コンサドーレ札幌、ジュビロ磐田というJ2降格ゾーンに沈む2チームにプレッシャーをかけられているのが、17位・柏レイソルと16位・アルビレックス新潟だ。 11月9日には両者が三協フロンテアスタジアム柏で激突。柏がエース・細谷真大の一撃でリー…

 コンサドーレ札幌、ジュビロ磐田というJ2降格ゾーンに沈む2チームにプレッシャーをかけられているのが、17位・柏レイソルと16位・アルビレックス新潟だ。

 11月9日には両者が三協フロンテアスタジアム柏で激突。柏がエース・細谷真大の一撃でリードしたものの、後半ロスタイムに新潟の藤原奏哉にまさかの同点弾を浴び、1-1のドローに終わった。
 柏にしてみれば、逃げ切りさえ成功していれば、勝ち点を42に伸ばすのと同時に、札幌を降格に追い込み、磐田との差も7に広げることができ、残留をほぼ決定づけることができていた。だからこそ、この失点は大いに悔やまれるものがあった。
 加えて言うと、彼らは10月19日の町田ゼルビア戦、23日の浦和レッズ戦、11月3日のアビスパ福岡戦、そして今回と4戦連続ロスタイム失点で勝ち点3を逃すという悪循環に陥っているのだ。
「リードしてからの硬さ? 自分はそこは感じませんでしたけど、繰り返してはいるので、選手たちの中で数人はそう感じているのかもしれないですけど、早く流れを切りたいと思います」と新潟戦でベンチから追いつかれる瞬間を見ていた細谷はガックリと肩を落としていた。
 この時間帯の柏は細谷やマテウス・サヴィオら主軸がベンチに下がっており、それもゲームコントロール力の低下につながったと見る向きもある。「井原正巳監督はなぜ5バックのオプションを作らない」という疑問の声も高まっていて、指揮官の采配やマネージメント力を不安視する向きもあるようだ。

古賀太陽の冷静な分析

「最後の失点に関して言うと、(橋本健人にクロスを)簡単に上げさせたのがよくなかった。そこを上げさせないように徹底しないといけない。その前にも1回(小見洋太にシュートを)ポストに当てられたシーンがありましたけど、外に振られた後のマイナスに誰も行っていないところも1つの問題点だと思います。全員必死になっているのは分かるけど、適切なポジションを取れているかどうかはすごく大事」とキャプテン・古賀太陽は冷静に分析する。彼のようにメンタル面の落ち着きを試合終盤まで維持できる選手が少ないことも苦境を招いている一因と言えそうだ。
 守備のリーダー・犬飼智也が負傷で今季中の復帰が難しくなる中、古賀にはこれまで以上の統率力やけん引力が求められるはずだ。
「僕が若かった時のキャプテンだったタニ君(大谷秀和コーチ)が下を向いている姿は見たことがない。やっぱり姿勢で示さなきゃいけない部分はあると思います」と古賀は神妙な面持ちで言う。柏の残り2戦は神戸と札幌が相手。そこでJ1に生き残れるかどうかは、守備陣をリードするキャプテンに託される部分も少なくないだろう。

■「物語は必要ない。勝ちたい」

 新潟に関しては、磐田との差が6ということで一歩リードだが、磐田の動向次第では安泰とは言えない状況になるかもしれない。彼らは目下、リーグ7戦未勝利で、残りの相手がガンバと浦和。AFCチャンピオンズリーグ圏内を狙えるガンバは意欲満々だろうし、浦和も埼玉スタジアムでは新潟に一度も負けていない。苦戦は必至の情勢だ。
 ご存じの通り、彼らは11月2日のYBCルヴァンカップ決勝で名古屋グランパスと好勝負を演じ、多くの人々から高い評価を受けたばかり。「ルヴァンで決勝に行って称賛されたかもしれないけど、勝っていない。ちゃんと勝った景色をみんなで見たい」と左サイドバック・橋本健人も切実な言葉を絞り出していた。
 今季限りでの勇退が確実視される松橋力蔵監督も「物語は必要ない。勝ちたい」と柏戦後に強調。9月14日の湘南戦以来のリーグ戦勝利を賭けて、全身全霊を込めてラスト2戦に挑む覚悟だ。
 柏戦を見ていても分かるように、彼らの課題はアタッキングサードでの攻撃の迫力と精度だ。そこまではボールを保持できているのに、シュートに結びつかないケースが目立つのだ。小野裕二谷口海斗を頭から出し、長倉幹樹と小見を途中からジョーカー起用するという策も効果は出ているものの、ラスト2戦は陣容や組み合わせ含めて再検討してもいいかもしれない。
 ガンバも浦和も堅守を特徴とするチーム。そこに先手を取るには、相当なアイディアや工夫が求められてくる。今こそ松橋体制の集大成を見せ、残留を勝ち取るべき。数字上で有利な彼らはそれを遂行する責務がある。
 柏と新潟は12月8日の最終節を笑顔で終えられるのか。今こそチームの真価が問われる。
(取材・文/元川悦子)

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