初勝利こそ掴めなかったが、佐々木は確かな手ごたえをフィリーズ戦で掴んだ。(C)Getty Images 悔しさばかりが募る前回登板から約1週間で、「怪物」は着実に進化を遂げた。現地時間4月5日に敵地で行われたフィリーズ戦に、佐々木朗希(ドジ…

初勝利こそ掴めなかったが、佐々木は確かな手ごたえをフィリーズ戦で掴んだ。(C)Getty Images
悔しさばかりが募る前回登板から約1週間で、「怪物」は着実に進化を遂げた。現地時間4月5日に敵地で行われたフィリーズ戦に、佐々木朗希(ドジャース)が先発登板。4回0/3(68球)で降板して初勝利はお預けとなったものの、被安打3、1失点、与四球2、4奪三振と上々のパフォーマンスだった。
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去る3月29日のタイガース戦で本拠地デビューを飾った23歳だったが、結果は1回1/2を投げ、2失点、4四球でKOと散々。かねてからの課題であった制球難が仇となり、痛恨の降板を余儀なくされた。
降板してベンチ戻った直後、佐々木が涙目となった姿がクローズアップされたこともあり、さまざまな意見が噴出。MLB通算251勝、3093奪三振をマークしたレジェンドであるC.C.サバシア氏が「キャリア2試合目のベンチで泣く姿を見るのはつらいし、見たくない」「感情を表に出すのは問題ないけど、せめてロッカールームでああいうことはやるべきだ」と説くなど、佐々木の状態に議論を呼んでもいた。
そうした中で、佐々木は一皮むけた感もある。ブライス・ハーパーやトレイ・ターナー、カイル・シュワーバーなど強打者揃いのフィリーズ打線に果敢に挑み、四球から崩れることもなかった。
米国内で批判も頂戴したKO劇から中7日で何が変化したのか。試合後に米スポーツ専門局『Sports Net LA』などの取材に応じた本人は、「メンタル的に不安になる時もあった」と正直に明かした上で、「ただ自分の中では信じられる技術があったら気持ちは関係ないのかなと思う」と続けた。
「今日は前回のブルペンで信じられるものを見つけて、それを信じて投げただけ。それが見つけられたことがよかったですし、技術あってのメンタルかなと改めて思いました」
技術あってのメンタル――。この言葉はメジャーの大海に飛び込び、声価をあげてきた“先人”たちも過去に口にしてきたものでもある。それは奇しくも今季から同僚となった“偉才”大谷翔平も目指している心理でもあった。
大谷を超える投手になる日も――
10年総額7億ドル(約1015億円=当時のレート)というエポックメーキングな契約が誕生して間もない昨年4月。元専属通訳だった水原一平氏による巨額銀行詐欺事件が世間を賑わせ、大谷にもあらぬ疑惑が向けられていた。
稀代のスーパースターが巻き込まれた一大スキャンダルは米国内でも報道が過熱。当の大谷も事情聴取に応じたために重要視してきた睡眠時間を削られ、パフォーマンスが低下。想像以上の重圧下でのプレーを余儀なくされ続けていた。
誰もが成績不振の言い訳したくなる過酷な状況だった。しかし、大谷は違った。開幕から40打席ノーアーチと苦しんでいた4月3日にようやくドジャース移籍後第1号を放った天才は、超一流の思考をのぞかせた。
「メンタルを言い訳にしたくはないので、そこを含めて技術だと思ってますし、そこを含めて自分がここまで結果が出ていなかったと思います」
技術という拠り所が自分にしっかりと根付けば、どのような環境でも結果を出せる。それは「世界一」を本気で目指すトップアスリートらしい感覚でもあった。そしてロッテからのポスティング公表の際に「マイナー契約から這い上がって世界一の選手になれるよう頑張ります」と公言した佐々木も、偉才の境地にたどり着こうとしている。それは実に興味深い。
まだ23歳。「令和の怪物」と慄かれる天才投手も、いまだ進化の過程にいると言っていい。しかし、未完成だからこそ、今回のフィリーズ戦で何かを掴んだように見える佐々木が、どう変貌を遂げていくかは楽しみで仕方がない。
メジャーで通用する技術、そして己が信じる技術を極められれば、それこそ大谷を超える投手として名を馳せる日がやってくるかもしれない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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