阪神の及川雅貴投手(23)がリーグトップタイの7試合登板とブルペンに欠かせない存在となっている。21、23年は30試合以上登板もあったが、今季は6イニングで防御率0・00と安定感たっぷり。なぜ、今年は良くなったのか。1軍の捕手3人の証言と…
阪神の及川雅貴投手(23)がリーグトップタイの7試合登板とブルペンに欠かせない存在となっている。21、23年は30試合以上登板もあったが、今季は6イニングで防御率0・00と安定感たっぷり。なぜ、今年は良くなったのか。1軍の捕手3人の証言と左腕本人の言葉とともにひもといていく。
◇ ◇
ホールドシチュエーションでも、僅差の劣勢でも、今季のブルペンには頼りになる男がいる。高卒6年目の及川。今季もキャンプでは先発と中継ぎの両にらみで調整を続けてきたが、プロ初の開幕1軍をつかむと貴重なリリーバーとして活躍している。
ここまでリーグトップタイの7試合に登板。6回で防御率0・00と安定感が光る。捕手目線ではどう見えているのか。梅野と栄枝は共通のプラス要素を明かしてくれた。「ゾーンで勝負できている」。確かに四球も1つだけ。昨年から制球は圧倒的に向上している。
本人もそれは実感。「意味のない球がなくなっているかなと。際どいボールと、結構外れたボールでは大きな違いだと思うんで」。栄枝とは昨季までファームで組む機会も多かったが、最近は「無駄球が減ったよね」という話ができている。
そして、もう一つは直球の精度が上がった。坂本が証言する。「噴き上がるみたいな球を投げられている。去年は真っスラ気味だったから」。武器のスライダーにカットボールが加わり、ツーシームで落とすこともできる。これによって、打者は上、横、下の“変化”に対応しなくてはいけなくなった。
左腕も「両方操れている」と直球があってこその変化球だと理解。制球が良くなり、直球の強さも出たとなれば、自然と投球の幅も広がる。これはオフから求めていたこと。そして、好調の裏には昨年12月の陸上トレで自分の体を深く知れたことがあった。
例えば、肩が上がりにくい時に肩を上げようとしても上がらない。逆にどこかを下げれば勝手に上がるようになる。この体の構造を理解できた。今でも陸上トレで教えてもらったドリルや動きを実践し、その日の状態をチェック。「引き出しが増えたのは良かった」。実際に体の動きも変化している。
リリーフは連投もあって、日々のケアが大事。ベストな状態を常に保つことは難しい。昨年までは疲労や張りが抜けきれないこともあった。今年は違う。「肩の張りが出ない時もあるし、キャッチボールをして最初に動きが悪くても、張りが抜けるようになったんです」。これは中継ぎにとって、重要なこと。登板が重なっても、好投を続けられている理由だ。
“覚醒”とも言われるが、その裏には人知れずの努力がある。
藤川監督は「これを本物にしていかないといけない」と話していた。本人もまだ満足はしていない。シーズン前には「任された場所で1年間1軍にいたい」と強い覚悟を口にしていた。一歩ずつ本物に近づいていく。(デイリースポーツ・今西大翔)