ふがいない。その一言に尽きる。   試合前の練習で、いつもに比べてナイスピッチが出ないなと感じていた。ナイスピッチはリリースの際に1/60秒のタイミングでボタンを押すと着弾点の表示がほんのわずか遅くなり、球威も若干上がるゲーム内の仕様だ…

 ふがいない。その一言に尽きる。 

 試合前の練習で、いつもに比べてナイスピッチが出ないなと感じていた。ナイスピッチはリリースの際に1/60秒のタイミングでボタンを押すと着弾点の表示がほんのわずか遅くなり、球威も若干上がるゲーム内の仕様だ。要はこのナイスピッチを多く出せば、それだけ打たれにくくなるということになる。 

 試合に入ってからもナイスピッチが出なかった。相手は高い打撃技術をもつ高良(プレイヤーネーム:えぞひぐま)選手。さらに長打を狙える能力の選手が揃っているスワローズを操っている。打たれることを恐れながら試合に入っていた。 

 初回、先頭の青木選手を四球で歩かせてしまうと、続く山田選手には甘く入ったストレートをセンター前に運ばれて早速ピンチを招いた。バレンティン選手は内野ゴロに打ち取るもゲッツーが取れず、1死2,3塁。打席に入った村上選手は好調で多少カーソルがズレてもスタンドインできるくらいの能力に上がっている。続く雄平選手は左投手とチャンスに弱い特殊能力で打力は通常よりも下がる。1塁は空いている。ゲッツーでのチェンジを狙って満塁策を取ったが、これが裏目に出てしまった。甘く入ったストレートを振り切られて満塁ホームラン。最悪の結果になってしまった。3回にもソロホームランを浴びて、5点を失った。 

 こちらは3本のホームランで4点挙げたが、1歩及ばず4-5で敗戦。初回の先頭打者への四球で勝負は決まっていたのかもしれない。 

 私の弱気な部分が伝染してしまったのか、2試合目の新井(みかん)選手も初回のピンチで絶好調のバレンティン選手を申告敬遠で歩かせた直後に手痛い1発を浴びるなど、序盤で6失点。その後は「打たれてもいい」くらいの気持ちで投げると無失点に抑えていた。私にしても新井(みかん)選手にしても、初回に弱気になっていなければ勝利に近づいていたと思う。 

 1ヶ月近く勝ち星がないまま続いていた悪い流れを断ち切ってくれたのがエースの脇(みぞれん)選手だった。これまでミート打ちの割合が多かったが、この試合ではほとんど強振で攻めていた。これが功を奏して、同点で迎えた最終回のチャンスでライトオーバーのツーベースを放ち勝ち越し。連敗を止める待望の勝ち星を挙げてくれた。 

 3連敗していたらCS争いからも離脱しかねない状況で、エースがギリギリでチームを踏みとどまらせてくれた。3位まで2ゲーム差で残り6試合。厳しい戦いを強いられることになるが、エースの強気な姿勢がチーム全員の腹を括らせてくれた。もう勝つしかない。絶対に逆転してCS進出を掴み取ってみせる。 

文・菅原翔太(eBASEBALLプロリーグ2019シーズン中日ドラゴンズ代表選手・キャプテン)