【写真提供=WBSC】侍ジャパンの優勝で幕を閉じた第2回WBSCプレミア12 WBSCプレミア12の第二回大会が幕を閉じた。 侍ジャパンが、最大のライバルで前回優勝国である韓国と決勝戦を戦ったことで、大会のクライマックスは大いに盛…

【写真提供=WBSC】侍ジャパンの優勝で幕を閉じた第2回WBSCプレミア12

 WBSCプレミア12の第二回大会が幕を閉じた。

 侍ジャパンが、最大のライバルで前回優勝国である韓国と決勝戦を戦ったことで、大会のクライマックスは大いに盛り上がった。決勝は「技の日本」と「力の韓国」という通常の国内リーグ戦の特徴があらわれ、侍ジャパンの「技」が韓国の「力」を上回ったかたちになった。

 様々な報道を見る分には、日本の「技」を韓国が上回るにはまだまだという論調が多かったが、果たしてどうだろう。
「技」は意識づけや練習で比較的短い期間でついていくのではないだろうか。韓国に負けないフィジカルを日本がつけていく方が時間がかかるのではないか。

【写真提供=WBSC】韓国打線のパワーは日本のそれを上回るだろう(決勝で先制HRを放ったキム・ハソン)

 韓国だけではない。台湾はホームラン攻勢で韓国をスーパーラウンドで下しているし、3位決定戦では、マイナーのプロスペクト相手に万事休すかと思われたメキシコが、9回裏の土壇場からホームランで試合を振り出しに戻し、延長10回にサヨナラ勝ちを収め、オリンピックの切符を掴んでいる。

【写真提供=WBSC】台湾は国内リーグの「お家芸」である猛打で韓国を打ち破った。

 短期決戦を制するには一挙に試合をひっくり返す打力は非常に強力な武器になる。各国は確実にフィジカル面を高めてきている。東京オリンピックに向けて、侍ジャパンもこの部分を克服する必要があるだろう。

 大会全体を通して感じられたことは、各国の力の差がなくなってきたことに尽きる。先述した台湾・韓国戦や、前回大会に出場ならなかったオーストラリアが優勝候補のアメリカを下したことは、ある意味メジャーリーガーの参加しないこの大会の醍醐味とも言える。

 【写真提供=WBSC】アメリカ代表には将来のメジャーリーグのスター候補、ジョー・アデル(エンゼルス)らプロスペクトが集った

 しかしそのアメリカも、出場した選手の多くは将来のメジャーリーグのスター選手だった。150キロ後半のスピードボールを投げる生きのいい投手に、外野手の広い守備範囲、そして甘いボールは簡単にスタンドへもっていく長打力に野球の母国・アメリカの層の厚さを感じずにはいられなかった。

 また今シーズン、メジャーリーグの試合にも出場していたベテランキャッチャー、エリック・クラッツの座ったままの二塁への矢のような送球に「メジャー」を感じたファンも多いはずだ。そういうアメリカであっても、簡単には勝てなかったのは、WBCやオリンピック、そしてプレミア12を通じて各国のプロ選手がしのぎを削った結果、世界野球全体のレベルが上がったからだろう。

【写真提供=WBSC】メジャーへの人材流出に悩まされるキューバは、元巨人のベテラン、フレデリック・セペダをクリンナップに据えねばならないほど新陳代謝が進んでいない

 その一方で、かつて国際大会の主役を演じていたキューバの凋落は多くのファンに衝撃を与えたのではないか。オープニングラウンドでの1勝2敗、その勝利も1点差の辛勝という結果に、かつて国際大会を席巻した姿はもはやなかった。

 世界野球界は、いまや「戦国時代」に進みつつある。侍ジャパンがここ数年、各国とテストマッチを行ってきた結果、各国に代表チーム強化の機運が芽生えてきたことは間違いない。前回は不参加さえささやかれたメキシコが、ここ数年、代表チームに力を入れ、その結果が今回の3位という結果につながったことはその証といえるだろう。今後、侍ジャパンが国際大会を勝ち抜くことは難しくなっていくだろうが、そのことは世界野球全体から見れば、喜ばしいことなのである。

 ただ、欲を言えば、世界野球の発展にはMLBの存在は欠かせない。マイナーのプロスペクト中心はそれでもいいのだが、MLBはメジャー契約の選手の出場を「禁止」するのではなく、せめて選手個人の判断に委ねる、あるいは一定年齢以下の選手の参加を認めるなどすべきだろう。

 現在の「MLB一強」状態は野球界全体の発展には決してプラスにはならない。「アメリカファースト」からMLBが脱却し、野球を真のグローバルスポーツにしていくことが、今後必要になるのだろうが、それがいまだ現実にならない以上、今しばらくは、「世界一」となった侍ジャパンが旗振り役となって、このプレミア12という国際大会を引っ張っていく必要がある。

 ともかくも、MLBが選手を出さない方針である以上、東京オリンピックも各国同等の顔ぶれで臨んでくることは間違いない。金メダルへの道は侍ジャパンにとって茨の道になるだろうが、悲願に向けての旅はすでに始まっている。

文=阿佐智