サッカーU-17日本代表が、年代別ワールドカップの出場権を手に入れた。だが、手放しで喜べることではないと、サッカージャーナリスト後藤健生は言う。A代表以外、年代別の日本代表がアジアで苦戦しているのには、若い世代の日本代表に共通する、ある「…
サッカーU-17日本代表が、年代別ワールドカップの出場権を手に入れた。だが、手放しで喜べることではないと、サッカージャーナリスト後藤健生は言う。A代表以外、年代別の日本代表がアジアで苦戦しているのには、若い世代の日本代表に共通する、ある「問題」があるという!
■連覇を狙うも「ベスト8」で敗退
サウジアラビアで行われたU-17アジアカップ準々決勝で、大会連覇を狙っていたU-17日本代表はサウジアラビアと対戦。2対2の引き分けに終わり、PK戦で敗れてベスト8での敗退に終わった。
U-17ワールドカップ(11月、カタール)出場権獲得という最低限の目標だけは達成したものの、これはいくつかの幸運によるものだ。
一つには今年の大会からワールドカップの出場国が48に拡大され、アジア枠も8か国に増えていたからだ。従来の方式なら、準々決勝敗退ではワールドカップ出場権は獲得できなかった。
また、日本はグループリーグで1勝1分1敗の勝点4にとどまり、アラブ首長国連邦(UAE)、オーストラリアと並び、得失点差で首位に立った。最終戦ではオーストラリアに完敗しており、同時刻に行われていた試合が引き分けに終わるという幸運に救われた形だった。87分にUAEが同点に追いついてくれたおかげで、辛うじてワールドカップ出場権が転がり込んできたのだ。
日本は、今大会で4試合を戦って1勝2分1敗という結果に終わった。ワールドカップ出場権を獲得できたことは、多分に幸運によるものだった。
サウジアラビア戦は、たしかに相手は開催国であり、乾燥したピッチ・コンディションにも慣れていたこととか、サウジアラビアがグループリーグ最終戦から中3日で日本が中2日だったことなど不運な面はあった。また、日本はグループリーグ突破が最終戦までもつれ込んだため、ターンオーバーができず、準々決勝で大幅にメンバーを入れ替えざるをえなかったことも影響しただろう。
だが、後者の条件は、日本チーム自身が招いてしまった悪条件だった。
■大会参加国の中で「最高の質」も…
日本の選手の質的に劣っていたというのなら、苦戦も仕方がない。だが、選手個々のクオリティーという面では、日本はおそらく大会参加国の中で最高の質を備えていたと思われる(全チームを見たわけではないので、なんとも言えないが)。
たしかに、対戦相手国には非常にスピードがある選手とか、日本選手のプレスを回避してパスをつなぐ技術を持つ選手。フィジカル能力に優れたDFなどがいた。
だが、選手の平均的な水準を比べれば、少なくとも日本チームが対戦したどのチームよりも日本の選手のほうが上だった。
パスを受ける前の体の向きとか、受ける瞬間のちょっとしたフェイントモーション、ファーストタッチでのボールを置く位置。スペースを見つけて、そこに入り込むクレバーさとか、スペースに正確にボールを送り込むパスの技術……。
やはり、Jリーグの下部組織などで育てられてきた日本選手のクオリティーは、アジア各国の追随を許さないものがある。
だが、それが「結果」に結びつけられなかったのだ。
■オーストラリア戦「内容的」に完敗
より具体的に言えば、せっかく中盤での守備力でボールをうまく回収して、パスをつないでボールを保持し、サイドもうまく使って相手陣内までボールを持ちこむこともできているのに、それがゴールに、あるいは決定機に結びつかないのだ。
初戦のアラブ首長国連邦(UAE)戦こそ、攻撃陣が噛み合って4対1と快勝した日本。第2戦でもベトナム相手に早い時間帯(13分)に吉田湊海が先制し、その後もボールを握って優勢に試合を進めながら2点目が取れず、後半のアディショナルタイムに追いつかれてしまった。
ベトナム戦で順当に勝利しておけば、その時点でグループリーグ突破(ワールドカップ出場権)が決まり、3戦目のオーストラリア戦では思い切ったターンオーバーができていたはずだが、そんな目算がすべて狂ってしまった。
オーストラリア戦でも、日本はCKからDFの藤田明日翔が巧みなシュートを決めて7分に先制する。だが、その後、何度かチャンスがあったものの、決めきることができずに、後半に入るとオーストラリアに押しこまれて3失点。最後に谷大地が決めて1点差としたものの、内容的にも完敗という結果に終わってしまった。