今季のJリーグ開幕前の移籍状況を見ると、戦力の上積みが見られず苦戦が予想されるクラブがある。上位クラブに昨季の主力を引き抜かれていて、今後の補強や現有戦力でのチームマネジメントが必須だ(※移籍情報は1月28日時点)。前編「Jリーグ移籍状況で…
今季のJリーグ開幕前の移籍状況を見ると、戦力の上積みが見られず苦戦が予想されるクラブがある。上位クラブに昨季の主力を引き抜かれていて、今後の補強や現有戦力でのチームマネジメントが必須だ(※移籍情報は1月28日時点)。
前編「Jリーグ移籍状況で見る、今季躍進が期待されるクラブ」>>
横浜F・マリノスはブラジル人アタッカートリオが残留したが、守備陣の選手層は薄くなった
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【昨季の主力が抜けたクラブ】
大型補強が目立つクラブが多い一方で、戦力を失った側のクラブはその穴埋め、あるいは上積みの補強に苦戦している傾向にある。
今冬の補強で不安を感じるクラブのひとつが横浜F・マリノス。なかでもDFで上島拓巳(アビスパ福岡)、エドゥアルド(V・ファーレン長崎)、畠中槙之輔(セレッソ大阪)という主力センターバック(CB)を一気に3人放出した。
それに対して補強は、コロンビア人のジェイソン・キニョーネス、アルビレックス新潟からトーマス・デンのふたり。ただ、小池龍太(鹿島アントラーズ)、加藤聖(ファジアーノ岡山)らサイドのバックアッパーも移籍し、全体的に守備ラインの層が薄くなっている。
FWのアンデルソン・ロペス、エウベル、ヤン・マテウスという強力なブラジル人トリオが揃って残留したことはポジティブではあるものの、守備強度とトレードオフになりがちなのも懸念材料としてある。
昨季の62失点という数字は、それだけ見れば降格圏クラス。名門復権の鍵は守備の立て直しのはずだ。スティーブ・ホーランド新監督によって、どれだけ守備を整えられるか。
アーサー・パパス新監督となったセレッソ大阪も不安材料が目につく。そのもっとも大きな理由は、昨季21得点を記録した大エースであるFWレオ・セアラの鹿島アントラーズへの移籍である。
FWにはチアゴ・アンドラーデ、ラファエル・ハットンらブラジル人を補強しているが、穴を埋める存在になれるかは不明瞭。ジェフユナイテッド千葉へ移籍したCB鳥海晃司の代わりは、横浜F・マリノスから畠中槙之輔の獲得で補填できた。
MFカピシャーバ(清水エスパルス)やMF為田大貴(ジュビロ磐田)が離れたところもやや気になるところではあるが、21得点という得点源の穴をチームとしてどれだけ埋めることができるか。パパス監督にとって大きな試練だ。
【戦力補填が見られないクラブ】
アルビレックス新潟は松橋力蔵監督から樹森大介新監督に代わり、大きな転換を迎えている。そのなかで守護神の小島亨介が柏レイソル、CBの主軸であるトーマス・デンは横浜FMへと移籍し、昨季ブレイクしたFW長倉幹樹はユース時代を過ごした浦和レッズに凱旋した。
これまでも多くの主力を引き抜かれてきた新潟だが、抜かれていった戦力に対して、補強はJ1での経験や実績に乏しい選手たちばかり。レノファ山口で活躍したFW若月大和ら楽しみな選手はいるものの、トップチームの監督経験のない樹森監督の船出としては不安要素が大きいと感じる。
昨季との比較でやや不安を感じるのはガンバ大阪である。昨季は35失点というFC町田ゼルビアに次ぐ失点数の少なさで4位となった。
その鉄壁を中盤で支えたブラジル人MFダワンが、海外移籍のためチームを離脱。現時点でその穴埋めとなる補強はなく、攻撃においても戦力ダウンと言わざるを得ない。
さらに前線では昨季10得点と2ケタを記録し、ブレイクしたFW坂本一彩がベルギーのKVCウェステルローへ期限付き移籍。海外への流出自体に驚きはないが、G大阪としては非常に痛い戦力を失った。
ニュルンベルクからMF奥抜侃志を補強したが、坂本ほどのインパクトを残すことができるか。苦戦とまではいかないだろうが、ダワン、坂本の流出が今季のチームに少なからず影響することはあるだろう。
【相対的な戦力低下を感じるクラブ】
FC東京は昨季限りでブラジル人FWディエゴ・オリヴェイラが引退。7シーズンに渡ってチームを支えた大ストライカーを失った穴は、サガン鳥栖からマルセロ・ヒアンの獲得で埋められる目処は立った。
MF橋本拳人がエイバルから5シーズンぶりに復帰というのも大きな補強ではある。ただ、昨季のキーマンだったMF荒木遼太郎が鹿島アントラーズに復帰し、MF原川力が柏へ移籍したことを考えるとどこまでのプラスと言えるか。
また、DF木村誠二が鳥栖から復帰したことは守備陣の補強と言えるが、昨季のチームから上積みとなる補強ができたかと言われると正直そこまでではない。
浦和レッズやアビスパ福岡、名古屋グランパスなど、昨季の順位が下のクラブが軒並み補強に成功していることを考えると、相対的に戦力ダウンと言える。松橋力蔵新監督の手腕によってそれをプラスにできるか注目だ。
湘南ベルマーレは主力級の入れ替えは多くはなかった。しかし、MF田中聡が抜けた穴はあまりに大きい。アンカーでの守備能力の高さは国内屈指で、同等の選手を国内で探すのは至難の業だ。
補填として川崎フロンターレからMFゼ・ヒカルドを期限付きで獲得したものの、川崎で出場機会をあまり得られなかったことを考えると、田中という絶対的な存在の穴埋めとなれるかは疑問が残る。
今季の移籍状況を総括すると、チームへの影響力が非常に高かったレオ・セアラや田中聡のような選手が上位クラブへ引き抜かれ、昨季の上位グループの多くが補強に成功した。
戦力格差があまりないことがこれまでのJリーグの特徴だったが、今季はややそのバランスにも偏りが生まれてきたように感じる。
ここから相対的に見て戦力低下と感じるクラブが、どんな補強をするのか、あるいはチームとしてどう補っていくのか注目したい。