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 2年前の夏、第99回全国高校野球選手権大会で花咲徳栄は甲子園で全国制覇を達成した。その瞬間を学校のパブリックビューイングで見ていた、同校女子硬式野球部の選手たち。「私たちも、それに続かなくては」と、誰もがそう心に思いながらの練習が始まった。そうして迎えた最後の夏、まだまだ歴史は浅い女子高校野球だけれども、野球への思いは熱い女子たちだ。そんな花咲徳栄女子硬式野球部を訪ねた。

 同部からは、女子プロ野球に寺部歩美捕手、松谷比菜乃投手(愛知ディオーネ)、太田あゆみ選手、御山真悠選手(埼玉アストライア)などを輩出している。また、埼玉アストライアの大山唯監督も地元の尚美学園大を経ているが花咲徳栄出身である。

花咲徳栄・斎藤玲さん

 現在、チームの主将を務める斎藤玲さんは秋田県出身。本荘南中時代には野球部に所属し、高校でも野球を続けたいと思い、花咲徳栄に進学した。父親が本荘時代に甲子園出場、兄も本荘で野球をやっていたという野球一家で育っている。それだけに、「自分も高校で野球を続けたい」という思いは強かった。そして選んだのが恵まれた環境を持つ花咲徳栄だった。

 入学した年に野球部が全国制覇したことについては「もちろん、刺激になりました。私たちも、もっと頑張らなくては…。一生懸命やろうと思いました」と、その思いを語っている。

3年生になり、主将として最後の夏を迎える斎藤さんだが、「最初は、私に主将なんて無理だと思っていましたが、みんなが協力してくれました。それまでは自分のことだけで精いっぱいだったのに、最近は周囲を見ながら、自分も成長出来ているのだなと感じることがあります」

また、高校生としての自分自身に関しては、こう話す。
「寮生活を含めて、独りで生活していくことで自立する気持ちが出来たと思います」

花咲徳栄投手陣、左から出路明日香、吉岡美咲、片野坂梨音

 3年生エースの片野坂梨音(かたのさか りね)さんは、小学校3年生のときに、祖父が監督を務めていた少年野球チームに誘われたことが野球との出会いだった。小学生の時は投手兼三塁手。中学の野球部では投手を中心に、他のポジションもこなした。

「小中学校の時は男子の中に交じってやっていましたが、高校に入って初めて女子だけのチームという形で最初は少し戸惑いというか、女子同士の独特の悩みみたいなのもありました。だけど、今は最後の夏に向けて悔いのないようにやっていきたいです」

 こう語るように、夏への思いは強い。春は2年生ばかりの新しいチームに敗れたということもあって、その悔しさは一入だ。

「やっぱり、リベンジを果たさなくては(高校野球を)終われません。そのためには、その相手と当るまでは負けるわけにはいかないんです」

 女子高校野球は日本高校野球連盟の管轄下ではないため、高校野球のような規定や縛りもない。最近では”女子硬式野球専用バット”が登場するなど、徐々にその普及率を広めている。使う用具も男子と比べて華やかなものになっており、用具をピンクで統一している選手もいるという。
 
 しかし、普及してきたとはいえまだまだ歴史の浅い女子高校野球。全国でも女子野球部のある学校は限られている。それだけに、受け入れ側としては、希望する生徒は積極的に受け入れられるようにしていきたいところだ。

 「長年関わっていますと、やはり思いはどんどん強くなっていきます。もっと普及して欲しいという気持ちもあります。その一方で、野球をやってきた子たちのその後のことも考えてあげなくてはいけません。そうした受け皿も、もっと充実していってほしいし、そうさせていかなくてはいけません」とは阿部監督。

 女子野球自体が、まだこれからとも言える競技である。
 そんな中でも、「もっと華やかなものに」「もっと夢のあるものに」していこうという、指導者たちの試行錯誤を感じた。また選手たちも、男子の高校野球に決して劣らない情熱を持って、日々の練習に取り組んでいる。

夏の甲子園より一足先に始まる、彼女たちの夏。そこでは男子の高校野球とは一味違った、でも同じように熱い戦いと、青春の一ページが観られることだろう。

取材・手束仁
撮影・WoodStock