■「サステナブルなチームを作るために」 3シーズンぶりのJ1へ、清水エスパルスが動き出した。 1月8日に新体制発表記者会見が行なわれ、2025年シーズンのチーム編成が発表された。『サッカー批評Web』では反町康治ゼネラルマネージャー兼サッカ…
■「サステナブルなチームを作るために」
3シーズンぶりのJ1へ、清水エスパルスが動き出した。
1月8日に新体制発表記者会見が行なわれ、2025年シーズンのチーム編成が発表された。『サッカー批評Web』では反町康治ゼネラルマネージャー兼サッカー事業本部長にインタビュー。24年シーズンの振り返りから、25年シーズンを展望してもらった。さらには、20年4月から24年3月まで日本サッカー協会(JFA)技術委員長を務めた経験に基づいて、日本サッカーの現状や未来についても触れてもらった。
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「昨シーズンの清水エスパルスは、年間を通してある程度は安定して結果を出せたという評価です。5月、6月とアウェイで勝てない時期がありましたが、夏場にしっかりと勝点を稼ぐことができた。我々のチームはJ1でやってきた選手、ある意味で個が強い選手が多い。秋葉忠宏監督以下スタッフが、彼らをうまくまとめあげたと思います。
ただ、2位の横浜FC、3位のV・ファーレン長崎、4位のモンテディオ山形に勝っていない。昇格プレーオフを制した5位のファジアーノ岡山には連勝したけれど、6位のベガルタ仙台とは1勝1敗でした。上位チームからなかなか勝点を取れなかった原因が、どこにあったのかをしっかりと精査して、リニューアルされたチームにしないといけない。たとえばコーチを入れたりして、新しい息吹を入れてチームを運営していく」(反町GM、以下同)
反町GMの言葉どおり、コーチングスタッフには前FC岐阜監督の上野優作コーチをはじめ、3人のスタッフが加わった。また、トップチームとアカデミーの融合をより進めるために、市川大祐トップチームコーチがトランジションコーチに肩書を変え、トップとアカデミーの両方の練習に参加する。
トップチームの編成では、期限付き移籍だったCB住吉ジェラニレショーン、CB蓮川壮大、MF宇野禅斗を完全移籍で迎え入れた。20年から背番号10を背負ってきたカルリーニョス・ジュニオは、現在も交渉中という(1月8日の記者会見開催時点の情報)。
新加入選手は10人を数える。高卒及びユースからの昇格が計4人、国内外の他クラブからの獲得が6人となっている。
「僕自身の立場で言うと、サステナブルなチームを作らなければいけない。昨シーズンのメンバーを見ると、スタメンや18人の平均年齢はほぼ28歳から29歳です。20歳以下でスタメンに定着していたのは、夏に期限付き移籍で加入した宇野だけだった(現在は21歳)。サッカーには経験値が必要だけれど、新しい力、若い力を呼び込まないと。それは我々の仕事でもある。
昨シーズンのJ1第37節、サンフレッチェ広島は18人のメンバーのうち9人がホームグロウン選手(※自前で育成された選手)でした。そのうち6人がスタメンです。自前で選手を育てながら、24年は2位、23年と22年は3位と、結果が伴っている。それは評価されるべきことです。
昨シーズン昇格1年目だった東京ヴェルディも、18人の平均年齢がほぼ25歳台で6位に食い込んだ。我々はエスパルスウェイとして自分たちの道を作っていくけれど、色々なところにヒントがあります。
今シーズンは大卒の選手は取っていなくて、昌平高校からGK佐々木智太郎、大津高校からMF嶋本悠大、ユースからの昇格でMF西原源樹、MF小竹知恩が加わりました。彼らはクラブにとっての宝物で、数年後に主軸になってもらうように、しっかりと育てていく。それがサステナブルにつながっていきます」
■JFA技術委員長と清水エスパルスGMの共通点
反町GMはJFA技術委員長在任時には、「目前の勝利を目ざしつつ、5年後、10年後のサッカー界」を見据えた。その詳細は昨秋発売の著書『サッカーを語ろう 日本サッカー協会技術委員長1457日の記録』(小学館)に書き込まれているが、「仕事のスタンスとしては、現在も大きくは変わらない」と反町GMは言う。
「JFAの技術委員長としては、目前の試合に勝たなきゃいけない、 次のワールドカップで勝たなきゃいけないのと同時に、4年後、8年後、12年後のワールドカップを考えていました。そうした代表強化に加えて、選手育成、指導者養成、普及を同時進行させていった。
エスパルスでもトップチームだけでなく、指導者をどうするのか、次シーズンの選手獲得をどうするのか、アカデミーの強化方針をどうするのかといったことを、昨年5月の就任時から進めています。
その仕事を広義で捉えると、静岡県のサッカーの発展にもつながっていく。県内にはエスパルス、ジュビロ磐田、藤枝MYFC、アスルクラロ沼津と、Jクラブが4つある。この4チームで若手選手中心のリーグ戦をやれないだろうか、との構想を描いています。
JリーグのUー21リーグ構想に反対するといったわけではなく、もっと物理的に近いところで若い選手の出場機会を増やそう、緊張感のあるゲームをしよう、ということです。
かつてFC東京、ガンバ大阪、セレッソ大阪が、U-23チームを作ってJ3リーグに参戦した時期がありました。その当時試合に出ていた堂安律や久保建英が、現在の日本代表の主力になっている。真剣勝負から学ぶものはある、ということです」
25年シーズンの目標について、清水エスパルスの山室晋也代表取締役社長は「確実に10位以内に入りたい」と記者会見で明かした。反町GMは「J1の各クラブの経営規模を考えると、少なくともそこは目ざすということです。当然ながら、シーズン中に上方修正できるように」と補足する。
「昨シーズンのJ2全日程終了後、J1の試合へ足を運びました。スピード感、デュエル、インテンシティは、J1とJ2ではやはり差があると感じました。我々はJ2で2シーズン戦って、J2に慣れてしまったところはある。それは否めないので、今シーズンの開幕時点でJ1とのギャップがないところまで持っていくことが大事です。そういう認識のもとで、覚悟を持って準備していく。現場に対して注意喚起をしていきます。
J1リーグを見ていて感じるのは、縦に速いサッカーを目ざすチームが増えている。それについては、メディアにも指摘したいことがありますね」