今季のJリーグは約2週間後の2月14日に開幕するが、今オフも各クラブで戦力の補強、整理が行なわれた。なかには積極的な補強で目立ったクラブがある。そうした移籍状況を踏まえ、今季期待ができるクラブを探ってみた(※移籍情報は1月28日時点)。昨季…

今季のJリーグは約2週間後の2月14日に開幕するが、今オフも各クラブで戦力の補強、整理が行なわれた。なかには積極的な補強で目立ったクラブがある。そうした移籍状況を踏まえ、今季期待ができるクラブを探ってみた(※移籍情報は1月28日時点)。


昨季2位のサンフレッチェ広島と3位のFC町田ゼルビアは、的確な補強で戦力アップした

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【補強成功と言える2クラブ】

 今冬で目立った大型補強を行なったクラブがいくつかあるなかで、まず挙げたいのはサンフレッチェ広島だ。

 放出ではゴンサロ・パシエンシアやピエロス・ソティリウ、ドウグラス・ヴィエイラなどに加え、青山敏弘の引退もあり、14人がOUT。それに対して加入は7人と半数だが、その一人ひとりのインパクトは強烈だ。

 昨季、J2に降格となった北海道コンサドーレ札幌から左ウイングバックの菅大輝を加え、昨夏に大橋祐紀がブラックバーン・ローバーズに移籍以降、FWの軸がなかなか定まらなかったところにジュビロ磐田からジャーメイン良を獲得。

 そして、松本泰志が抜けた中盤には、守備強度を大きく上げられる田中聡(湘南ベルマーレ)、さらに横浜FCから井上潮音を加えた。数は多くなくとも補強ポイントに対して、確実にチームをレベルアップさせられる選手たちの補強に成功した。

 とくにジャーメインの加入は、昨季の広島に足りなかったラストピースと言える補強だろう。稼働率が低かった外国人FWにとって代わり、戦力アップは間違いない。ただ、ストライカーや年齢層が上がってきたセンターバック(CB)のバックアッパーの薄さは気になるところ。一気に空いた外国人枠をこれからどう活用するのかは注目したい。

 そんな広島にも劣らない的確な補強に成功したのがFC町田ゼルビアだ。まずは昨季の主力であるFWオ・セフン、MF白崎凌兵、GK谷晃生らレンタル組を完全移籍で加えたことは大きい。

 そして、DFには札幌から守備の軸になれる岡村大八、ヴィッセル神戸から青森山田時代の黒田剛監督の教え子である菊池流帆、FC東京から両サイドバック(SB)に対応できる中村帆高を獲得。中盤のアンカーにアビスパ福岡から前寛之、前線には横浜F・マリノスの西村拓真と実力者を次々と加えた。

 昨季リーグ3位のチームを着実にスケールアップさせ、膨れ上がったスカッドの整理も遂行。クラブとして初めて臨むACLに向けて、2チームでターンオーバーできるほどの厚い選手層となった。今季も上位進出は十分に可能な戦力だろう。

【インパクトある補強をしたクラブ】

 続いて大きなインパクトを与えたのは浦和レッズ。柏レイソルからMFマテウス・サヴィオ、アルビレックス新潟からFW長倉幹樹、ベルギーのコルトレイクからMF金子拓郎と攻撃タレントを加えると、中盤には広島から松本泰志、町田から柴戸海がレンタルバック。DFは補強ポイントのひとつである左SBにディナモ・ザグレブから荻原拓也を呼び戻した。

 攻撃タレントの数は、既存の戦力と合わせればリーグ屈指であることは間違いない。一方で昨夏、アレクサンダー・ショルツがカタールへ移籍以降、質の低下が見られたCBは佐藤瑶大も名古屋グランパスへ移籍してより層は薄くなった。

 ブラジル人DFのダニーロ・ボザを獲得したが、いずれにしてもDFの補強はクラブW杯を戦う上でもマストであることから、今後の動向に注目だ。

 タレントが豊富にいるなかで、浦和はその駒をチームとして機能させることができるかが大きな問題である。昨夏、ペア・マティアス・ヘグモ監督を解任し、マチェイ・スコルジャ監督と再契約した。スコルジャ監督は前任期の鉄壁の守備をショルツ不在で再現できるか。これだけのタレントがいる以上、当然、上位に食い込んでくる期待は大きい。

 名古屋グランパスも数は少ないものの、チームのスタイルに合った選手や急務なところをピンポイントに補強した。最大の懸念だったのは守護神ランゲラックの移籍。そこにKAAヘントからシュミット・ダニエルを補強できたことはサポーターをひと安心させただろう。ただ、1月27日に右膝内側半月板損傷でチームを離脱したとのことで心配されるところだ。

 そして、FWマテウス・カストロが1年半ぶりに帰還。長谷川健太監督体制初期に猛威を振るったカウンターの脅威を取り戻し、得点力不足を解決できるか。昨季は失点数もややかさんだなかで、徳元悠平(FC東京)をレンタルから完全移籍で加え、原輝綺(清水エスパルス)、宮大樹(福岡)、佐藤瑶大(浦和)を守備陣に補強。カウンターの鋭さを当時のレベルまで取り戻せれば、2023シーズンのように上位争いに食い込める存在になりそうだ。

【移籍選手と既存選手の化学反応が楽しみ】

 鬼木達監督新体制となった鹿島アントラーズは、前線で主力を担った名古新太郎や仲間隼斗が離れたが、得点頭のレオ・セアラ(セレッソ大阪)を獲得し、荒木遼太郎をFC東京からレンタルバック。

 前線で鈴木優磨の負担過多のなかで、レオ・セアラの加入はとりわけ大きい。鈴木との2トップはリーグ屈指のコンビを予感させる。昨季とはスタイルの違う鬼木監督が、どうチームをまとめるかは現時点では未知数だが、どんな化学反応が起こるのか注目だ。

 アビスパ福岡も積極的に補強し、注目すべきクラブのひとつだ。前寛之、宮大樹、ドウグラス・グローリと主に守備的な主力選手を放出したが、V・ファーレン長崎からMF秋野央樹、横浜FMからDF上島拓巳、広島からDF志知孝明、町田からDF池田樹雷人など、十分な補填ができている。

 その上で、FWシャハブ・ザヘディの完全移籍、FW藤本一輝(町田)、MF名古新太郎(鹿島)、MF見木友哉(東京ヴェルディ)など、金明輝新監督のスタイルに合いそうな攻撃のタレントを積極補強。十分な陣容が整い、これまでの守備に重きを置いたスタイルとは異なるサッカーで躍進の可能性を感じさせる。

 昇格組のファジアーノ岡山もMF江坂任(蔚山HD)やDF立田悠悟(柏)ら積極的な補強を見せ面白い存在だ。

 今季は監督交代のクラブが多く、戦力の入れ替えだけではチーム力の判断は難しい。それでも多くの実力者が移籍を決断し、注目すべきクラブはいくつもあり、各クラブがどのようにスケールアップして開幕を迎えるのか楽しみだ。

後編「Jリーグ移籍状況で見る、今季苦戦しそうなクラブ」へつづく>>