全米オープン開幕を控え、オークモントでは156名の選手たちが練習ラウンドを積んでいる。オークモントは113年前に英国リンクスを模して造られた名門コース。全米オープンの舞台になるのは今年が9度目になる。

2007年の前回大会を制したアンヘル・カブレラの優勝スコアが5オーバーだったため、今年も「オーバーパーは必至」「史上最難関の全米オープンになる」と恐れられている。世界ナンバー1のジェイソン・デイは18歳のときに現マネージャーに連れられてオークモントに来たことがあるそうだ。

「ここはマネージャーにとって裏庭みたいなコース。だから僕にとってもホームコースみたいな感じがする」だが、それは懐かしさを覚えるというだけの話で、ホームコースのように隅々まで熟知しているという意味ではない。2007年大会のとき、デイはまだ米ツアーに辿り着いてもおらず、“全米オープンのオークモント"がどんな姿になるかはデイにとっては未知の世界だ。

先週末に現地入りして練習を重ねてきたデイは「とにかく難しい」を繰り返した。「スタートホールとなる1番と10番は難しい。3番、9番はものすごく難しい。フェアウエイバンカーにつかまったらグリーンを狙うのはノーチャンス。その意味でフェアウエイキープこそが大事なカギになる」

昨年は3日目に持病のめまいを発症し、肉体的に戦い抜くことができなかった。今年は風邪をひいているそうだが「初日までには絶対に体調を整える。全米オープンはストレスとの戦いだけど今年は戦い抜ける」と自信も示した。「心」も「体」も準備は万端。残るは「技」の部分のみ。しかし、オークモントは「とにかく難しい」と、デイは警戒しきりだ。

一方、昨年大会の覇者、ジョーダン・スピースのオークモントに対する印象はデイより、かなり楽観的だ。スピースは5月にオークモントで27ホールの練習ラウンドを済ませた上で先週末に現地入りした。「6週間前に回ったときは確かにイーブンパーならグッドスコアという状態だった。でも今週はかなり状態が変化している。今のほうがスコアを作りやすい。バーディーを狙えるホールもいくつかはある」

全米オープンでは練習日と試合で、あるいは試合の4日間の中でも、ティの位置やホールの長さ、グリーンの固さや早さが様変わりする。それゆえ、最悪の場合を想定するか、それとも楽観的に眺めるかによって、コースの印象や試合の見通しは大きく変わる。さらに言えば「優勝スコアが5オーバー」という極限状態が、まだ選手たち自身にも想像できず、実感できず、だから詰まるところ「やってみないとわからない」という手探り状態なのだ。

日本の期待を背負う松山英樹は今年の5月末にオークモントの18ホールを回り、先週金曜日に現地入りしてからは土日月で合計38ホール(11+18+9)を回った。メジャー大会に臨む準備としては「いい状態かな」と言いながらも、コースの難しさやスコアの予想は「どうでしょうね」「わからないですね」となる。難しいのは難しい。そこはデイと同意見。だが、スピースが言ったようにバーディーが狙えるホールもあるのかと問うと「うーん。どうなのかな?」と首を傾げる。

 

「出たとこ勝負です」

 

そう、最終的に辿り着いた結論は実にシンプル。今年のオークモントがどんな牙をどれぐらい剥いてくるかは、試合が始まるまでは選手たちにさえわからない。だからこそ、出たとこ勝負。勇気と心臓の強さがモノを言う。そんな全米オープンになりそうだ。

文・写真/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)