見返りを求めず、無心で誰かに尽くした経験はあるだろうか。

三浦数馬監督の指導のもと、リング上で「元気にパンチを繰り出すこと」をモットーに戦い続ける戦士たちがいる。関東大学リーグ1部リーグ戦において、今年創部史上初のリーグ優勝を成し遂げた東洋大学ボクシング部だ。今回は鉄紺のチャンピオンを“支える人たち”に迫った。

「人を支えることが今の役割なので、経験を活かして将来も誰かを支えていきたい」

※選手にボクシンググローブをつける小林マネージャー。選手のサポートだけではなく、試合の入場曲の選定なども手伝う

現在、唯一の女子マネージャーとしてチームを支えているのが、2年生の小林マネージャーだ。小学6年生まではタイに住んでおり、周囲に経験者が多い環境の中で自然とボクシングに携わりたいと思うようになった。しかし、東洋大学ボクシング部はマネージャーを募集していない。その中でボクシングへの熱意を示し入部が決まったが、決して楽なことばかりではなかった。「昨年は上級生マネージャーがおらず、1年生の自分1人で業務をこなすのが本当に大変だった。辞めたいと思ったこともあったけれど、OBの方や選手に認めてもらえるようになって、今では続けてきて良かったと思っている」。リングには上がらないが、部の一員として選手が試合に勝てばともに喜び、負けた時は悔しさを分かち合う。ボクシングと東洋大学ボクシング部を愛する気持ちが、彼女の最大の武器だ。

「いつか選手に復帰した時、今のマネージャーとしての経験が絶対に唯一無二の武器になる」

※選手にドリンク補給する村上マネージャー。観客に近い立場から試合を見ることで、様々な収穫があると感じている

村上マネージャーは元々選手として入部したが、けがを理由に一時的に競技を離れ、マネージャーを務めている。「普段のサポートだけではなく、他の大学の選手たちをマネージャーという第三者の視点から見ることで色々なことを吸収できる。選手復帰した時には、勝利でもチームに貢献したい」と、目を輝かせる。競技はできなくても、そこから前向きに学ぼうとする姿勢は忘れない。自分が選手に戻った時にどんな強みがあるか、常に考える。誰よりも早く練習場に来て、今できることに精一杯取り組む村上。マネージャーを経験した選手という無類の経歴は、彼をさらに強くしてくれるはずだ。

最後まで誰ひとり諦めず、悲願を達成した鉄紺のチャンピオンたち。木村蓮太朗主将をはじめ、日頃の地道な練習を大切にする実直な彼らの姿勢がもたらした結果だ。そして、その陰にはボクシングを愛し、選手たちとは違った視点からチームの勝利を考え、支える人たちがいた。今回の優勝は、まさに選手やスタッフが一丸となって達成したものだ。次は挑戦から防衛へ。多くの大学に追われる立場に変わった中で、彼らの新たな戦いが始まろうとしている。

東洋大学ボクシング部(とうようだいがく・ぼくしんぐぶ)
1961(昭和36)年創部。関東大学ボクシングリーグの1部リーグに所属する。50年以上の歴史の中で、須佐勝明選手や村田諒太選手など、数々のA級ライセンスボクサーや五輪代表選手を輩出してきた。2019年に創部史上初となるリーグ制覇を成し遂げ、大学ボクシング界に新たな歴史を刻んだ。