井上監督(左)も石川を熱心に指導してきた(C)産経新聞社 中日は12日、石川昂弥の2軍降格を決めた。代わりに同じ三塁手の高橋周平を昇格させ、チームの立て直しを図る。  石川昂は開幕から「4番・三塁」に座るも、13試合で打率.160、本塁打0…

井上監督(左)も石川を熱心に指導してきた(C)産経新聞社

 中日は12日、石川昂弥の2軍降格を決めた。代わりに同じ三塁手の高橋周平を昇格させ、チームの立て直しを図る。
 
 石川昂は開幕から「4番・三塁」に座るも、13試合で打率.160、本塁打0と低空飛行が続いていた。高橋周はキャンプ、オープン戦通じて今季初の1軍合流となる。

【動画】これぞホームランアーチストの弾道!細川が自身初のグランドスラムを放ったシーン

「俺も我慢をしてきたけど……テコ入れをしたいと思います」

 各紙報道によると、11日の阪神戦後に井上一樹監督はこうコメントしたという。同日の試合中、石川昂と遊撃手の村松開人が打球を“お見合い”する場面があり、指揮官の逆鱗に触れたようだ。

 キャンプから激しい定位置争いが起こる中、井上監督がポジション固定をさせた一人が石川昂だった。地元出身の生え抜きスラッガーを4番に据え、新たな時代を作るーー。そんな想いも日々のコメントからにじみ出ていただけに、今回の2軍降格は心を鬼にした対応だと推察する。

 打てない、守れないのは最悪目をつぶる。それ以上に消極的な姿勢が良くないのだと。

■6年目の今季は4番打者でスタートするも…

 誰もが認める才能はありながらも、活かしきれぬままズルズル来ている。石川昂のプロ人生を振り返ると、こう語られてしまうだろう。

 小学生の頃にドラゴンズジュニア選出。天才スラッガーとして数多の誘いを受けながらも、父と同じ東邦高に進学すると、主軸でエース、キャプテンの重責を担いながらセンバツ優勝の原動力に。ドラフトでは3球団競合の末、地元・中日に入団した。流麗なスイングと鮮やかな放物線は、前途洋々な未来を描かせてくれた。

 ただ、プロ入り後は故障との戦いだった。1年目はキャンプ中に左肩腱板炎。2年目は昇格寸前に死球を受けて左尺骨を骨折。3年目は開幕から活躍するも、交流戦での走塁中に左膝を負傷。前十字靭帯不全損傷の大ケガで手術を受けた。4年目は夏に頭部死球を受けて打撃に狂いが生じ、5年目も左手首を痛める時期があった。

 6年目の今季は新任の松中信彦打撃統括コーチのもと、荒々しいアプローチに挑戦しているところだった。前述のように首脳陣によって“意図的に”4番へ据えられた経緯もあり、結果が出ないと厳しい声が挙がっていたのは事実。一方で、現地でのファンの声援は誰に対してよりも大きい。

 紆余曲折ありながらも、その背中に夢を見ている人は多いのだ。

■2軍で過ごす時間を有意義に
 
 だからこそ、今回の2軍降格はもどかしい。プレッシャーに晒され、自信を失ったのはあるだろう。アプローチを変える過程で同時に結果を求められる難しさもあったと思う。起こってしまったのは仕方ないので、2軍で過ごす時間を有意義なものにしてもらいたい。

 敢えて2軍でやることがあるとすれば「自分の型」を作り上げること。そして、自信を取り戻すこと。ウエスタン首位を走る2軍の溌剌さに触れて、良い刺激をもらえるかもしれない。

 再び雌伏の時を迎えた背番号25。技術も心も磨いて、1軍帰還の日を待ちたい。

[文:尾張はじめ]

【関連記事】中日ドラ1・金丸夢斗のデビュー日を「ガチ予想」 4球団競合の逸材はいつベールを脱ぐ?

【関連記事】井上中日に"大当たり"の予感…長打にユーティリティ、日本球界で本格覚醒が期待される31歳助っ人にX大興奮「クリーンアップいける!」

【関連記事】井上中日「4番・石川昂弥」覚醒の条件は? 球界OBの着眼点「意識させるから、おかしくなる」細川の打順にも言及