NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25ディビジョン3 第12節2025年4月12日(土)12:00 AGFフィールド (東京都)ヤクルトレビンズ戸田 14-68 クリタウォーターガッシュ…

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第12節
2025年4月12日(土)12:00 AGFフィールド (東京都)
ヤクルトレビンズ戸田 14-68 クリタウォーターガッシュ昭島

敗戦の中にも見えた光。「共有すべきビジョンがようやく見えてきた」チームの確かな成長


前半24分、髙橋拓行選手(14番)のトライを祝福するヤクルトレビンズ戸田の選手たち

前半は拮抗した展開だったが、後半から畳み掛けたクリタウォータガッシュ昭島(以下、WG昭島)がトライを重ねた。WG昭島の中尾泰星キャプテンが「練習から各自がやるべきことに明確に取り組めている」と振り返るとおり、チーム状態は良好そのもの。これで5連勝を達成。上位を猛追する。

一方、大差で敗れたヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)だが、収穫が見えたゲームでもあった。もちろん、一転してフィジカルコンタクトで圧倒された後半の戦いぶりについて誰もが反省を口にした。だが、一方で誰もが同じようにポジティブな側面を感じ取っていた。前半に奪ったトライの形だ。

前半24分に奪ったトライは、素早くサイドへ展開し、相手を引き寄せつつ、テンポよく何本もパスをつないで相手ディフェンスを剥がし切ったもの。L戸田が信条とする“クイックアタッキングラグビー”を体現したものだった。このトライとその後のコンバージョンゴールで同点としたことで前半をタイトなゲームに持ち込んだ。

今季、リーグワンに初参戦したL戸田はなかなか勝利をつかめずに苦しい時期を過ごしてきたが、一つの課題は、相手陣内に押し込んだときにトライを奪い切れないことにあった。その長いトンネルの出口がようやく見えつつある。

「ここ数試合は意図した形からトライが取れるようになってきているんです」

前述のトライに関わった白井吾士矛がそう言及し、こう続ける。

「以前までは、すべてのフェーズでトライを奪いにいって空回りしたところがありました。そうではなく、自分たちの形を作るフェーズがあり、その形ができてからトライを狙いにいく。今季も3巡目になっていますが、共有すべきビジョンがようやく見えてきたと思います」

白井、そして沢村舜とつながり、回ってきたボールをトライにつなげた髙橋拓行もこう話す。

「勝利した前節も『自分たちのアタックをすればトライが取れる』という感触はつかめていました。課題は、試合を通じて継続できるか。キツい時間帯に個々ではなく、チームとしてアタックする精度を高めていければ、上位相手にも勝ちが見えてくると思っています」

L戸田はここまで試行錯誤しながら自分たちのラグビーを懸命に突き詰めてきた。リーグワンのレベルの高さをかみ締めつつ、“俺たちも十分に戦える”、という気概を見せてきた。試合後、白井は顔を上げてこう言った。

「前半は十分にやれるという感触がありましたが、後半は近場の戦いで相手に差し込まれ、ペースをもっていかれました。そこはまたやり直すしかないです」

残り3試合も消化ゲームにするつもりはない。自分たちのラグビーの精度を引き上げ、今季を締めくくる。

(鈴木康浩)

ヤクルトレビンズ戸田


ヤクルトレビンズ戸田の河野嵩史ヘッドコーチ(左)、多田潤平 共同キャプテン

ヤクルトレビンズ戸田
河野嵩史ヘッドコーチ

「まずはクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)さん、ありがとうございました。試合に関しては、われわれはまずコンタクトエリアの部分では絶対に負けないことを一番意識してやってきました。前半はそれができたと思いますし、アタックに関しても最後にミスで終わってしまうシーンはありましたが、トライまで行けたところは一つの収穫だと思います。ただ、後半に連続でトライされてしまい、(集中が)切れてしまったことが一番大きな課題です。次戦のマツダスカイアクティブズ広島戦に向けて修正していきたいと思います」

──前半は拮抗した試合ができていましたが、後半に一気に崩れてしまった要因をどう考えますか。

「格上のWG昭島さん相手に前半から120%の力を出し切ってやっているところはあります。ハーフタイムに一度休んだあと、WG昭島さんはおそらくボーナスポイントまで狙わないと入替戦出場が見えてこないという状況もあり、それが後半の立ち上がりにおいて両チームの差として出てしまったのかなと思います。若干システムのところで気を抜いてしまったところがあり、そこでラインブレイクされて取り戻せなかったと思います」

──前半に関しては、最初のトライに至るまでの展開のテンポもよかったと思います。どうご覧になっていましたか。

「われわれはクイックアタッキングラグビーを信条として掲げてやっています。いかにハイテンポで、パスも多く、オプションも多く用意する中でトライを取っていけるか、それを信条にしていますので、それを前半はやり切れたことが一番大きいと思っています。ただ、テンポに関して若干ズレているところもありましたので、その意味でも、後半からもっとアタックに比重を置いてやりたかったのですが、そこで逆に相手にやられてしまったと思います」

ヤクルトレビンズ戸田
多田潤平 共同キャプテン

「まずクリタウォーターガッシュ昭島のみなさん、ありがとうございました。ヘッドコーチから総括もあったように、前半はタイトにゲームを進める中で、後半も自分たちのラグビーをやるという共有で入りましたが、キックオフから崩れてしまったところが最後の最後まで響いて、流れをつかみ切れなかったと思います。そこでのマインドセットの部分をもう一度、見つめ直さないといけません。後半の頭から何をしないといけないのかを確認し、明確にしてからゲームに入っていかないといけない。それが次に向けて課題として残ったと思います」

──多田選手は前半、ベンチにいらっしゃいましたが、最初のトライについてどう見ていましたか?

「自分たちがやりたいアタックができたときはすごくいいのですが、後半は相手を崩すところに至る過程において、ブレイクダウンの精度や質が若干落ちてしまったと思います。そこを改善しないと、ディビジョン3のカテゴリでも上位チームに対峙するときは難しくなると思っています。また次の試合に向けて1週間の中で立て直そうと思っています」

──多田選手は今日のゲームでチーム公式戦通算100キャップを達成しました。どう感じていますか。

「正直、数字を意識してやってきたわけではないのですが、多くの方々に支えていただいた結果が、この100試合達成につながったと思います。ただ、あまり自分の中で区切りにする気はなくて、また次の試合に向けて準備するという一つの過程だと思っています。またしっかりとトレーニングを積んで進んでいきたいと思います」

クリタウォーターガッシュ昭島


クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(右)、中尾泰星キャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ

「このゲームは二つに分かれました。前半についてはアタックの枚数は十分でしたが、そこに遂行力が付きませんでした。キックでボールを手放してしまうことが多かったと思います。ただ、後半のプレーが自分たちの理想とするものです。いいマインドセットを持ち、コンタクトで圧倒する。しっかりゲームを締めることができたと思います」

──後半は立ち上がりからトライを重ねていきましたが、ハーフタイムに強調して伝えたことはどんな内容でしょうか。

「『自分たちにフォーカスし、自分たちの強みを信じてやりなさい』、というシンプルなメッセージです。『この半年間のトレーニングで自分たちが積み重ねてきたことを信じてやろう』、と。前半のスタートは良かったのですが、いくつかのミスのあとに躊躇する様子が見えました。後半はまったく異なる姿があったと思います。自分たちの強みをしっかりと出せていたと思います」

──これで5連勝です。どう受け止めていますか?

「このチームにとって初めての経験です。毎試合、いい挑戦ができていると思います。いまは勝っている状態なので選手たちは気持ちをラクにしながら試合ができている部分もありますが、その中で、決して緩くならず、自分たちの中で超えるべき基準を設けながらチャレンジできている。いいチーム状態にあると思っています」

クリタウォーターガッシュ昭島
中尾泰星キャプテン

「前半はディフェンスにフォーカスをし、前でしっかり止めることができたと思います。ただ、前半のアタックについては自分たちのミス、ノックオン(ノックフォワード)やパスミスなどイージーミスが多く、あまりスコアを奪えなかったと思っています。ただ、後半はしっかり修正できました。もう一度、自分たちがやるべきことにフォーカスできたと思います。いいボールキャリーをして、オーバーをして、しっかりセットしてアタックしようと共有しましたが、後半はしっかり体現できたと思うし、スコアを重ねて勝利できたと思います」

──後半にスコアを突き放していく中で最後までギアが落ちませんでした。感触はどうだったでしょうか。

「トライを奪って自陣に帰ってきたときに、『もう1回やろう』という声が掛かっていました。僕たちはキックオフのレシーブのところでミスをしたり、相手ボールにしてしまったりするところがあるので、もう一回そこにフォーカスし、自分たち一人ひとりの仕事に集中しようという共有がありました。まずキックオフのキャッチを手堅くいき、組み立てていく。ボールをキープしながらゲインして、しっかりつなぎながらトライを取りにいくことができたと思います」

──これで5連勝を達成しました。D2/D3入替戦出場を目指している状況だと思いますが、現在のチーム状態についてどう感じていますか?

「勝っているからなのか分かりませんが、各自が日々の練習に向けて、やることに対して迷わず、明確に取り組むことができるようになってきたと思います。僕たちは(チームの登録)人数が少ないので、誰かけがをした選手や調子が悪い選手がいれば代わって試合に出る選手が必要になる。そういう良い循環が必要になります。その意味で、いまはどんな練習でも全員がしっかり集まって、その日の練習に向き合えています。メンバーが発表されればメンバー外の選手たちが『頑張れ』と声を掛けてくれるし、チーム全体としていい雰囲気になってきていると思います」