いい形になってきていると思います」
かくして相模原DBは、親会社である三菱重工の創業地での初白星に加えて、リーグワンでの“神奈川ダービー”初勝利を飾った。さらにはリンディ真ダニエルのチーム最多となる相模原DBでの公式戦通算121キャップ達成を勝利で祝うというメモリアルな1日を作り出すことに成功した。
(宮本隆介)
三菱重工相模原ダイナボアーズ
三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(右)、岩村昂太キャプテン
三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ
「この素晴らしいグラウンドで試合ができたことをうれしく思います。(昨季よりも)今季はさらにいい準備ができたと思いますし、いい経験をしながら横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)にリーグワンでは初めての勝利だと思いますので、この素晴らしい場所で達成できたことを光栄に思います」
──三菱重工の創業地の長崎県で勝つという意味をどう捉えていますか。
「われわれは150年前に岩崎彌太郎がこの会社を始めたことをすごく大事にしています。自分たちはその歴史の小さな一部ではありますが、自分たちがまた次の歴史を作れるように努力したいと話をしています。三菱重工がスタートした大切な場所で、それに見合ったパフォーマンスを見せないといけないと話をしていて、毎年大事にしている試合です」
──チームで原爆資料館や平和公園を訪れ、長崎の歴史に触れたようですが、どんな思いで試合に臨みましたか。
「長崎は歴史のある街で、(原爆資料館や平和公園の)分かりやすい解説を見て、二度と起こしてはいけないことを実感しましたし、ラグビーよりも大事なことがあるということもみんなが分かったと思います。昨季もグラバー邸という歴史のある場所に行きましたが、今回も一旦、ラグビーから離れて大事なことを考えてから、またラグビーに集中できたと思います」
──ハーフタイムにディフェンスについてどのような確認をしましたか。
「ハーフタイムにコーチで集まって話をしたあと、選手と話すのですが、そこで選手たちがどんな話をしたのかを聞いたら、基本的に同じ答えが返ってきました。修正しなければいけないところはいくつかありましたが、コーチから何か指示を出したというよりは選手たちがリードして、後半のパフォーマンスにつながったのかなと思います」
──入替戦圏内から大きく抜け出したと同時に、プレーオフトーナメント進出にだいぶ近づきました。残り3戦に向けて、この勝利をどのように捉えていますか。
「大事な勝利です。今季はどのチームもいいプレーをしていて、タイトなリーグになっています。このブロック(カンファレンスA)もタフで、その中で3勝できましたが、われわれが最後の3試合でプレーオフトーナメントに行くチャンスを取っただけだと思います。今日の試合のように目の前の試合に集中して、できると分かっているパフォーマンスを出せば、そのチャンスが続くと思うので、自分たちらしいラグビーを見せることが大事です」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン
「長崎という素晴らしい地で、こういった形で、リーグワンで初めて横浜Eに勝利することができてすごくうれしく思います。試合中も五分五分でどうなるか分からない数分間があったのですが、そういった中でも選手一人ひとりが自分の役割をしっかりと遂行することにフォーカスした結果、流れをもう1回こちらに引き寄せることができました。そういったところは今季をとおしてすごく成長しているところだと実感できた試合でした」
──チームで原爆資料館や平和公園を訪れ、長崎の歴史に触れたようですが、どんな思いで試合に臨みましたか。
「地元が福岡県ということもあって小学校のころに原爆資料館を訪れたことがあります。大人になって訪れてみて、そういった歴史があったからこそ、こうやって元気にラグビーができていると身に染みて感じることができました。絶対に繰り返してはいけない出来事だったと再認識することができました。一日一日を大切にしなければいけないと感じました」
──サードジャージーで試合に臨んだ心境を教えてください。
「ロッカーに入って、このジャージーを見たときに、長崎県民の皆さまと一緒に戦うという気持ちになりました。実際に長崎の皆さまが一緒に戦ってくれたおかげで勝利することができました」
横浜キヤノンイーグルス
横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督(左)、庭井祐輔ゲームキャプテン
横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督
「いいスタートを切れたのに相手に(トライを)1本取られたあとに自分たちからズルズル(崩れて)いく形がなかなか改善できません。ただ、毎回言うのですが、下を向いていても仕方がないので、こういったときにもう1回チームが結束して、毎試合毎試合、全力を出してイーグルスのラグビーを貫けるように、また次からやっていきたいと思います」
──バイウィーク明けにいい試合がないシーズンになっているような気がしますが、次節までどのような時間の使い方をしていくのでしょうか。
「毎回ベストメンバーを選んでいるつもりですし、しっかりと選手のパフォーマンスを引き出すような準備をしていきたいと思います」
──前回の対戦と比べて、スクラムがうまくいかなかったとすれば、どういったところに要因がありますか。
「そこが分かればすぐに解決できるのですが、毎回同じパターンというか、そういうのも全部、そうさせている責任は僕にあると思うので、しっかりと一人ひとりのパフォーマンスを引き出せるように準備していきます」
横浜キヤノンイーグルス
庭井祐輔ゲームキャプテン
「負けてしまって残念ということに尽きるのですが、監督がおっしゃったとおり、自分たちのミスから失点することが多かったので、もう一度チームがタイトになって、また次の試合に向かっていきたいと思います」
──前半にリードされてから追い付いて持ち直したように見えたのですが、どんなところを修正しようと選手たちで話していたのでしょうか。
「シンプルに『やってきたことをやろう』と声掛けをしていました。崩されたというよりは個人的なミスから(スコアを)取られていることが多かったので、大きく修正することはありませんでした」
──同点で折り返して悪い流れではなかったと思いますが、後半、持ち直せなかったのはどのあたりに要因があるのでしょうか。
「けっこう簡単に(スコアを)取られてしまう場面が多くありました。セットピースでプレッシャーを掛けたかったのですが、そこを掛け切れずに流れを与えてしまったという印象です」