3回裏 早大吉納の先制タイムリーで1-0【写真:加治屋友輝】 東京六大学野球秋季リーグは29日、春秋連覇を狙う早大が法大2回戦に5-4で競り勝ち、対戦成績を1勝1分けとした。2点ビハインドの7回、10月24日のドラフト会議へ向けてプロ志望届…

3回裏 早大吉納の先制タイムリーで1-0【写真:加治屋友輝】

 東京六大学野球秋季リーグは29日、春秋連覇を狙う早大が法大2回戦に5-4で競り勝ち、対戦成績を1勝1分けとした。2点ビハインドの7回、10月24日のドラフト会議へ向けてプロ志望届を提出済みの吉納翼外野手(4年)が、値千金の逆転3ランを放った。相手の監督も“あっぱれ”を送った。

 2-4とリードされて迎えた7回。吉納は1死一、二塁の好機で左打席に立った。マウンドには、こちらもドラフト候補の左腕・吉鶴翔瑛投手(4年)がいた。カウント2-2から、147キロを計測した外角の速球を“逆方向”の左翼へ打ち返す。飛球がフェンスを越え、吉納は一、二塁間で歓喜の雄叫びを上げながら、ガッツポーズを繰り出した。

 読みが冴えていた。吉納は「あの場面は、それまでの4球のうち2球がカットボールで、いずれもストライクゾーンから大きく外れていました。カウント2-2になった時点で、絶対に真っすぐで決めようとしてくるだろうと思いました。配球をうまく読み取れました」と明かす。

“元プロ”の法大・大島公一監督は敵ながら「あっぱれですね。あのアウトコースのボールを逆方向へ、まるで右打者が引っ張ったような打球を飛ばせるのは凄いと思います」と脱帽した。一方、早大の小宮山悟監督も“元プロ”。こちらは「見事でしたね。さすが“ミスター3ラン”」と称えた。吉納はリーグ戦通算13本塁打のうち、最多の5本が3ランなのだ。熱い抱擁で出迎え、「(吉納の方から)抱きついてきたから、拒否はできないでしょう。相当な勢いで突進してきました」とジョークをまじえながら満面に笑みを浮かべた。

7回裏 レフトへ逆転3ランを放った早大吉納【写真:加治屋友輝】

 もっとも、春秋連覇への道のりは決して平坦ではない。今季開幕カードでは東大を20-0、12-1のスコアで一蹴したが、前日(28日)の法大1回戦は3-3で引き分けた。小宮山監督は「今季は春の完全優勝(他の5校全てから勝ち点を獲得)よりワンランク上の、全勝優勝を果たすつもりでしたが、昨日の引き分けで全勝はなくなってしまった。春の2敗(10勝)を超えるにも、1敗しか許されない」と高いハードルを課している。吉納は「全勝優勝はなくなったけれど、昨日も負けたわけではない。終わった時に、あの引き分けの悔しさがあったからこそ、その後全勝で突き進むことができたと思えればいい」とうなずいた。

 吉納は今季4試合でリーグ最多の4本塁打、15打点を荒稼ぎ(29日現在)。シーズンはまだ序盤で、東京六大学のシーズン最多本塁打記録「7」、同最多打点記録「22」を狙えそうな勢いだ。ネット裏のスカウト陣へのアピールにも成功した格好で、ロッテの榎康弘アマスカウトディレクターは「長打力があって、広角に打てて、選球眼もいい。(外野守備は)めちゃくちゃ強肩というわけではありませんが、スローイングは正確で安定しています」と評した。

 吉納は「春に優勝できたので、とにかく連覇に懸ける思いが強いです。ドラフトよりも、なんとかしてチームに貢献したい。連覇に向けて、自分がやらなきゃいけないことをしっかりやっていきたい」と力を込めた。チームの勝利のために、全力を尽くす。

(Full-Count 宮脇広久)