開幕に向けて、各クラブが活動を開始したJリーグ。監督交代や新戦力など、各チームに動きがある中、サッカージャーナリスト後藤健生が注目するのは、J2のRB大宮アルディージャだ。日本のクラブ史上初となる「試み」がなされた大宮は今後、どのような「…

 開幕に向けて、各クラブが活動を開始したJリーグ。監督交代や新戦力など、各チームに動きがある中、サッカージャーナリスト後藤健生が注目するのは、J2のRB大宮アルディージャだ。日本のクラブ史上初となる「試み」がなされた大宮は今後、どのような「進化」を遂げるのか? 日本サッカー界、ひいては日本スポーツ界の「黒船」となりうる話題チームの「動向」!

■クロップ来日「海外移籍」の可能性も

 レッドブル・グループのグローバル・サッカー部門責任者に就任したばかりのユルゲン・クロップ氏が、2月15日にRB大宮アルディージャがモンテディオ山形を迎え撃つ、J2リーグ開幕戦を現地視察すると報じられている。

 クロップ氏といえば、ボルシア・ドルトムントリバプールといった世界的強豪チームの監督を務めた、21世紀のヨーロッパを代表する名将のひとり。そんなクロップ氏の視察を受けるというのは、大宮の選手たちにとってばかりでなく、対戦相手の山形の選手たちにとっても大きな刺激となるだろう。

 早い話が、クロップ氏のお眼鏡にかかれば、一気に海外移籍となる可能性だってあるのだ。

 いや、せっかく来日するのだから、この機会にクロップ氏はおそらく他の試合を含めて日本のサッカー環境全般を視察することだろう。そうなれば、日本のサッカー界全体にとっても大きな刺激となる。

■すでに数年前に廃止されていた「規定」

 間もなく開幕する2025年のJリーグ……。

 昨シーズン、最終節まで激しいデッドヒートを繰り広げたヴィッセル神戸サンフレッチェ広島はチームの完成度が高く、今シーズンも「2強体制」であることは間違いないが、そこに昨季、素晴らしいフィニッシュをしたガンバ大阪、J1で4度の優勝経験を持つ鬼木達を監督に迎えた鹿島アントラーズ、昨年、旋風と“論争”を巻き起こしたFC町田ゼルビアがどこまで肉薄できるか。あるいは、新監督を迎えたかつての王者、川崎フロンターレ横浜F・マリノスの復活はなるか……。

 そんな順位争いをはじめ、さまざまな話題があるが、長い目で見ると、レッドブル・グループの傘下に入ったRB大宮アルディージャの動向こそが最大の注目ポイントなのかもしれない。

 大宮の前身は1969年に創設された電電関東サッカー部。電電公社民営化後は「NTT関東」となり、1999年のJリーグ入り後も同グループが出資するNTTスポーツコミュニティ株式会社が運営に当たっていたが、昨年8月に同社が全株式をオーストリアに本社を置くレッドブルGmbHに譲渡したのだ(「GmbH」はドイツ語で「株式会社」)。

 Jリーグでは、従来は外資によるクラブの保有を禁止していた。外国資本によって経営を左右されるのを嫌った規定だったが、この規定は数年前にすでに廃止されていた。

■レッドブルにとって「5つ目」のクラブ

 一方、「レッドブル」は世界で最もシェアの高いエナージードリンクで、最近は日本でも売上を伸ばしている。そして、スポーツを通じて宣伝活動に積極的で、多くのスポーツ選手を支援している。とくに、オーナーが愛好家ということでモータースポーツやエアレースには力を入れており、F1では「レッドブル・レーシング」と「RBフォーミュラ1チーム」の2チームを所有している。

 サッカー界では地元オーストリアのレッドブル・ザルツブルクをはじめ、ドイツ・ブンデスリーガのRBライプツィヒ、ブラジルのレッドブル・ブラガンチーノ、アメリカのニューヨーク・レッドブルズを所有。大宮は、レッドブル・グループにとって5つ目のクラブとなったのだ。

 そして、昨シーズンまでリバプールの監督を務めていたユルゲン・クロップ氏がグローバル・サッカー部門責任者に就任することが決まって、大きな話題となった。

 大宮側としては、サッカーの本場欧州でのクラブ経営や強化、選手育成といったさまざまな部門で蓄積したレッドブル・グループのノウハウや豊富な資金力を使ってチーム強化を進められる可能性があるし、レッドブル側とっては日本人選手を移籍させたり、グループ内クラブの若手選手を大宮で経験を積ませることができるなど、互いにさまざまなメリットが見込まれている。(2)に続く。

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