「巨人0-1阪神」(6日、東京ドーム) 阪神・門別啓人投手(20)が今季2度目の先発で待望のプロ初勝利を挙げた。開花の時を迎えた若き左腕は決意を込め、妹のネームを刺しゅうしたグラブを使い続けている。 ◇  ◇ 門別はプロ入り後、グラブの色…

 「巨人0-1阪神」(6日、東京ドーム)

 阪神・門別啓人投手(20)が今季2度目の先発で待望のプロ初勝利を挙げた。開花の時を迎えた若き左腕は決意を込め、妹のネームを刺しゅうしたグラブを使い続けている。

 ◇  ◇

 門別はプロ入り後、グラブの色や形を変えても、妹「心奈さん」の名前の刺しゅうだけは変えなかった。心奈さんは5歳で、脳腫瘍によりこの世を去った。門別が小学1年生の時だった。

 「めちゃくちゃ仲良しなきょうだいでした。ずっとくっついていて。妹の方が性格がきつくて、啓人は優しいお兄ちゃんでした」と母・実保さん(43)。幼い頃だったが、門別にもかわいい妹の記憶は鮮明に残っている。

 「ずっと寝たきりで、ずっとベッドにいて。高い柵があったんですけど、その柵から自分が手を伸ばして遊んでいました」。心奈さんが入院してからは、門別は祖父母の家で暮らすように。たまに心奈さんが病院から帰って来た時は、一緒に過ごせる大切な時間だった。

 「本当良くないんですけど…妹の口に指を近づけたらかじってくるんですよ。それにかじられないように遊んでいました。でもたまにめっちゃ強くかじられて、血が出そうな時もありました」と懐かしそうに笑った。

 高校時代からグラブに妹の名前を刻んできた。入寮の際も持ち込んだのは「M.cocona」と刺しゅうされたグラブ。「中に(名前を)入れたら一回一回外して見ないといけないので、できるだけ自分が見やすいところに」と現在使っているグラブも外側に刺しゅうがされている。

 「(妹の名前を)入れるのと入れないのでは気持ちの入り方が違う。一緒に戦っている気持ちになれて、力をもらえる感覚はあります」。プロの舞台でも心奈さんからパワーをもらい、一緒に戦ってきた。そして、この日も2人でマウンドに立ち、記念の1勝を手にした。

 門別は手元のグラブを大事そうに見つめ、言葉を紡いだ。「このグラブで自分は10勝したいと思っているので。それができるように、このグラブと一緒に頑張りたいなと思っています」。ようやくスタート地点に立った。最愛の妹とともに、どんな困難も乗り越え、プロの階段を駆け上がっていく。(デイリースポーツ・山村菜々子)