今季のAFCチャンピオンズリーグでは、昨季J1王者のヴィッセル神戸が逆転負けを喫するなど、Jリーグチームが早くに姿を消した。女子でも同様の事態が起こった。WEリーグで上位を争う三菱重工浦和レッズレディースが、中国のチームに敗れたのだ。内容…
今季のAFCチャンピオンズリーグでは、昨季J1王者のヴィッセル神戸が逆転負けを喫するなど、Jリーグチームが早くに姿を消した。女子でも同様の事態が起こった。WEリーグで上位を争う三菱重工浦和レッズレディースが、中国のチームに敗れたのだ。内容と結果が大きく乖離したことは驚きだが、サッカーの奥深さを感じさせるものでもあったと、サッカージャーナリスト後藤健生は考える。
■「過度のものだった」AFCの要求
浦和にとって難しかったのは、この試合が本来の本拠地である浦和駒場スタジアムではなく、熊谷での開催となったことだ。
これは、AFCのスタジアム基準によるもので、AFCは試合当日以外でも優先使用を要求するなど、スタジアム探しもなかなか難しかったという。
だが、この試合の入場者数は3243人だ。その程度の観客数の試合に対して、AFCからの要求は過度のものだったと言えるだろう。
AFCとしては、本来のホームで開催して、少しでも観客数を増やすことを考えるべきではないのだろうか? だが、AFCという組織はいつもFIFAやUEFAに対するコンプレックスを抱き続け、自らの権威を振りかざすような組織なのである。
とにかく、そうした事情でこの試合は熊谷開催となった。
浦和からは、応援バス3台が運行されたそうだが、サポーターは移動を強いられることになった。
また、熊谷開催はプレーにも影響があったはずだ。
熊谷のピッチは、他の競技場に比べて乾燥気味で、ボールの走りが良くないのだ。そのため、浦和のパス回しに多少の影響があったのは否めなかった。
■「技術」「駆け引き」「経験」が不足
浦和は総合力としては、おそらく現在の日本女子サッカー界の最強チームである。たとえば、若手中心の日テレ・東京ベレーザに比べれば、ベテランと中堅、若手のバランスがよく取れている。
ただ、残念なのは諸事情により、FW陣が手薄なことだ。
武漢戦で1トップに起用されたのは高橋はなだった。今シーズンはFW起用が増えたとはいえ、本来はCBの選手だ。高橋は、2月の「シービリーブスカップ」でも日本代表に招集されたが、やはりDFとして起用されている。
フィジカルの強さを生かして、最前線でも頑張り続けている。武漢戦でも、相手のCBが激しくプレッシャーをかけてくる中で、120分間奮闘した。
だが、やはり、本来のFWではないので、スペースが与えられない中でシュートに持ち込むような技術や駆け引き、経験が足りない。
たとえば、現在はブライトン&ホーヴアルビオンで活躍している清家貴子のような点取り屋がいてくれたら、相手が守備を固めていても強引に割って入ってシュートに持ち込むことができたかもしれない。あるいは、負傷で長期離脱している大ベテランの安藤梢がいたら、密集の中でも小さなスペースを見つけて、こぼれ球を押しこむようなゴールを決めていたかもしれない……。
つまり、武漢戦は、現在の浦和にとっての唯一の弱点が露呈したゲームということもできるかもしれない。
■「思い出した」苦い記憶のオマーン戦
このところ、日本チームがなかなか思うように得点できずに苦しむ試合を連続して観戦している。
3月20(木)の午後には、川崎市のUvanceとどろきスタジアムで「DENSOカップ大学日韓定期戦」があり、全日本大学選抜が韓国選抜をシュート0本に抑える試合を展開した。だが、日本選抜はフィニッシュ段階でのパスの精度を欠き、クロスも飛び込んで来る選手と合わず、ようやく79分にクロスが相手DFに当たってこぼれたところを決めて1対0で勝利した。
そして、浦和レディースはやはり相手をシュート2本に抑えながら、最後までゴールネットを揺らすことができずにPK戦敗退……。
3月20日の夜には、日本代表がバーレーン相手に苦戦する試合もあった。
ボール保持では上回ったものの、選手たちのコンディションが悪く、パスが思うように回らず、さらに日本対策を徹底してきたバーレーンに何度も危ない場面も作られる展開。
僕は、スタンドで観戦しながら、カタールW杯最終予選の初戦で敗戦を喫したオマーン戦を思い出していた。
だが、日本代表は最後は久保建英のアイディアあふれるアシストで鎌田大地が先制し、試合終盤には久保の個人技が爆発して2対0で勝利して、予選突破を決めてみせた。
攻めても攻めてもうまくいかない展開で、最後に勝負を決めるのは、どうやら個人の力ということのようである。そんな、個人能力ですべてを決めてしまえるような選手が複数いるのだから、現在の日本代表はやはり特別なチームなのだ。
最後までゴールを決めきれなかった全日本大学選抜や浦和レディースの試合を見ていて、日本代表のすごさを改めて感じさせられたのである。