「選抜第5日」 国学院栃木-延岡学園  国学院栃木に敗れ、ベンチ前に整列する延岡学園ナイン=甲子園【写真提供=共同通信社】

今大会で唯一のプロ野球出身監督は延岡学園の三浦正行監督だ。
第2試合で国学院栃木と対戦した。
1点を先行された1回裏、四球とヒットで1点を返し、5番の工藤はレフへの3ランホームラン。4回は3安打を集めて2点を追加した。

しかし5回、エース、上野元基の球威が落ち、二つの四死球と4安打で同点に追いつかれる。続く6回、国学院栃木の先頭の7番打者に初球をホームランされて勝ち越しを許し、死球と安打でさらに1点。8回も2ランが出て、9対5の逆転負けになった。センバツ初勝利のお預けで、三浦監督にとっても、ほろ苦い甲子園の初戦になった。
 

三浦監督は雪国、秋田生まれの66歳。キャッチャーとして秋田市立高校(現秋田中央)から旧電電北海道を経て、1974年にドラフト6位で大洋に指名され、75年に入団。現役を6年で終え、引退後はトレーニングコーチ、バッテリーコーチを17年間、務めた。その後もタイ、韓国、中国でも指導をした。学生野球資格回復制度の1期生として60歳の時に資格を取得した。延岡学園の監督に就任したのは2017年の9月で、つい先日のことだ。
 

一宮淳部長が言う。
「うちとのご縁は、元をたどればソフトバンクホークスの内川選手(元横浜ベイスターズ所属)が延岡の隣の日向で自主トレをやっていたことです。そこに監督も手伝いにきていて。また、うちの弓道部の先生がそこと繋がったんです。バッティング指導をしてもらえないかと。監督としたら、びっくりだったでしょうね。家は秋田にあるんで、単身赴任です。寮で選手と一緒に生活しています」

夏からのこの短い期間で打撃力が上がり、甲子園に出るまでになった。
プロ注目の大型ショート、4番の小幡竜平が言う。「監督がきてバッティング練習の時間が8対2の割合に増えた。振って力をつけろ、と言われてロングティーも1キロのマスコットバットで振っています。飛距離もアップしました」
外野手の柳川昇嬉も続ける。
「監督の個々へのアドバイスで良くなったことがたくさんある」

去年の秋の九州大会は大分の明豊と10対6という打撃戦を制したり、公式戦の1試合平均得点は9・5点。打線に切れ目がなく、九州大会3試合の15得点のうちの13点を下位打線で挙げた。三浦監督は「選手の表情が変わったと周りの人は言ってくれるんですが、波長が合ったんでしょうね。常に褒めてます。九つの悪いことより、一つの良いことを言うようにしています。私が試合をするわけじゃない、選手が試合をするわけですから気分良く、のびのびやりなさいと。それはプロも同じ。お金を自分で稼ぐわけですから、自覚を持ってやらないといけないので」。自主性に任せる指導が信条だ。

高校野球の難しさもあった。先発上野をひっぱり過ぎたことだ。5回で5対5。6回の先頭打者の初球ソロホームランを防げていたら。ここでスイッチしたわけだが、遅かった、と悔やんだ。「同点まではいいと思ってましたが、そこで代えるべきでした。あるいは5回、先頭がツーベースで出て、そこで代えてもよかった。球威も落ちていたし。もっと早く気づいてやるべきだった。ただ、うちのエースなんでね。プロならリリーフがいるんでスパッと代えられるんですが。私の判断ミスです。上野はよく、投げてくれました」

高校野球でエースの降板は敗色濃厚の大きな局面を意味する。対する国学院栃木は初回のみで2番手に代えている。「ああいうふうにできればよかったんですが」と羨ましさものぞかせた。センターでキャプテンの椿春塁、ピッチャー・上野、キャッチャーの松林剛史らベンチ入りでは6人が同じ門川中学の出身。全国中学校大会で春夏連覇したメンバーで地力はある。

三浦監督の高校野球生活は1年も経っていない。
「甲子園、初めてここでやれて、感動しました。ぜひ、夏にまた来たい」
 (文・清水岳志)