◆明治安田 J1リーグ▽第10節 町田0-2浦和(13日・国立)【浦和担当・金川誉】盤石の勝ち筋だった。浦和は町田を相手に前半に2得点を奪い、後半は試合をコントロールしてリードを守り抜いた。先制点はセットプレーから。前半15分、ショートコー…

◆明治安田 J1リーグ▽第10節 町田0-2浦和(13日・国立)

【浦和担当・金川誉】盤石の勝ち筋だった。浦和は町田を相手に前半に2得点を奪い、後半は試合をコントロールしてリードを守り抜いた。先制点はセットプレーから。前半15分、ショートコーナーからMFサビオが入れた低いラストパスにDFホイブラーデンが合わせて先制。そして圧巻だったのは、後半38分の超高速カウンターだ。GK西川から低く鋭いボールがトップ下のMF渡辺に届くと、ダイレクトで前へ。これを受けたFW松尾は、持ち味のスピードを生かしてDFを振り切り、左足で決めきった。

 今季初めて1トップに入った松尾は「僕自身もゴールがなかったので、個人としてもこれから乗っていけると思う。僕が1トップとして起用されている意味だと思います」と得点シーンを振り返った。西川のフィード力、渡辺の判断力も秀逸だったが、松尾の存在が浦和の攻撃の“カラー”を変えた。前節まで大型FWチアゴサンタナが1トップをつとめてきたが、この日はベンチ外。チームトップの3ゴールを挙げてきたブラジル人ストライカーが不在の中で、新布陣がはまった格好だ。

 本職の左ウィングではなく、1トップで起用された松尾は「相手のウィングバックを引き出したらしっかり走って、僕が(パスを)受けるのもそうですけど、しっかり深さを作って(味方に)スペースを提供することを意識しました」と語ったように、相手を見ながら要所で走力、スピードを生かした。また前半8分にはサビオがドリブルで運び、松尾へのラストパスでチャンスを作ったように、ふたりで攻撃を完結させるシーンもあった。

 フィジカルに優れたサンタナは、ここまでチームの攻撃の基準点となってきた。しかし堅守を意識するスタイルの中で、攻撃は少ない人数で仕掛けることも多い今季の浦和では、持ち味が十分に生かされているとは言いがたい。一方、松尾が頂点に入ったこの日は、サビオ、渡辺らと絡んでスピード感を持った攻撃を展開。加えて守備でも素早い攻守の切り替え、押し込まれてもしっかりとはね返す堅牢さの両面が現れ、危なげなく前半のリードを守り切った。

 実は今季の浦和は、相当に走力の高いチームだ。1試合平均のスプリント回数は、この試合前でリーグ2位の145回(1位は京都の152回)。この試合は174回と、130回の町田を圧倒した。チームトップのスプリント28回をマークしたMFサビオを筆頭に、走れる選手がそろう。抜群のスピードを持つ松尾を1トップに据えれば、前線は走れて技術も高い選手がずらりとそろうことになる。これは相手チームに、攻守において相当なストレスを与えるはずだ。

 スコルジャ監督は「(松尾)佑介は左ウィングとしてもすばらしい仕事をしてくれる選手ですけど、ストライカーというのもひとつのオプションになります。相手や我々の戦術によって、両方があり得ると思います」と話した。今後は過密日程も待つ中で、一つの布陣だけでは戦い抜けない。ただ攻守に走力、スピードを生かした新たな戦い方でつかんだこの日の勝利は、今後のベースとなる可能性を十分に秘めている。